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読書メモ『「科学的」人事の衝撃―HRテックで実現するマーケティング思考の人事戦略』三室 克哉, 鈴村 賢治, 等著

人事戦略に悩んでいるマネジメントの方に向けて、最近読んだ本の感想を書きます。キーワードは、「科学的人事」「人的資本経営」です。

タレントマネジメント

「タレントマネジメント」という言葉を知っていますか? 私は知りませんでした。最初は芸能人の育成かと勘違いしました。タレントマネジメントの、タレントとはいわゆるテレビタレントのようなタレントではなく、英語本来の意味である「能力」「才能」のことです。タレントマネジメントとは企業などにおいて社員の能力、才能を活かすために配置したり育成したりすることでした。

この本の著者は『見える化エンジン』などテキストマイニングをマーケティングやユーザーサポートに活かすサービスを提供しているプラスアルファ・コンサルティングの経営陣です。

マーケティングではだいぶ前から勘と経験によるマーケティングからデータを収集して活用する科学的マーケティングに移行してきました。

同じように人事もデータを一元管理して科学的人事をすべきだという提案です。

長年の経験から培ってきた人事担当者の勘や経験を頼りに人を採用し配置し異動させる。これが属人的人事の典型
「科学的」人事の衝撃

私が現役の頃、人事は属人的でした。人事評価シートを書かされても、果たしてそれが評価に反映されているのか疑わしく思いつつ、悩みながら書いていました。

評価する側になった時には、評価はこの人事評価シートを参考に使う程度で、結局は相対評価をせざるを得ないので、チームの構成人員のバランスと過去の評価履歴から勘と経験で評価していました。

この本では人事の世界でも人の力を最大限に発揮できるよう、きちんと高度なデータ分析手法を活用すべきだと説きます。

まず既存の人事情報を集約します。それまで紙やExcelで行っていた人事評価もシステム上で実施します。そこまでは科学的人事ではなく単なるデジタル化ですね。

社内にバラバラにある人事関連データを一元管理し、新たにスキルデータやエモーショナルデータなどを集め、さらに共通の適性検査を実施して人材情報として統合し社員を見える化するのだそうです。

これはなかなか興味深いですが、ハードルも高そうです。多くの企業では人事は管理という発想で仕事をしていますから、社員の見える化なんて恐ろしい。社員の反発も目に見えそうです。

考えてみればマーケティングも同じでした。初めてWebマーケティングに取り組んだ時に社内からの反発は大きかったのです。しかし今ではWebマーケティングは当然という時代になりました。

ですから人事も変わることでしょう。科学的人事は当たり前になり、データ活用で人材配置、育成をしていく時代はもうすぐだと感じました。

人的資本経営

ちょうど経済産業省からも『人的資本経営』というものが提示されています。

人的資本経営とは、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方です。
人的資本経営 ~人材の価値を最大限に引き出す~/経済産業省

人生100年時代となり、定年延長や個人のキャリア観の変化、さらにコロナ禍によるテレワークなど企業を取り巻く環境が大きく変化しています。

働き方改革や、イノベーション・付加価値を生み出す人材の確保・育成、組織の構築など、まさに新しい人材戦略が重要となってきています。

● 人的資本経営 ~人材の価値を最大限に引き出す~/経済産業省
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinteki_shihon/index.html

科学的人事の目的は管理ではない。人材を活かすことだ。ITを駆使してデータを分析・活用することで「人材の見える化」を実現し、個々の人材に合ったキャリア形成や最適配置といった人事戦略を行いパフォーマンスを最大限に引き上げていくことだ。
「科学的」人事の衝撃

新しい人事戦略を進めていくために、人材の見える化が必要であり、それができるシステムが既にできてきていることがわかりました。私の現役時代にあれば役に立ったのになぁと残念に思いました。

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