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太宰治の『人間失格』は、昭和版『夜に駆ける』だって本当ですか?~消えたくなったら読みたい1冊~

えらい人が、そんな感じのことを言ってました。
たぶん、登場人物が死にたがるのでしょう。

ということで、この記事では、『夜に駆ける』の世界観に引き寄せられた人は、『人間失格』も読んでみよ!って話をしています。

ちなみに冒頭の「えらい人」は、テレビ出演もされている大学教授、齋藤孝先生のこと。

『超訳 人間失格 人はどう生きればいいのか』で、YOASOBIの『夜に駆ける』ブームについて触れてます。


2分で読める、『夜に駆ける』原作小説『タナトスの誘惑』


2020年に大ヒットした音楽ユニット、YOASOBI。

彼らの楽曲『夜に駆ける』は、星野真夜(ほしのまよ)さんの短編小説『タナトスの誘惑』がもとになっています。

普段小説を読まない人も、ブームに乗って、「これは読んだ!」って人多いのでは。

大人たちは、エンタメ業界に身を置く方でもなければ読んだことがないかもしれない。2分もあれば読めるので、大人に限らず、未読の方はぜひこの機会にどうぞ。

タナトスの誘惑※monogatary.comサイトに移動します

ちなみに、『タナトスの誘惑』を含む、他の楽曲の原作小説を収録した書籍も出版されています。


負の感情を整理してくれる、暗い作品の力


ここからは『タナトスの誘惑』を読んだ人に向けて書きますが、読んでみてどうでした?

悩んでるときに、こういう「死」がテーマの作品に触れると、自分の中の負の感情とシンクロして、少し心が軽くなりませんか。

誰にも話せずにいた気持ちが言語化、もしくは映像化されて、目の前に現れる。自分の辛さを、良い意味で「自分だけじゃないんだな」って思わせてくれるから、孤独がやわらいで、心が軽くなるんじゃないかと思うのです。

散らかり放題だった負の感情を消化して、心の引き出しにキチンと整理してくれるのが、こういった作品の良さだと思う。


そういえば、不幸な自分に酔いしれる、いわゆる悲劇のヒロインは良くないって言う人がいるけれど、私は肯定派。思ったよりダメージが大きくて、どうしても一旦逃避して態勢を立て直したいときってあるもん。

負の感情を見ないふりして消化不良のまま進むと、どこかでほころびが出てくる。対策がわからないまま、同じ悩みにぶち当たったりする。

だから、悩んだときや辛いことがあったとき、こういった作品の登場人物と自分とを重ね合わせることで消化するスキルを持っていると強い。

ただ、悲劇のヒロインを演じるときは、ひとりでひっそり自分のために。周りを巻き込まないことが、なによりも大切だと思います。

読書は、あなたの一生の親友探しでもある


そろそろ『人間失格』の話する。

あのね、『夜に駆ける』の一連の作品世界に惹かれた人に伝えたい。こうやって孤独に寄り添ってくれる作品って、一生のうちに読み切れないくらいたくさんある。

名作と呼ばれる、長い年月をかけて多くの人に支持されてきた作品には、そういった作品がたくさんある。太宰治の『人間失格』もそのひとつ。

この作品に触れることで、モヤモヤとくすぶっている負の感情が言語化される快感を知ってほしい。

純文学は出来事よりも感情に焦点を当ててつづられていることが多いから、特に話の内容は追わなくてもいい。自分の感情とシンクロする部分を見つけるのが楽しさでもあるし、自分の糧(かて)にもなる

あとは音楽とか映画と同じで、自分では気づけなかった視点とか、「素敵な表現だな」って思わせてくれる言葉にいくつ出会えるか。そうやって楽しむといいんじゃないかと思う。個人的には。

生きていれば、身近な人だからこそ話しづらい悩みとか、幾度となく出てくる。今はSNSがあるから、自分の気持ちを吐き出す場所はたくさん与えられてる。

ネットで検索すれば「いじめ」「失恋」「勉強」「人付き合い」などなど、あらゆる悩みに特化したまとめ記事が、読み切れないほどあふれてる。

でも、もしそれでも満たされなくて、ウジウジと悩み続ける自分が嫌になったら、孤独が少しも解消されなかったら、『人間失格』を読んでみてほしい。

多分そういうときって、自分の中にしか答えは無くて、でもその答えを見つけ出す手段を持っていない状態。読書はきっと、あなたの中にある答えを見つけ出す手段として、新たな視点や言葉を提供してくれる。

読書も人付き合いと一緒。

合わなかったら離れればいいし、合うものを見つけるために動けばいい。人付き合いと違うのは、相手の気持ちを汲む必要がないこと。繊細さんにはぴったり。

世界一雑な、太宰治の『人間失格』あらすじ


今すぐあらすじを知りたい人は、ウィキペディアへどうぞ。

学生は国語の資料集開けば大体の情報は載ってる。さっきも書いたけどあらすじの把握って個人的には重要ではないかな、と思う。

とはいえ、主人公の大庭葉蔵(おおばようぞう)については、ちょっとだけ紹介しておきますね。

酒とたばこと淫売婦、非合法の活動に学生のうちから手を出す、恋人と心中を試みる、妻が犯されているのを黙って見ている、クスリ漬けになる
人物です。『人間失格』は、そんな葉蔵の人生をつらつらとなぞった1冊。

ライトノベルっぽく、挿絵が入って読みやすくなったものも、2021年に出版されました。活字苦手な方は、こっちどうでしょう?

『超訳 人間失格』も紹介しておきます

なんでこの記事を書いたかというと、冒頭でも触れた『超訳 人間失格』がどちゃクソおもろだったの、言葉がきたないけれど感じたそのままの表現。

YOASOBIがヒットした背景と、『人間失格』が今も読み継がれる名作であり続ける背景には、同じ生きづらさというテーマが隠れているって言ってた。

これ読んで感動した。言語化の天才。ちなみに昭和版『夜に駆ける』というワードは、私が勝手に作った。

「夜に駆ける」は、端的に言えば心中の歌。だから、「いま若者に心中の歌がウケている」なんて言われたりしています。・・・(中略)・・・でも、そういう音楽を聴いたからといって心中しようと思うわけではありませんよね。むしろ、生きづらさを過敏なほどに感じ、それを表現してくれているものに出合うと「自分の代わりにやってくれている」という気持ちになります。
斎藤孝『超訳 人間失格』(株式会社アスコム、2020年)

ここまで読んだものの、「気になるけど読むのめんどい」って人には、こちらをおすすめする。絶対、「はやく人間失格読みたいー!」ってなるよ。


余談ですが、齋藤孝先生の本を読むまで、主人公の名前ずっと間違えて読んでた。大庭って「おおにわ」じゃなくて「おおば」なんだね。あらら。

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