認知症者の目線で書かれた『全員悪人』を読んで
村井理子さん著『全員悪人』を読みました。
この作品を知ったきっかけは、ある方が拙著について書いてくださったレビュー経由でした。認知症者の目線で書かれたエッセイ風の小説、ということで興味を持ちました。
とても読みやすく、認知症者の行動や言動の理由を知ることができます。
介護者側の目線で書かれた小説・エッセイや、認知症への理解、認知症介護のコツを紹介したような本はたくさんありますが、認知症者本人の目線から書かれたものはまだ少ないと思います。
この形態の本はもっとたくさん出てほしいし、認知症介護を始める前に、ぜひとも知っておいてほしい情報です。
「どうしてそんなことをするの?」
「どうしてそんなひどいことを言うの?」
その理由がわかっていれば、介護する側の気持ちは変わると思います。
そういった意味で、今後も認知症者目線のお話が増えて、たくさんの人の目にとまるようになればいいなと思います。
ただひとつ気になったのは、認知症の初期の頃は、自分が認知症であるとわからない時(自分はまだしっかりしていると思っている時)と、自分自身で異変に気づき、家族も困っていることを理解できる時とがあり、私の母は、自分で自身が壊れていく過程を理解できてしまう、その頃が一番辛そうでした。
そのあたりの、本人の苦しさも書かれていたらよかったなと思いましたが、それだと重くなりすぎて、この本の、軽い語り口調で読ませていく雰囲気には合わなくなってしまうのかな……とも思ったり。
著者の村井さんは、たくさんの人に、認知症者本人から見えている世界を伝えたかったのだと思います。
拙著の話で申し訳ありませんが、私も同じような目線で物語を書いており、短編集『おもちゃの指輪が絆ぐ時』は、たくさんの人に読んでほしいと思って執筆しました。
執筆中は介護しているときの記憶がフラッシュバックして辛かったのですが、今は書ききってよかったと思っています。重たい内容なので、出版してからしばらくは、宣伝することをためらった時期もありましたが、「たくさんの人に伝えたい」と思って書いた本であったことを、ここ最近いただくレビューを読んで改めて思い出したので、これからは積極的に宣伝していきたいと思います。
一人でも多くの方に届きますように。
▼Kindle版(電子書籍)
▼ペーパーバック版
できれば、前情報なしで読んでいただきたいなぁと思いつつ、とてもありがたいレビューをいただいたので、いくつかご紹介させてください。
(※少々のネタバレを含みます)
◆Amazonレビュー
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