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消雲堂綺談

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私は怪談奇談が好きで、身近な怪異を稚拙な文章にまとめております。
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#異能清春

芸能人連続自死事件 参

芸能人連続自死事件 参

*これは、あくまでも創作です。

「宗教ですか?」
「はい、宗教と言っても、太平洋戦争直後に結成された政治結社「神聖会」(しんせいかい)の会長、自眠神聖自眠塔(じみん・とう)が創設した“神聖異心の会(しんせいいしんのかい)”というカルト宗教ですよ」

異能が言う自眠塔の祖父は戦前戦後を代表する大物右翼・自眠神聖(じみんしんせい)だ。戦前は対アメリカのための化学兵器開発のために神聖製薬化学工業を立ち

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芸能人連続自死事件 弐

芸能人連続自死事件 弐

「不思議な手紙ですね・・・」異能は低い声で呟くように言った。
「不思議ですか・・・?血の通った私には、その感覚はありません」ちなみの気を損ねてしまったのだろうか? 少しだけ不機嫌な表情になった。
「気を悪くなさったのならお詫びします。そうですね、血の通わぬ他人の僕から見れば不思議な手紙だなと思ったのです」
「気になったのはハリガネムシのことです」
「ああ、カマキリの・・・」
「そうです。お兄さんは

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芸能人連続自死事件 壱

芸能人連続自死事件 壱

*あくまでも作り話です。実在の人物事件とは無関係です。

「依頼」

その日、神田明神下にある探偵、伊能清春の事務所に女性の訪問客があった。異能の事務所は明神下側の階段「男坂」の中腹の踊り場にある。男坂の階段を昇降する参拝客は少なかった。旧型コロナ禍であり、非常事態宣言なるイベントのような出来事が数度続いていたから外出は自粛されていたからだ。

訪問客の女性は櫻田ちなみと名乗り、異能が勧めるソファ

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「妄想邪馬台国」3

「妄想邪馬台国」3

「多分、もう少しで終わるから我慢しなよ」治子が笑った。
「稗田は短気なんだよ」異能が僕の肩を叩きながら治子を見て笑った。
「じゃあ、もう少し我慢するから話を続けてよ」僕はふてくされてコタツの上に頬杖を突いた。
「どこまでいったっけ?」
「天岩戸よ。タヂカラオがアマテラスを引っ張り出すところ」
「そうだった」

岩屋の外の騒ぎが気になったアマテラスは天岩戸を開けて身を乗り出した。それを見て、タヂカラ

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「妄想邪馬台国」5

「妄想邪馬台国」5

異能は本棚から落ちてきた分厚い本が頭にぶつかって倒れた。
「だ、だいじょうぶ?」治子が異能のそばに駆け寄った。すると治子のミニスカートがまくれ上がってピンク色のパンティが丸見えになった。治子はそのことに気づかない。
異能は、それを見て、気絶したふりをしながら薄目を開けて治子のパンティを凝視した。

「大丈夫なの? ねぇ、異能くん、ねぇ…。ねぇ稗田くん、救急車呼ぼうか?」治子が本気で心配している。

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「妄想邪馬台国」4

「妄想邪馬台国」4

豊葦原では大きな争乱があった。

アマテラスが高天原の天の浮橋から地上を見ると、騒がしいので、八百万の神々を集めて「地上は争いが絶えぬようだから、これを治めるにはどの神を地上に降ろせばいいのか?」と神々と相談した。

結局、天菩比神(あめのほひのかみ)を地上に降ろすと、アメノホヒはオオクニヌシに媚びるばかりで、彼からは三年も音沙汰がなかった。

天若日子(あめのわかひこ)を地上に降ろしたが、彼はオ

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「妄想邪馬台国」2

「妄想邪馬台国」2

「出雲国譲りって知らないの?」
「うん」
「古事記を読んだことはあるでしょ?」
「ごめん、ないんだ」
治子が呆れている。
「出雲国譲りとは天津神(天照大神)が国津神(大国主命)から葦原中国(出雲)を譲り受ける神話のことよ」
「へぇ」
「天津神は高天原にいるでしょ? 国津神は日本にいる。私が思うに高天原とは朝鮮半島のことで、半島から渡ってきた人びとによって、出雲を治めていた先住民族が駆逐されてしまっ

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「妄想邪馬台国」1

「妄想邪馬台国」1

1978年の初冬。赤城おろしが吹く季節になった。

群馬県伊勢崎市連取本町の平和荘。地元の国立大学に通う異能清春の部屋だ。異能の部屋の北側には歴史書、法律書や犯罪心理学書、それにどこから持ってきたものか気味の悪い死体検案書や犯罪者の陳述書のコピーなどが積まれ、西側には探偵小説や怪奇小説が同じように積まれている。いずれもカビ臭く湿気を伴っていることから相当に古いものだ。本以外は布団がかかったコタツし

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