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久賀池知明
2024年6月17日 03:12
結び 藤父らが病院へと運ばれると、夕陽を背に列を為したパトカーがやって来て、瞬く間に学校に規制線を張った。事情聴取の為に運ばれた彼ら以外の全員が呼び止められていたが、長住さんの両親が到着して陽菜の腕に抱えられた少女の遺体を一目見、警察へ「ここは大丈夫です」と言付けるとあっさり解放された。あれだけの量の死体が突如として学校に現れたにも関わらず、誰一人として苦言を呈する者はいない。頭が変わったとしても
2024年6月17日 03:11
歪み その後教室を開けに来た先生に発見され、病院へと連れて行かれる事となった。勿論道中も退院後も警察署でも質問攻めに遭ったが、全てを答えるには私を含め理解が追い付いていなかったし、全てを説明するつもりも無かった。 あれだけ事件性があるにも関わらずあっさりと留置所から解放されたのは、状況的に私が手を出しようが無い事と、床に埋まった南郷の不自然さ、陽菜の助力があったからだろう。留置所内を解放されてす
2024年6月17日 03:09
禁足地 目を覚ました時、まず感じたのは後頭部の痛み。突き刺す様な痛みと鈍く広がる痛みが同時に襲い、その後チカチカと目の前が光り始めた。その光が携帯から放たれるライトだと分かるのには少々時間がかかり、それから頭が白い人物が何かをしているのが目に入った。その人物が誰なのか分かるのには、もっと時間と痛みに慣れる必要がありそうだった。「もう起きて来たの。ドラマだともっと遅かったのに」「誰……」 朦朧
2024年6月17日 03:08
蒐集する時の注意事項一 一つの悪意によって歪められた現実は、結果として複数の悪意を生み出してしまう事も往々にしてある。負の連鎖は延々と折り重なって絡み合い、決壊してまた悪意を生み出す。 パステルカラーで彩られた壁と突き刺さる薄い黄緑色の車体とが、一種の芸術作品と化し、周囲から聞こえる人々の叫び声が作品の完成を祝う拍手に思える。紛れも無く現実に起きた非現実的な光景に、私は恐怖も忘れただただへた
2024年6月17日 03:07
ハインリッヒの法則① 車内に沈黙が流れる。風も吹いていないのか外の木々すら静まり返り、キーンという無音が耳に流れ込んでくる。真帆との怪談話の後は静かにするのがお決まりになっているが、この沈黙はそれではないと誰にでも分かるだろう。こんな突拍子も無い話を聞かされてすぐに感想が出てくる方がおかしい。頭がおかしいのだと思われても仕方ない。とんだ創作話になんて感想を言ってやればいいのかと悩んでいるのでな
2024年6月17日 03:06
狂乱の家族① 目が覚めるなり、誰の言葉も聞かずに優奈は庭へと走り出していた。頭から血が流れ頬を伝い、服を汚していくのなど気にしている余裕など無かった。 奇怪な見た目のあの男が音も無く桑名家へと侵入し、優奈を拳大の石で殴り昏倒させ、愛する奈緒を連れ去って行ったからだ。優奈が倒れる瞬間までは奈緒は泣きじゃくっていたが、床に伏し朦朧とする意識ではその声を確認出来なかった。覚えていないのではなく声が
2024年6月17日 03:05
屋根裏から落ちてきたモノ① その日は桑名家にとって実りのある一日になるはずだった。兄弟三人が代わる代わる使用していた五畳程の部屋の壁と床を張り替え終え、知人から貰った一枚板をリビング用にとテーブルにDIYしたからだ。主にやったのは父の文則で、そういった作業が殊更好きであり、庭に薪を置くための掘っ立て小屋を一人で建てる程だ。勿論知り合いの業者に頼んではいたが、のりを塗ったり壁紙の切り貼り等は率先
2024年6月17日 03:04
学校の怪談一① 翌日、未だ大量に残る廃材を片付ける事に追われ、父に話が出来たのは夕食後だった。父は昨日近所の友人達と朝方まで麻雀に勤しんでいたらしく、起きてきたのは昼を過ぎてからで、私も私ですっかり聞くのを忘れていた。 解体時に出た大量の木材や屋根に使用されていた瓦、足固め用に置かれていた石材などは、大方当時設営された廃材置き場に持って行き処分した。しかし、それでも細かいゴミや幼い頃に使って
2024年6月17日 03:03
あらすじ 桑名光輝は自身の地元である御粕會町を何するでもなく散策していた。三十を手前に兄弟達からはしっかりしろと喝を入れられ、上司からは企画を作れと圧を掛けられる。 うだつの上がらない日々を体現するように地元を練り歩く途中、ふと通りかかった小学生達に「学校で流行っている怪談は何かないか」と尋ねた。 すると御粕會小学校には、生徒達の間で語られる怪談があると言う。それは、校舎の三階にある開
2024年6月10日 13:03
無威徳(六道の内の1つ、餓鬼道に産まれた飢えと乾きに苦しむ人)がそのままこの世に這い出たかと見間違う様相を呈していた。 打ち捨てられた納屋よりも風吹けば崩れそうな家。口にはしなかったが、本当に人が住んでいるとは思えなかったのだ。 村へ入るとそれらから群がる蟻が如く何かが出てきて、思わず慄いた。 眼は落窪み頬に張り付いた■■は褪せ痩け、今にも引き裂けそうな程。肉付きの全く無い手足は枯れ枝のよ