京都大学「医学領域」産学連携推進機構

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最近の記事

時にはコップの中から溢れ出てみる

大学生や大学院生のキャリア相談に乗ることも少なくない。真っ白なキャンパスのように純粋な彼らを見るにつけ、若かりしころ、とても世間知らずだった自分の未熟さを思い返し、面映ゆい気持ちになる。就職が決まりましたとキラキラの笑顔で報告をくれる学生達は、これから意気揚々と社会へと歩みだす。歩んでいく先々に挫折し、落ち込み、ぼろぼろに傷つくこともあるかもしれない。そんな彼らを見守り祈るしか出来ないに自分は、彼らが居場所を失い拠り所を求める時にはそれを受け入れ、癒して、再び大海原に送り出し

    • KUMBLニュースレター 2023年9月号

      KUMBLニュースレター 2023年9月号を発刊しました この度「KUMBLニュースレター 2023年9月号」を発刊しました。 今号では、10月に開催されるライフサイエンス領域の国内最大のパートナリングイベントであるBioJapanでの本学の取り組みについて特集でご紹介しています。 また当機構では、企業と研究者との協業におけるマッチングを目的として研究者の企業への研究提案についてもご支援しており、今号ではその具体的な支援内容についてもご紹介しています。 ぜひ手に取って

      • 選ばなかった過去を選んだ過去と比較することは出来ないが、海外留学はした方が良いのか否かについての私見

        キムチ炒飯は、キムチをフライパンでしっかり炒めて焦げ目をつけてからご飯を絡ませると全体に香ばしさが増すのよと、韓国人の研究者の方に教えていただいた。「卵を落とすと優しい味になるの」と言ったその人は目が眩むほど美しかった。 タイ人の留学生に、お願いして渾身のトムヤンクンを作ってもらったが、辛すぎて誰もが食べられず、皆が辛いよと騒ぎ立てるのをみてあきれたように笑う彼の笑顔はとても愛くるしかった。中国人の友人に、炒飯を作るときには卵の油でご飯を炒めるので、最初に卵を入れるのだと教え

        • 不幸に対して鈍感であり、幸せに対して敏感でありたい

          自分とは何か、本当は自分はどうしたいと思っているのか。自分とじっくりと向き合い自分を見つめることで、ありたい自分、あるべき自分の姿を見つけてほしい。それがセルフケアに繋がり、結果、他者へのケアにも心を配ることが出来ると考える。 「社会は人と人との繋がりで成り立っている。自分を深掘りすることで総じて先々のキャリア選択やキャリアアップにもつながる」というような気付きを促すための人材育成の講義を大学院でやっている(決して怪しいものではない)が、ある時、受講者の一人であった某教員か

        時にはコップの中から溢れ出てみる

          電車に乗るのは嫌いじゃない

          家から一歩でると途端に体温に近い生ぬるい空気が身体中にまとわりつく。ただでさえ朝一番、低いテンションを奮い立たせて家を出るのに、爽やかさという言葉の対局にあるぐっしょりと重い空気が背後霊のように背中に乗っかり、上げたテンションはぐぐんと下がる。 とはいえ、お金をいただいて働いている身としては、暑さ寒さにめげている場合でもない。駅のホームに立っていると、JRの車両が滑り込んできた。入線します、という駅員さんのアナウンスが好きだ。入線という言葉がなんだかカッコいい。2時間近く通

          この広い世の中の狭い世界で同窓生に出会う

          出身大学の研究室の同窓会から、HPに掲載するための近況報告の執筆のお誘いをいただいた。後輩のためにお役に立てるなら喜んで書かせていただきます!と、後先考えず脊髄反射的に二つ返事で前向きな回答をしたが、PCに「私は」と二文字を打ち込んだところで完全に思考停止し、一向に筆ではなくタイピングが進まなくなった。 そこで、なぜ近況報告が書けないのかを考察してみた。まず、「アカデミアでの各種研究支援活動」と一言でくくっている私自身の普段の業務の種類が雑多すぎて何から書けば良いかわからな

          この広い世の中の狭い世界で同窓生に出会う

          産学連携のためのリエゾン~大学の研究力向上のために我々がすべきこと~

          京都大学大学院医学研究科「医学領域」産学連携推進機構(KUMBL)というところでお仕事をしております。何らかの事案ですでにご一緒させていただいた方も、初めて当機構名を目にされた方も、どちら様も何卒よろしくお願いいたします。 本日、当機構のHPをリニューアルした旨、各所にアナウンスを始め、当機構のニュースレターも併せて発行いたしました。 当機構HP:https://www.kumbl.med.kyoto-u.ac.jp/ ニュースレター:https://note.com/

          産学連携のためのリエゾン~大学の研究力向上のために我々がすべきこと~

          当機構HPリニューアルとニュースレター創刊のお知らせ

          ホームページをリニューアルしました このたび、京都大学「医学領域」産学連携推進機構(KUMBL)のホームページが新しくなりました。 https://www.kumbl.med.kyoto-u.ac.jp/ 新ホームページにワンストップ窓口を新設しました。 学内の研究者のみならず学外の皆さまからの産学連携に関するご相談を広く受け付けておりますので、ぜひお気軽にご相談くださいませ。 KUMBLニュースレターを創刊しました 新ホームページの公開と併せ、この度「KUMBLニュー

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          未来創造人材の育成~心地よい「自分の在り方」を見つけよう

