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現実世界を突き抜けるエナジーボール

こちらの流れです。 (単独でも楽しめます)

「エドワードどこに行ったのかしら?」日本語が堪能な英国人女性ジェーンは、金髪の髪をかき上げながら、パートナーのエドワードこと江藤を探していた。

「おい、そこの金髪白人!」突然ジェーンを呼ぶ声。「How rude!(失礼な!)」と大声で言って声のするほうを振り返ると、サングラス姿の角刈りの男。「俺のことを忘れたか?七五三の日だよ。とんだ恥をかかせやがって」
「ああ、思い出した。ひどい男。またやられたいわけ?」

「ふん、今日はひとりじゃねえんだぜ。おい」すると男の後ろから体格の良い3人の男が現れる」

「え、マジで! あ、これ!」しかしジェーンは冷静だ。持っていたカバンの中から紙を取り出す。

「オイ、なめるなよ。白人女をやれ!」体格の良い男のひとりが、いきなりジェーンに向かって殴りかかろうとする。するとジェーンは持っていた紙を上下に激しく前後させた。
 そのまま突っ込んでくる男。ジェーンは距離を保ちながら、男の指に紙を当てると思いっきり上下。「イテ、うわぁイテテテエ」男は切られた指をもう片方の手で押さえながら顔をしかめた。
「どう、紙と思って舐めると怖いわよ。高速でやれば指切れる」

「このアマなめた真似してんじゃねえ」別の男は、ナイフを取り出した。
「ふん、紙でも切れるかもしれないが、もっと簡単に切れる金属刃の威力を見せてやる」
 ジェーンは、紙を持って先ほどの男と同じような間合いを取るが、今度の男は慎重だ。さらに三番手の男が、左手からファイティングポーズを取りながら近づく。ひとりが相手なら普段から習っている護身術が聞きそうだが、右にナイフ男、左に別の男とふたりがいるとさらに、角刈りのリーダー格も一歩ずつ、ジェーンに近づく。そして口元を緩ませて余裕の笑み。
「ククク!無駄だな。こいつらは俺よりも武術の心得がある。金髪女よ、悪いが、今回は痛い目に合わせてやるよ」

 ジェーンは、睨み返すが明らかに不利な状態。額から汗が流れる。
「エドワードどこ行ったのかしら。もう役立たず」


「待ちな」突然エコーの利いた声。ジェーンが声をするほうを見ると黒い影が見える。そして「ハドゥボール」と声を出すと、影は突然手をかざし青い光の玉が現れた。そして軽く腕を前に出すと、それがナイフを持っていた男を直撃。

「あ、ぎゃー」男はぶつけられた直後に苦しみだし、その場であおむけに倒れた。
「な、なに? おい、あいつを先にやれ!」角刈りの命令で、ファイティングポーズの男と、先ほど紙で指を切られた男が、影のほうに向かう。
 すると影は同じような、声を出すと連続して光る青いボールと赤いボールを連射。それぞれの男に直撃し、ふたりとも苦しみだしてその場で倒れた。

 これを見て焦ったのは角刈り男。「お、おい、た、助けて!」と慌てて後ろを向いて逃げる。しかし影から三度投げられた、光る赤いボールにより直撃を受け、3人同様に倒れた。

「Great. Thank you!」とジェーンが英語であいさつをして、影のほうに近づく。しかし突然目の前が真っ暗になる。

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「ジェーン!」どこかで聞いたことがある声が聞こえ、突然目覚めると見慣れた風景。自宅のベッドルームの天井だ。横にいたのは江藤。
「あ、ああ夢かぁ」「おい、びっくりしたぞ。うなされていたし」

「変な夢見てた。七五三のときの男が仲間を連れてきて、私がなぜか紙で対抗したの。そっか今日12月16日って、紙の記念日って聞いたからだ」
「何が紙の記念日だ。今日は電話創業の日だと聞いたぞ」「え、だってうちの課長が」
「知らないよ、俺の会社では昨日の朝礼に、次長がそんなことをつぶやいていたんだ」

「まあいいわ。でも怖かった」と安どの表情を浮かべるジェーン。しかし江藤の表情は硬い。「そんなことはどうでも良い。今日は早起きの約束だっただろう」「えっと、あ、HADOと言うのを体験」
「そう、お前がやりたいって言ったんだからな」「ごめん、忘れていた。エドワードすぐに支度するわ」


 こうして江藤とジェーンは、ARスポーツのHADOを初めて体験するために関係施設に向かった。
「ではさっそく体験しましょう」

 ふたりは館内のインストラクターの指示通りに、頭にヘッドマウントディスプレイそれから腕にアームセンサーを装着した。
「何かサイボーグみたいね!」とジェーンは嬉しそうにノリノリで装着する。江藤は対照的にインストラクターの話を聞いて淡々と準備した。

 この後は操作方法やゲームのルールなどのレクチャーを受け、何度か実際に操作をする。最後は紅白戦として、他の参加者と3対3の対決。こうしてふたりは初めてHADOを体験した。

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 初めてのHADO体験をした帰り。
「ジェーン、不思議な体験だったなあ。AR(拡張現実)を使ったスポーツは、ゲームのようで」

「う、うん」
「それに、自分の手からエナジーボールとか。自分が漫画やゲームのキャラになったみたいで本当に楽しかった」江藤はそういって口元を緩めた。

「そうね」
「もともと運動神経が良くなくて体育の成績も悪かったし、スポーツは大の苦手。それなのにこれは体以上に頭を使うから、俺向いているかもよ。そう思わないか?」

「ハイハイ」江藤はジェーンのそっけない返答の繰り返しに突然不快になる。
「ちょっと、ジェーン。さっきから俺の話を適当に聞いているだろう!」と江藤の語気が強くなると、明らかに不満そうなジェーンの表情。

「私は、もっとこう時間をかけて1対1で戦うものだと思っていたのに、3人同士の団体戦なんて何よ!」
「え、多分個人技というよりチームプレイなんだろう。このスポーツは」

「そんなことよりもっとがっかりだわ」「何が?」
「だってたった80秒で決着がつくし、私が気合入れてエナジーボールを発しようとしてたら、いつの間にか相手からぶつけられてしまう。何あのスピード」
「ジェーンが遅いだけだよ」「それでようやくボールを出したらと思ったら、今度は何?あのシールドって」
「しょうがないよ。そういうルールだもん」
「戦いのこと全然わかってないでしょう。戦うときには相手に隙を見せないように、間合いとかそういうのが重要よ。それにARの飛び道具なんて、痛くもかゆくもなくてつまんない!」

「要するに悔しいんだろう。俺に負けて。いつも運動能力でジェーンに負けているから、今日は気持ちいい」と嬉しそうな江藤。
 その横で目を最大限に吊り上げたジェーンは、突然走って江藤の目の前に立つ。「な、何!」
「エドワード!ならやろうか?リアルで対決を」と空手のような構えを見せるジェーン。
「あ、り、リアルはやめよう。警察沙汰になる。ね」と、何度も頭を下げる江藤であった。


こちらのアドベントカレンダーに参加してみました。

 HADOと言うものを全く知らないのに、noteのアドベントカレンダーの紹介で、たまたま見つけて参加したという無謀なことをやってしまいました。全くの未経験者として、これを創作するためにいろいろ調べてみましたが、さすがに詳しいことが書けません。やる前とやった後だけが中心になってしまいました。
 ただ調べると面白そうなので機会があれば、遊んでみたいです。


こちらもよろしくお願いします。

15日は茉叶☆Makanaさんでした。

電子書籍です。千夜一夜物語第3弾発売しました!

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シリーズ 日々掌編短編小説 330

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