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アンビバレンス

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どんな形容詞も邪魔だ。
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#詩

二月の詩

二月が嫌いだ。固くなった雪の跡。いつがサヨナラだか知らない間に、二度と会えなくなる。使いかけのライターだけ、残されたって困るね。宙に浮いた言葉ばかりいつまでも降り注ぐ。くさくなったマフラーを洗いたいような温存しておきたいような泣きたいような気持ちで春を信じる。見る、聞く、引き戻される。迎える腕はもはやないのに、馬鹿正直な僕のからだは飢えを訴える。苦しいそうです。出会わなければよかった、って綺麗ごと

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ジェンガの詩

ひと休みするとき君は忙しく
私が泣くとき君は笑う。
アンバランスでしか生きられないのね。

君が言葉を語るとき あんなに一生懸命だったのに
私は余所見して 景色を見ていた。
とても綺麗だと振り返るとき 君は信号の先に。

最後の一歩になる前に総崩れすること
それだけがありがたい希望だった。

惑星を支える透明な糸で繋がり
波打つ罵倒とは分離してたしかにそっと
私と君はいた。

わた

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ただいま。

君のことを考えるなというのは、自分で自分の心臓を引きちぎれと言われているのと同じだ。死刑宣告だ。いっそ単細胞生物にしてくれたら、気が楽だ。

好き嫌いというワガママを言えなくなるくらい、知らぬ間に感情を超えていた。そこでは私は存在しなくなったみたい。私は宇宙に進化した。君を求めてしまうのは引力であり宿命であり自然なことだから、人間が語る理性はとっくに放棄されている。小賢しさなんて屑だ。

好きだ愛

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普通の詩

君は悔しがるかもしれないけれど、君と僕には似たところがあります。
普通、を普通に扱えないところだよ。鏡を見たってウサギとニワトリは違うのに、なんで数え方は同じなの。普通を口に出せば出すほど普通じゃなくなるから、けれども会話を成立させるためには普通を使い通さなきゃ一緒にティータイムもできずに。

フロムが「愛するということ」で仰々しいことを言っておきながら同性愛やアセクシャルを認めない発言をしたとき

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もう告白なんてしないよ

哀しいとか悔しいとか嫌だとか不快というわけではなくて、地中を飛行している気分だったんだ。どうしようもなく苦しく不甲斐ない。迷宮であることこそ正解で、言葉の誕生以前の、空間にも為れない、そうした場所に私は放り出されたようで。なんて言ったら、論理的な君は汚物を飲み込んだようなカカオ1000%の顔をするんだろうね、そんなことはわかってますよ。それでも好きだという逆説を私は宝物にしていたかった。地球に酸素

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この詩集、言葉で表すには難しくて雲の上で宙返りするみたいな感覚になるよ、と言いかけたのがすべて引っ込んでしまった。お気に入りの詩集をプレゼントした瞬間、じゃあ今度感想言うわ、と笑顔で見つめ返されたら、今度を楽しみに待つしかないじゃないか。

#短文 #恋 #詩

贖罪許さぬ愛

空っぽになったアイスココアのグラスには、溶けきらない氷とココアの雫で汚れたストローが残っている。私はストローを掻き回す。氷が弱々しくグラスにぶつかり、虚しく鳴く。
正面に座る彼女は、煙草を吸う。手巻き煙草だが美しい棒状だ。彼女は手先が器用なのだ。煙が私の肺に入り、私は咳き込みそうになるのを堪える。まるで幸せを逃すのを怖れているかのように。
私は煮え切らない棒状の磁石を思い浮かべる。私と彼女

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