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Staring at the fried egg

「どうしたの。またメダカの生育について考えているの?」「違う!」
 春香は同棲している洋平が、朝食のテーブルに座ったまま視線をある方向に出したまま動かない状況に対して苦言を呈した。洋平の表情はある場所を睨んでいるようにも見えるが、そうではないようにも思える。
「ねぇ、洋平。今日はメダカ店の勤務休みでしょ。あなたが休みの日は、親方がいて管理してくれるんだから気にしなくても」「いや、それはわかっている」
「だから大丈夫よ。あの子たちは1週間餌がなくても生きるって、この前ネットで書いていたの見たし」
「それは当然知っている!彼らメダカには胃袋も腸もない!」洋平は顔をしかめて不快に答えた。

「じゃあ何よ。何で休みの日の朝から食べ物を前に何考えごとしているの?」「いや、なんでもない」
 春香が心配そうに質問を繰り返すが、洋平は小刻みにうなづくだけで、朝の食事をとる行動を起こさない。
「早く食べないと遅れるわよ」そういうと春香は先に食事を終え、出かける支度のため自室に入った。

 ひとり残された洋平。このとき、なぜか目の前のあるものが気になった。
「熱によって形が変化する。うーん、それでいて不思議なんだ。元々は同じもの。なのにひと手間かけただけで、こんなに姿かたちが変わる存在ってほかにあるのだろうか? いや無いはずだ。
 これが自然界でそのまま変化した存在であれば、早朝から鳴く存在になる。その後の処置としてそうが焼こうが同じ形だ。カットをすることで形が変わり、調味料ひとつをうまくやればで肉としては美味しい。だが、目の前のこやつは、カットをせずとも単体で形が変わるから不思議だ」

 一人語りをする洋平は、テーブルに置いてあった。コップに入っている牛乳を飲む。口に流れる白い液。洋平はあまり牛乳に対して良い思い出はない。だが牛乳好きの春香の影響で飲むようになっていた。冷たい液体はそのまま口の中から喉の奥に入り込む。飲み終えると、口元にひげのようなものができる。その瞬間が実は気持ち悪い。洋平は慌ててティッシュを取り出すと口元をきれいにふき取る。

「殻のまま茹でればそのままの形で凝固。殻を割れば中身が出る。それはあらゆるものがそうだろう。ソフトクリームだって、そこからかじれば中身が下に漏れ出るに違いない。だけど、そこからだ。中身は液体に近いからいろいろ加工できる。そういう料理がほとんどだ。
 しかしなぜだ!こやつは殻が割れて数百度に熱せられた鉄でできた板の上に載っているだけで、独自の世界を作り出すではないか? 最初は透明の海の真ん中に浮かぶ黄色い島。海はやがて白くなって凝固し、そして島は薄い膜に覆われる。その膜が何らかの理由で破れれば、火山が噴火したかのように黄色い溶岩が流れ出す。それは引力に従い白い凝固した海。さらにはその先の熱せられた鉄板域にまで達する。そして熱により、その黄色い溶岩もやがて凝固するのだ」

 洋平は朝からふとした理由で、頭の中の想像力が高まりすぎていたようだ。途中から何を言っているのか、自分自身でもわからくなってしまう。ここで大きく深呼吸をした。そして腕を組む。

「しかしこれが魚だったらどうなるんだろう。タラは小さすぎるな。イクラはまだ可能性がある。今度機会があったらやってみよう。うん?その前にだ。魚じゃないがウズラでもよいな。
 ああ、また妄想した。そういえば、いいエサやっているのに、なかなか産んでくれないよな。あいつらメダカは」

「洋平、まだ食べてないの? もう出発まで本当に時間ないよ!!」
 身支度を終えた春香は、バッチリメイクを決めて先週買ったばかりというワンピース姿。そしてあきれた表情で声を出す。
「あ、わかっている! こんなの5分で平らげるから」と我に返る洋平。

 すぐに行動を起こすと、本当に素早い。さっそく目の前の存在に対してテーブルに備え付けられている黒い液体を振りかけた。そして右手に持っていた箸という名の2本の細長い棒をその物体につきさし、その一部を裂く。そこからは黄色い液体があふれ出た。
  だがそれを気にせずその破片を口の前まで運ぶと、そのまま中に入れる。即座に上下の歯を起用に動かした。粉々になって喉に落とす。そして一言つぶやいた。

「冷めているが、やっぱり半熟だからうまい!」


※こちらの企画のアイデアを利用してみました。

目玉焼きの写真、もしくは実物の目玉焼きを凝視しながらnoteを書く。
「目玉焼き」という単語を使うのはNG。なるべく目玉焼きと関係ない内容で、「こいつ目玉焼きを見ながら書いたな」とバレるように書く。

おまけ:先週旅に出ていつもと違う投稿でしたが、こちら頂きました。

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第2弾 販売開始しました!

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シリーズ 日々掌編短編小説 280

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