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クロミミ(黒見千 くろみゆき)
2021年7月7日 11:08
液晶が青白く発光し、目を灼いた。 もう夜が深いーーー。 眩さにそう悟った。部屋の片隅からはラジオの微かな音が聞こえていた。音量を絞っているので、内容は聞き取れない。それで構わなかった。耳鳴りがしないのであれば。いつもは気にもとめない沈黙が、今夜はやけに煩かった。 タブレットを手放して、横たえた身体を仰向けにした。暗い1Kはやけに広く感じられる。端末の光が白い壁紙に反射して、闇に濃淡を生み出
2021年6月9日 22:58
二一時を過ぎた頃、わたしの街は眠りにつこうとする。昼間は街で一番のにぎわいを見せるこの交差点にさえ沈黙が訪れて夜が深くなる。そのなかで、こわれたように点滅し続ける黄色い信号のひかりをぼんやりと眺めているのがわたしは好きだった。 通りにはほとんど人影がない。夜になると、その街の本当の姿が見えてくるような気がする。そうして、それをながめていることが小さな秘密のように思えてくるのだ。それはひどく