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『踊る彼女のシルエット(デートクレンジング)』既婚と独身は対立する?婚活、妊活、アラサーの苦悩を柚木麻子が描く!

(※2021/4/19更新:文庫化に伴い、単行本の『デートクレンジング』が改題され、『踊る彼女のシルエット』になりました)

↓ 以下は、単行本『デートクレンジング』時に執筆した紹介です。
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女を取り巻く、呪いのぜんぶ。

既婚者と独身は仲良くできない、姑と嫁はわかりあえない、男に評価されなければ無価値。

必ずしもそんなことは無いとわかっているのに、なぜか頭を離れない、これらの呪いたちに、苦しめられているアラサー女って多いんじゃないか。

今日は、そんなテーマに切り込んだ柚木麻子さんの小説「デートクレンジング」をご紹介。ありきたりな表現で恐縮ですが、「自分の人生、自分で決める!」って、前向きになれる1冊です。


アメリカ発祥の「デートクレンズ」とは?


タイトルにもなっている「デートクレンジング」という言葉には、語源があります。日本よりも、カップル前提の文化が強い、アメリカが発祥の言葉だそう。女の人は、デートをしない時期を意識的に作ろうっていう意味

経験のある方もいるかと思いますが、「恋人が欲しい!」と息巻いて、相手探しに一生懸命になると、自分を見失いがち。

自分はどんな人が好きなのか、どんなことを大切にしたいのか。自分とゆっくり対話して、向き合うためにデート断ちをする。それをデートクレンズと呼ぶんですって。

女友達を分断する、女の呪いをぶちやぶれ!

お話はこんな感じ。

メインの登場人物である佐知子と実花は、学生時代からの女友達。35歳になった現在は、佐知子はお姑さんと喫茶店を経営しながら妊活中、実花は独身で、仕事に熱中する日々。

ある日、実花がとつぜん婚活すると言い出して……っていう。

そこから2人の関係がギクシャクしだして、実花は同じく婚活をしている知り合いと親しくするようになるんだけど。その知り合いが、なんとも嫌な女なんです!婚活が上手くいかないせいか、既婚者へのアタリが強い。

3人が集まるシーンで、その女が佐知子に放った発言は、なんとも考えさせられるものがある。

何もかも欲しいなんて、贅沢なんだよ。あなた以外の女がみんな我慢してきたことだよ。男と違って、女は環境が変わったら、これまでの友達はあきらめなきゃいけないんだよ。環境が似たもの同士じゃなきゃ、女は仲良く出来ないようになっているんだから。

登場人物それぞれが、呪いに苦しめられながら、もがく姿が繊細に表現された小説です。物語の終わり、それぞれがなりたい自分像を思い描きながら、前に進んでいく姿は必見。

色んな呪いにモヤモヤしているアラサーはぜひ。


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