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芸能人連続自死事件 弐

「不思議な手紙ですね・・・」異能は低い声で呟くように言った。
「不思議ですか・・・?血の通った私には、その感覚はありません」ちなみの気を損ねてしまったのだろうか? 少しだけ不機嫌な表情になった。
「気を悪くなさったのならお詫びします。そうですね、血の通わぬ他人の僕から見れば不思議な手紙だなと思ったのです」
「気になったのはハリガネムシのことです」
「ああ、カマキリの・・・」
「そうです。お兄さんは、最近立て続けに自殺した芸能人の精神にもハリガネムシのようなモノが寄生して自殺に追い込んだようなことを書かれていますね」
「ああ、私、最近、韓国のホラー映画を観たんです。「ヨンガシ」とかいうタイトルだったと思います。ハリガネムシのような寄生虫に意識を乗っ取られて人を殺すのですが・・・、兄の手紙のような話でしたね」

「そもそも人間は洗脳されやすいのです。今の世の中は個性など皆無の洗脳社会ですからね」
「でも、死ぬということまでの意識操作はできないでしょう?」
「できますよ。歴史上、そんな事件は掃いて捨てるほどありますよ」
「そうなんですか?」
「人間は生まれ落ちたときから親に洗脳され、物心つけば教育という洗脳が待っています」
「教育も洗脳ですか?」
「そうです」
「大人・・・いや、権力者にとって都合のいい性格の人間を作るための洗脳ですよ」
「面白いですね」
「それでも善悪を教えたりしません。生きているうちに・・・経験を重ねることによって人を傷つけてはいけない、殺してはいけないということが理解できていくんです」
「今は違いますよね。残酷な子どもたちばかり・・・」
「そうですね。なぜだかわかりますか?」
「わかりません」
「今の子どもは死を身近に感じていないんですよ。葬式でも死人の顔を見ないというらしいしね」
「それが洗脳なんですか?」
「死を身近に感じさせないという洗脳なんですよ。意識的に凶悪犯罪を生み出すための教育や・・・ああ、メディアもそうだな、洗脳報道をしているんですよ。ゲームも同じですね。だから物事を勝ち負けでしか考えない。負けたら悔しいから相手を傷つける、殺しちゃう、そんな感じじゃないですか。彼らの親世代だって同様です。いや、バブルを経験した親世代からオカシイかもしれない・・・」と呟くように言うと、異能は笑った。
「さて、本題に入りましょう。お兄さんは何かおかしな宗教に入信していたりしましたか?」
「ああ、宗教は洗脳ですからね。うふふふ。でも、兄は宗教嫌いでしたよ。いつも政治に手を出した宗教団体のことはもちろん、高額な壺やらなんやらカンやらを信者に売りつけるカルト団体のことも酷く悪口を言っていましたしね」
「そうですか。実は、中村邑子と、彼女のあとを追うように自殺した芸能人たちは、みな同じ宗教の信者だったんですよ」

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