マガジンのカバー画像

戦闘服からヘッドセットへ

31
お仕事物語です💻 コールセンターを舞台に様々なお客様や、電話をとる変わった人などのお話が展開されます🌸  登場人物も、ぶっ飛んでいます💦
運営しているクリエイター

記事一覧

戦闘服からヘッドセットへ 30 ~最終回④  決意と未来 ~

戦闘服からヘッドセットへ 30 ~最終回④  決意と未来 ~

 ベテランSVは「おっ」という表情でPCから顔を上げた。
 フロア内が混み合っている時に起こる独特の空気が漂い始めたと敏感に察知したようだった。
 そのSVは天井から吊るされた映像画面を見て、込み具合はどうかを確認した。案の定、多くのお客が待機している事がわかった。

「うーわ、まずいな」

 全チームリーダーのみが閲覧出来るグループチャットから、「お願い!ASVで電話対応に入れる人いない?」と要

もっとみる
戦闘服からヘッドセットへ 29   ~最終回③    大切な戦闘服とヘッドセット~

戦闘服からヘッドセットへ 29 ~最終回③ 大切な戦闘服とヘッドセット~

 朝、リビングのテレビからニュースが流れていた。テレビ局の看板アナウンサーは笑顔で挨拶をしている。
「今年は暑い夏でしたが、やっと涼しさを感じる季節に入りました。あの暑い日々をすでに忘れつつありますが、気温の上昇は年々増すばかりです。今年、2025年は沸騰化時代を少しでも抑えるため、各企業でも政府が打ち出した目標に向けて活発に動いています」

 朝食をとり終えた瑠美は、玄関へ向かう三平を追いかけた

もっとみる
戦闘服からヘッドセットへ 28       〜最終回② BARでの2次会~

戦闘服からヘッドセットへ 28 〜最終回② BARでの2次会~

「虎っち、熊さん。ASV昇進おめでとう!カンパーイ!!」

 瑠美は乾杯の音頭に、買って出たようだった。
 この日、チームのメンバーは横尾が週に1度だけ出ているというBARを貸し切り、二次会として集まった。
「まさか、横尾君がバーテンやってるとは思わなかった」
「いや、大学からここにいたんです。当時は週4とか入ってたんですが。今は週1なんで、楽しくやれてます」
 横尾は話しながらカクテルを作り、新

もっとみる
戦闘服からヘッドセットへ 27 ~最終回①(全話ダイジェスト版あり)~

戦闘服からヘッドセットへ 27 ~最終回①(全話ダイジェスト版あり)~

 今さら最終回?!と思った方々。
今回は、最初に謝罪をしたいと思います。
もっと前に最終回を出す予定だったのですが、書き終わらそうとした所、コロナにかかったり新人賞に落ちたり、色々重なってしまい。心と体が回復して出すまで時間がかかってしまいました。
 読んで下さっていた方々に本当に申し訳ありません(お恥ずかしい話、読者がエッセーより少ないんですが)。
 そのため、ここまでのお話のダ

もっとみる
戦闘服からヘッドセットへ 26 ~熊虎コンビ~

戦闘服からヘッドセットへ 26 ~熊虎コンビ~



~上杉の決意~

  莉理が、長期休暇を終えて出勤するまで、あと2日。

 上杉は、横尾と食堂で遅いお昼を食べながら莉里の事を考えていた。夏に社食で定番となる冷やし中華を口にし、なんら変哲のない定番の味にいつもと変わらない食堂で、上杉の心だけは落ち着く事が出来ずにいた。
 上杉は深いため息をついた。
「なんで、横尾も莉里ちゃんの事を詳しく知らないんだよ」
「いや、続けるとか辞めるとか、人事もで

もっとみる
戦闘服からヘッドセットへ 25 ~消えたアプリ~

戦闘服からヘッドセットへ 25 ~消えたアプリ~

 ほどなくして、三平と瑠美が付き合っているという噂は、社内中に広まっていた。

2人は、チームの親しいメンバーに付き合った事を伝え、その日から帰宅時間の合う日は2人で帰るようになっていた。
 噂が広まるのも必然だった。

 サバサバしていながらも尽くす瑠美(しかも、あんなにギャルだったのに今や清楚系)と、尽くされた以上に愛情を返す三平(優しいイケメン)。
 二人はどこからどう見てもお似合いだ

もっとみる
戦闘服からヘッドセットへ  24 ~涼やかなイケメンの正体~

戦闘服からヘッドセットへ  24 ~涼やかなイケメンの正体~

 札幌の夏は短い。7月に入り、とうとう夏がきた。と思うと、すぐに8月となり、秋がきてしまう。これまでは、そう言われる事が常だった。
 平成の時代は、「今年、夏と呼べた日は、一体どの日だろうか?」と腑に落ちずに終わる事が多く、それくらい涼しかったのだ。

