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「みな同じ」ではないけど、「共にある」ということ〜分断や併合とは違うこと

 昨日も『silent』話題になっているようですね。
見ていないのですが、この際せっかく話題になっているので、どんどん乗っかっていくことにしました!それで業界盛り上がればすばらしい!

 ドラマ見るの苦手なのですが、手話通訳者として知らないでは済まされないなと、最近はSNSやWeb記事などで後追いします。

 今まで「ろう者」と「聴者」「中途失聴・難聴者」は違うよ、という記事をたくさん書いてきました。
お陰で何だか同じ人間なのに違いばかり見せられて、嫌気を感じている方もいるかもしれません。すみません!
同じ人間!全くその通りだと思っています。

 ただ、恐らくドラマ『silent』自体も“違い”を示すことも裏テーマにしているのかなと思います。
それは切なさの要因にもなっているのでしょう。
なぜ敢えてそれを見せているのか。

それは、

違い≠ 優劣、分断
だから併合や型に嵌め込まないで

というメッセージ。
そして、


違い=個性、尊重すべきところ
だから共に在ろう

というメッセージだと思うのです。

シンパシーではなくエンパシー

エンパシーはシンパシーと似て非なるもの、だそうです。

辞書の引用にも、こうあります。

他人と自分を同一視することなく
つまり、
「分かる分かる~~~!!!」
「同じ~~~!!!」
「そうそう~~~!!!」、などではない、というのです。

分からないのです。
同じではないのです。
同じ気持ちには、なれません。
同じ感情は、湧きません。

でも、その人の気持ちを思いやります。
辞書の言葉を借りれば、【相手の心情をくむ】のです。

もし、僕が君と同じ境遇なら・・・
もし、僕が君と同じ人種なら・・・
もし、僕が君と同じ立場なら・・・

そのように考えて、相手の気持ちに感情移入しようと努力する・・・。

上記記事より引用

 毎度引用してすみません💦いい題材が多くて!
奈星さんファンかってツッコミですよね💦 (ファンですけど)

さて、当たり前ですが全く同じという人はいません。
「違い」は無くすことができません。
背景も育ちの環境も経歴も違えば、違いが出てくるのです。
たとえ双子でも。

 『silent』では聴覚というものを用いて
ハッキリと「違い」を前面に出しています。
切なくなるほどに。

それは
「耳の病気がなくなればいい」とか
「声で話せばいい」とか
「読唇の訓練すればいい」とか
自分目線で見ること、相手を自分側に併合するを求めている訳ではないと思っています。

 聴覚障害が世界から無くなっても、一人ひとりの違いはなくなりません。
今回は違いの示し方を“聴覚”にしたドラマだというだけで、
“違いを淘汰してみんな同じになってハッピーエンド!”
ってことはあり得ないと思っています。

 もちろんこれだけハッキリ見せておいて、逆に
違いを無視しろ、ということもないと思います。

相手は自分と違いがある。
じゃあ、相手からどう見えているのか。
その違いをお互いが考える ということ。
違いをどう受け入れ、乗り越えていくのか。
私はシンパシーも嫌いじゃないですが、
このドラマはまさに「エンパシー」を求めていると感じています。

奈々のあざとさ

 夏帆さん演じる奈々、生まれつきのろう者です。
主人公の想に想いを寄せていて、ずっとあざとい?行動や言動をしてきたようですね。
お陰でネット上では、前半はライバルとして、嫌われ役的な意見が飛び交っていました。

 でも先週くらいからでしょうか?ネット上での評価が変わってきました。
奈々派が多くなりました。
奈々が行動を変えたからではありません。

奈々の行動の背景が描かれたからです。

 想との出会いや想から言われた言葉、支えてきた思い
ろう者として想との違いを実感したこと。

今まで「ひどい、自分勝手、私ならこんなことしない」
と思っていたことが
「それならそうしちゃうよね…その行動切ない」
等となりました。

視聴者が奈々側の視点にやっと立てたということだと思います。
これはドラマが求めている大事な側面だと思っています。

相手視点と理解

 ドラマですから、本来見えなかった背景(過去)を描いてくれます。
奈々と想との初対面のエピソード
手話を教えていた時想に言われた言葉、その時の奈々の表情
電話に耳をあてる奈々…

 現実ではどうでしょう。
自分がヒロインの友達だったとして、奈々の現在の行動・言動だけを聞けば
なんて自己中!理解不能!(自分なら絶対しない)
で思って終わってしまうかもしれません。
奈々のろう者故の苦労や、想との歴史を知らないのですから。

 このドラマは

目に見える違いに
自分視点だけで優劣つけたり、レッテル貼ったり判断をしないで
違いを知ったときに
その人らしい背景や理由があると思って接して、受け入れて

同じ人間なのだから

というメッセージも込めているのではないかと感じています。

同じ人間

 私は仕事柄、たくさんのろう者と聴者、そして中途失聴・難聴者のすれ違いや衝突を見てきました。

ろう者は理解が遅い
思いやりがない、わがままだ
自分の話ばかりする

行動だけを自分(聴者)視点で見れば事実なのかもしれません。

でも、
理解が遅い
目で見て分かるように、日本語が第一言語じゃない人と思って説明したか

思いやりがない
分かる範囲の日本語だけ用いているから、ぶっきらぼうに感じるだけではないか

自分の話ばかり
ろう者が自分の話をできるのは通訳者がいる(言葉が通じる人がいる)時だけなのだから、話させてあげればいいのに

と思うこと等たくさんあります。

 当然そんなこと全ては推し量れないです。
ドラマみたいに描かれないので、真実なのかも分かりようがありません。
ただ、推し量ろうとしてみることはできると思います。
同じ人間だからこそ、突き放さずに思い合えればと思います。

裏テーマは“Subtitle”に

 このドラマの主題歌『subtitle』っていうらしいですね。
ヒゲダンの曲めっちゃ好きです。
私ファンになるって感覚ないのであまりアーティストで曲を聴きませんが、いい曲歌うアーティストだと思います。

このドラマのサブタイトルだと思うんです、HP最初に出てくる写真に書かれている言葉。

どんなに美しい音色を聴くよりも
あなたの言葉を見つめていたい

公式HPより引用

併合や型に嵌めることを求めない。
声を出さない想に対し

「あなたの声を聞きたい」
じゃない、
「あなたの言葉を見つめていたい」

“そのままがいい” って言ってる感じがいいですね。

 このドラマから違いを知って
相手を立場を推し量る、同じ人間だからこそ、
“エンパシー” で世の中を見ていきたいですね。

おまけ

 ろう者ハンドバッグ持てないんだって…と悲しんだ皆さん、安心してください!

さすが映里さん!(美央役、那須映里さんはろう者です)
ろう者が全員ハンドバッグを持たないと思わないでー
持つか躊躇する可能性はあるかもですが。
ハンドバッグ等のエピソードはあくまでも切なさの象徴✨
(通訳者は当然仕事で持たないですよ、ハンドバッグ)

片手手話
スマホ左手に持ちながら自撮り的に手話電話されたりしています。
下手したら簡単なやりとりなら顔だけでやり取りできる
なかなか便利な言語♪
(片手手話は慣れないとほんとに読み取れません💦)



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見てないのでネタバレも基本的に無いです。↓↓


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