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役員報酬にESG要因を含める際の留意点

役員報酬にESG要因を取り入れる企業が増えてきたことを、以下の記事が伝えています。

役員報酬は従業員の給与に当たる固定部分と賞与その他に当たる業績連動部分から構成されていますが、業績連動部分においてESG要因を含めるという慣行が広がってきているということです。ESG要因に関する目標の達成度合いに応じて役員報酬の支給額が変動する仕組みです。

2010年に前職で役員報酬へのESG要因の考慮を提言してから、約10年で少しずつながらもこの慣行が広がっていることは喜ばしいことです。

一方で、以下の2点は少なくとも留意すべきと個人的には考えています。

1.自己評価により役員報酬額を決定する

当然のように見えますが、国内外を問わず外部評価機関による評価内容を基に役員報酬額を決定している企業が散見されます。もちろん役員報酬の固定・業績連動部分の割合や役員報酬額の算定式の検討に外部機関の助けを借りることを一般的な慣行です。しかし役員報酬額の基となるESG評価まで外部に委ねてしまうということは、企業が自社の取組に対する評価を放棄しているようにも見えかねません。

2.経営戦略と統合された目標を設定する

前項とも関係しますが、自己評価で報酬額を決定する以上、目標がお手盛りと捉えられないことも重要です。その際に考慮すべき点が2点あります。

第1に、マテリアリティ(重要性)の低いESG要因を目標設定では避けるということです。企業では幅広いESG要因に効率よく対処するべく、ESG要因のマテリアリティ分析を行うことが一般的となっています。しかしその結果、優先度の低いESG要因を基に役員報酬を決定すると一貫性がない印象を与えます。

第2に、マテリアリティの高いESG要因を基にした場合でも、目標をある程度挑戦的なものにするということです。目標が低すぎて、これまでと同じESG活動をしていても達成可能だと、取締役がそれに励むインセンティブが失われてしまいます。最初から達成可能なことが明らかな目標を立ててしまっては、それこそお手盛りと批判されることになってしまいます。

報酬は、監査、指名とともに取締役における重要事項の1つです。ESG要因を考慮しつつ、健全な役員報酬慣行が広がることを期待しています。

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