『私の容れもの』作家・角田光代が加齢による体の変化をポジティブにとらえたエッセイ集
加齢とは、どんな現象を言うんだろう?
作家の角田光代さんが、加齢に伴う自身の変化を語った、エッセイ集『私の容れもの』。中年と呼ばれる年齢に差し掛かり、さまざまな変化が起きた体を、面白がって見つめた内容になっています。
霜降り肉がキツくなる、とつぜん運動を始めたくなる、などなど。若い頃、「そんなわけないでしょ!」と思っていた変化に「とうとう来たか!」と向き合う姿は、なんだか元気がもらえる。
それにしても「容れもの」って表現、軽やかで素敵です。
体は変化する。では、中身は?
タイトルの通り、ほとんどのエッセイはわたしの容れもの、体の変化をつづったもの。その中に「補強される中身」という、中身の変化をつづった話があるのですが、それがなかなか興味深かった。
年をとると丸くなる、とよく聞く。若いときにはたいへんきつい性格だった人が、年齢を重ねてずいぶんとおだやかになった、というような意味合い。子供のころからそんな話を聞いていたので、私はずっと、加齢イコール人間ができてくる、というものだと思っていた。
これよく聞くよね。でも、どうもこの方程式が当てはまらない人が多いことに気づいた。で、角田さんはこう思った。
生きていくということは、たしかにいろいろ経験することではあるけれど、経験し、賢くなっていくというよりは、経験し、「自主規制しなくても、ま、平気らしい」と知っていくことなのかもしれない。
たしかに!悪い意味じゃなく、良い意味で手の抜きどころを知って、精神的なバランスを保つのって重要よね。解放と制御のバランスを学んで、社会をゆるりとただようことは、生きていく上で大切だと思う。
欠点をなくすより、憎めない人になるほうが、よほど重要。
そんな気づきで、この話は締めくくられていた。ほんとほんと、そういえば、親しい人の欠点はいくらでも思いつくけど、ぜんぶ憎めないから付き合ってるなぁって。
じぶんの欠点も「憎めない」って、思ってもらえているんだろうか。思いがけず、日頃のおこないを振り返るきっかけにもなる1冊だった。
年を重ねることが恐ろしくなくなって、そのぶん、ちょっぴり楽しみになる、そんなポジティブエッセイです。
なんとなく、さいきん気が張っている気がする人に、おすすめ!
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