          ぼくには誰もいません。 ここには誰もいないのです、 不安の他には。 不安と僕は互いにしがみついて、 夜通し転げまわっているのです。※ ※「希望名人ゲーテと絶望名人カフカの対話」より抜粋(頭本弘樹編訳、株式会社飛鳥新社より発行(2015年3月2日)) 日本の国際競争力を高めるために大学が出来ることなんでしょうか。研究者のために、基礎研究力をさらに向上させるための様々な支援をすること、そうして得られた成果を世界に発信して明確に顕在化すること、と簡単に書いたけれど難題です。そん

          未来創造人材の育成~心地よい「自分の在り方」を見つけよう

          アンメットニーズへの挑戦:毒と薬と食物はいったい何が違うのか

          「玉ねぎも、1日10キロも食べれば人は死んでしまう可能性があります。」 資格が取れるから、という安直な理由で大学では薬学を専攻した不埒な私であったが、大学に入学して最初に受けた薬学の講義で「薬学という学問の集大成」にがっつりと心を掴まれ、以来、魅了され続けている。 件の講義で壇上にあったのは、今は大阪大谷大学の教授で大阪大学の名誉教授である那須正夫先生であった。那須先生は始めに黒板に三つの円を重ねた「ベン図」を描かれ、一番大きな円に食、次のサイズの円に薬、そして一番小さな

          アンメットニーズへの挑戦:毒と薬と食物はいったい何が違うのか

          文化的にはコスタリカ?ホフステード教授の「文化比較の6次元モデル」と自己再認識

          他人にはやれ自己啓発だのやれ自己研鑽だの言いながら、姑息にも自分自身の育成については気づかないふり見て見ぬふりをしてきた。そんな私もさすがにいつまでも立場上そうしているわけにもいかないと一念発起し、このほど「Being 」において極めて重要な「自分自身の文化的背景を知る」ために「ホフステードCWQ」のアセスメントを、CQラボを主宰されている宮森千嘉子先生に実施していただくこととなった。 ホフステード教授は「文化比較の6次元モデル」を提唱した世界的に有名な国際経営論・文化人類

          文化的にはコスタリカ?ホフステード教授の「文化比較の6次元モデル」と自己再認識

          僕らの体は砂糖で出来てる~他者へのケアと自分へのケア~

          諸事情によりアメリカとカナダに7年住んでいたことがある。その間、日本の実母からは「そちらは雨のようだから、仕事に行くときは傘を忘れずに持っていきなさい」といったような、天気を心配する連絡が少なからずあった。 わざわざ日本からアメリカやカナダの天気予報を見て心配してくれなくても大丈夫なのにと、心配をかけて申し訳ないような気持ちもありつつ、一人前の大人であるにも関わらずいつまでも子供扱いされていることに少々おもはゆいように感じつつ、傘をもっていきなさいという母親の言葉を複雑な気

          僕らの体は砂糖で出来てる~他者へのケアと自分へのケア~

          こころの「アソビ」と「ノビシロ」と、自分らしい生き方と

          空を見上げて異国の友を思い、空を見上げて在りし日の自分を想う。空は時間も距離も繋ぐ。 春空の下、卒業式のシーズンに思い出す景色。母校の高校のシンボルであったゆうかりの木のそばで、眩い光に溢れた校庭で「またすぐ会えるよね」と笑顔で互いに手を振って、それぞれの進路に向けて大きな希望と漠然とした不安を胸に別れたきりの学友達。30余年の月日の流れのなかで、阪神大震災を経て老朽化した校舎はすでに建て直されて街の風景も一新し、私の記憶の中でもあの日の景色は年々ぼやけていきながらも、思い

          こころの「アソビ」と「ノビシロ」と、自分らしい生き方と

          「男女共同参画」が少々腑に落ちない件

          研究者の将来のキャリアに関するアンケートを若手研究者を対象に某学会で実施させていただいたことがある。結果、若手対象のつもりが、アンケートのお願いのメールを比較的広く巻いたためか、回答者の半数以上が40代以上の中堅の研究者であった。 アンケートの回答を取りまとめると、そこには研究者達の人生の苦悩が凝集されていた。すべて書き出すと大河ドラマよろしくの超大作になりそうなので、ここでは特に気になった課題の一つ、女性の登用の件を恐る恐る取り上げたい。 「教授のポジションに応募しよう

          「男女共同参画」が少々腑に落ちない件

          後ろから導くリーダーシップ~まずは自らを導くために

          リーダーシップ、と聞くと「いやいや自分はそんな柄じゃないから」とおっしゃる方が多いが、実はリーダーシップとは必ずしも「引っ張る」ということではなく「導く」ものだということが、歳をとるにつれだんだんわかってきた。その決定的な違いは、「引っ張る」方はチームの前に立つが「導く」方は、チームのどの場所にいても良いということ、つまり、後ろから支えたり、脇から声がけしたりといったことでリーダーシップを発揮できる、ということである。シェアドリーダーシップという言い方もあるようだ。 すなわ

          後ろから導くリーダーシップ~まずは自らを導くために

          私の居場所の「Being」

          「Being」を直訳すると「在る」となるのだろうか。Beingとは価値観や潜在的な能力、本心に向き合うことで自己理解を得る、といったようなことであるが、日本語を当てはめるのは難しい。いろいろ考えたけれど、やはり「在る」が最もしっくりくる。もしくはこれは「自分の軸」でもある。 自分は何のために生まれ、何のために生き、何故死ぬのだろう。過去から未来に綿々と命を繋いでいくためなのだとしたら、繋いだ命のたどり着く先はどこになるのだろう。そしてこの流れの中で、自分はどのように「在」れ