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短編

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数分以内に読める怪談です。
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#オカルト

松茸狩り【不思議な話】

「美味し〜い!」
山の麓にある隠れ家的小料理屋で、松茸尽くしのコース料理を食べていた。
日に数客しか取らないというが、これだけの贅沢な料理ならばそれも頷ける。
たまにはと思って奮発し、片道2時間の道のりをやってきたのだ。これくらいあってもらわねば。
食べ終わる頃店主が席にやってきたので、一頻り褒めちぎって世間話をした所、気を良くしたのかこんな提案をしてきた。
「こんなド田舎ですし、お客様もそんなに

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田原坂【怪談】

私が学生時代に間接的にだが体験した、友人の心霊体験をふと思い出したので書いておきたい。

学生時代私は、クラスメイトが福岡から鹿児島、鹿児島から福岡への自転車旅行を夏休みに敢行したのに感化され、実家のある熊本への自転車帰省を思い付いた。

当時、博多駅付近に住んでいたので、実家までは単純計算で片道120kmの道のりがあった。
結論と言うかオチと言うか、先にお伝えしておくが、根性が無かった為に復路は

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年明け早々の【オカルト】

年明け早々の【オカルト】

「あー・・・・明けましておめでとうございます」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・おめでとう」
神社へ延々と続く人の波の途中、あと半分といった所で日付が変わり、至る所から新年の挨拶が聞こえてくる。
何時間ぶりに口を利いただろうか?まず間違いなくこの波に並び始めた時から、お互い咳の一つもしていないと思う。最寄り駅に着いてから?いや電車に乗る時もその前の居酒屋でも、言葉を交わした記憶がない。
しか

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いたずら電話【都市伝説】

コールセンターで働いていると稀に妙な電話が掛かってくる事がある。大抵はイタズラ電話の類いとして処理される方が殆どだが、明らかに「そういうもの」の場合もあるのだ。
先月私が取った電話では、初め風を切る様な「ビュー」とか「ゴー」みたいな音が聞こえたと思ったら一瞬人の話し声が聞こえ、そのすぐ後に凄まじい衝突音がした。あまりの大きさにヘッドセットを外してしまったが、付け直した時には普通に客が話していた。客

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虫【怪談】

虫【怪談】

友人の両親が営む実家兼食堂で昼食を食べていると、突然、友人が右手で顔の近くを払う様な仕草をした。聞くと「虫がいたみたいだ」と言う。
翌週、昼食を食べている時にまた手で払う動きをしたが、その時友人の顔の近くには何もなかった為
「虫はいなかったよ」
と伝えると、半ば無意識にやっていたのか、友人はハッと驚いた後に深刻そうな顔をして

「……いや俺も最初は虫だと思ってたんだけど、最近違うって分かったんだ。

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