 これが、一体どうした事か。ここ最近は、温暖化の関係なのか、これぞ夏の暑さ、と呼べる気温を容易に達するようになっていた。
 本州の暑さから逃れよう

もっとみる
 戦闘服からヘッドセットへ 23 ~life plan~

 戦闘服からヘッドセットへ 23 ~life plan~

「熊さん、この前の飲み会、先に帰ってたのか」
 あの日の飲み会から、すでに数日が過ぎていた。
「ん?ああ、お前らに付き合いきれる訳ないだろう。もう40代のおっさんだぞ。体がもたない」

 喫煙ルームには、2人しかいないようだった。
「まぁ、しゃーないな。あと置いていった1万円、多すぎる。一応、使わせてもらって皆にはその分、少なく済ましたけど。悪いから、俺から、多かった分は返すよ」
 そう言って、上

もっとみる
戦闘服からヘッドセットへ 22 〜おバカでウルフルズな夜~

戦闘服からヘッドセットへ 22 〜おバカでウルフルズな夜~

 上杉と莉里の前には、飲み会で帰りが遅くなったような学生たちが、楽しそうに駅へ向かっていた。
「前の職場でそんな事があって、今の所に来てから研修の担当をするのは、挑戦だったんじゃ?」
「ああ・・・うん、挑戦だったね。でも、それ以上に、もう一回やり直せるかも知れないって思ったの。初日はすごく緊張したんだけど、思っていた以上に楽しくて」
 お酒で気持ちが高揚していたのかもしれない。莉理は、珍しく研修担

もっとみる
戦闘服からヘッドセットへ 21 ~莉里の消えない傷~

戦闘服からヘッドセットへ 21 ~莉里の消えない傷~

 瑠美と莉里は、カウンター席からチームメンバーが座る小上がりに合流した。皆が勢ぞろいした飲み会は久しぶりだった。

「おい、それ本当か?」
 上杉は驚き、瑠美に向かって声を荒立てた。
「うん、そうだよ」
「そんな状況だったのか、相談してくれたら協力したのに。女が外でタイマンは危ないだろう。せめて職場で話した方が安全だ」
「そうだな。それか、すすきの交番の前とかな」
 赤い顔になり始めた佐々木は、真

もっとみる
戦闘服からヘッドセットへ 20 ~勇者になった日~

戦闘服からヘッドセットへ 20 ~勇者になった日~

 瑠美は売店に入ると、悠馬が缶コーヒーとパンを手にしているのを目にした。
「今日のお昼は軽食なの?」
「おお、瑠美ちゃん。びっくりした」
 悠馬は、驚いた表情をしたが、すぐにくしゃっとした笑顔を向けて来た。可愛い顔とは裏腹に、背の高さやスタイルの良さはモデルのようだ。 
 身長160㎝にヒールの高い靴を履いた瑠美でも目線が少し上になってしまう。 
「すぐに食べられるものを、音楽聴きながら一人で食べ

もっとみる
戦闘服からヘッドセットへ 19 ~らしくない彼女~

戦闘服からヘッドセットへ 19 ~らしくない彼女~

 そこは、すすきのにあるBarの中でも、海外観光客が集まり通行人に丸見え、という開放的な店ではなく、ビルの奥の奥にある隠れ家のようなところだった。
 相手の見た目は年齢より若く見えたが、4歳年上なので頼りになりそうだと感じていた。それに、年上男性なのに笑顔が可愛らしく、爽やかさと色気のある雰囲気もどストライクだった。

「最初会った時、瑠美ちゃんかなり警戒してなかった?」
「え?そうですか?という

もっとみる
戦闘服からヘッドセットへ 18 ~消えた画像~

戦闘服からヘッドセットへ 18 ~消えた画像~

「お電話ありがとうございます。担当の上杉でございます。本日はどのようなお問い合わせでしょうか」
 シフトが早の勤務日、上杉はぎりぎりまで寝ているため、大急ぎで準備をして出勤する。そのため、1本目の電話がその日の第一声となり、声も頭の回転も調子が良いとは言えなかった。
 とは言え、これまでの電話対応と比べると上杉の成長は著しく向上していた。

 横尾は上杉の言葉使いや案内をする姿を見て、隣にいた新藤

もっとみる
戦闘服からヘッドセットへ 17 ~虎の過去~

戦闘服からヘッドセットへ 17 ~虎の過去~

「そうかぁ、熊さんがバツイチだったなんて、驚きですよ」
 新藤が笑いながらそう声にすると、三平はお酒がまわってきたのか、にこにこした表情で言った。
「そう言われてみれば、研修の頃とか、佐々木さん怖かったなぁ。同期に反社がいる!って思ったもん」
「おいおい、失礼だな。・・・まぁ、正直な事を言うと、ここに来たばかりの頃は心が空虚だった気がする。今はすごく楽しいけどな。このメンバーが同じチームで、本当に

もっとみる