『時をかけるゆとり(学生時代にやらなくてもいい20のこと)』直木賞受賞の『何者』を生んだ、朝井リョウのエッセイ集
ずっと恥部。恥部をさらけ出したエンタメ。すごいなぁ。
今回は、朝井リョウさんのエッセイ集『時をかけるゆとり』を取り上げます。
※文庫化に伴い、単行本の『学生時代にやらなくてもいい20のこと』に、追加エピソードが収録され『時をかけるゆとり』に改題されました
大学2年生のとき、『桐島、部活やめるってよ』で小説すばる新人賞を受賞し、作家デビューを果たした朝井さん。2020年には、作家デビュー10周年を迎え、記念作品として『スター』と『正欲』を発表しています。
平成元年生まれ、ゆとり世代の著者が、自身の人生における、思い出すとちょっと恥ずかしいような、でも、当時は全力だった経験を、面白おかしくつづった、『時をかけるゆとり』。
本を開いていちばん初めに目に入る、カバーの著者(自己)紹介だけでも、読む価値がある。軽い読書で笑いたい方、気分転換におすすめの1冊です。
ゆとりが持つ、強い自意識と自分を客観視する能力の高さ
このエッセイの何が面白いかって、著者の「強い自意識」と、「自分を客観視する能力の高さ」が、随所に現れているところ。そして、それを自虐でどんどん開示していくところ。これって、ゆとり世代の特徴なんじゃないかな、と思うのです。
朝井リョウさんの世代といえば、1つ年下のわたしの記憶をたどると、初めてインターネットに触れたのは小学生の頃、青春時代のインターネットといえば、「ニコニコ動画」と「2ちゃんねる」だったと思う。
「Twitter」や「Facebook」といったSNSが広まりだしたのは、大学生になってから。高校時代の時間を多く割いた「ニコニコ動画」や「2ちゃんねる」は、顔の見えない誰かが、そのまた誰かを嘲笑する言葉があふれる無法地帯だった。
それを見て育っているから、ゆとり世代は「こんなことしたら笑われるかも……(ブルブル)」っていう怯えと、自己顕示欲の板挟みで、それはそれで味のある世代だと、ちょっとだけ思っている。
そんなゆとり世代の生存戦略が、自虐なんじゃないか。
『時をかけるゆとり』は、そんなゆとり世代の魅力を存分に味わえる構成だと思う。とくに、過去に発表したエッセイを自分自身で添削した「知りもしないで書いた就活エッセイを自ら添削する」は、笑えます。
構成にもこだわりを感じられる、暇つぶしエッセイ決定版!
冒頭にも書いた通り、単行本『学生時代にやらなくてもいい20のこと』を改題し、文庫本に生まれ変わった本作。冒頭に年表が、最後に3編のエッセイが追加され、パワーアップしています。
年表は、国内外情勢と「そのころ朝井は……」という対比を見ながら楽しめるし、追加されたエッセイは、自身が「スかしている」と書いた当時の事を振り返っていたりで笑える。
暇つぶしに最適なエッセイです。笑いたい人に、ほんとにおすすめ。
■この本が気に入った方には、こちらもオススメ
お笑い芸人、Aマッソの加納愛子さんによるエッセイ。朝井リョウさんが、「罠みたいな本」と語った本作。視点が独特で、「そこ、題材にする?」というものが多くて、芸人さんのエッセイだな、という感じ。日常のことを語ったエッセイはもう十分読んだな、っていう方にもおすすめです。
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