ただいま。

君のことを考えるなというのは、自分で自分の心臓を引きちぎれと言われているのと同じだ。死刑宣告だ。いっそ単細胞生物にしてくれたら、気が楽だ。

好き嫌いというワガママを言えなくなるくらい、知らぬ間に感情を超えていた。そこでは私は存在しなくなったみたい。私は宇宙に進化した。君を求めてしまうのは引力であり宿命であり自然なことだから、人間が語る理性はとっくに放棄されている。小賢しさなんて屑だ。

好きだ愛してると吐き捨てて呼吸を保つ、その正当な愛情行為すら覚束ないから、私は口を失った。舌を絡ませて君にキスしてやるのも憚って、黙って皮膚で息をする。君のいう好きな人、の話を受け止める。嫉妬が浄化して、私は聖者の面持ちだ。

テロで一万人虐殺されました、とニュースがジャックされたなら、君は一万分の一になったかもしれない私を心配することはあるだろうか。思い出して欲しい、なんて贅沢は言わないでおこう。

けれども、思い出すという動詞を滅ぼすくらいに、私は君の側にいる、気がしてならないのを、許してくれればそれでいい。気色悪いぞ、と笑って乾杯できるなら、私は君のいる場所を故郷にします。

(好きです)、


#詩 #小説

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