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1分程度で読める怪談です。
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#短編小説

路地裏の理髪店【不思議な話】

路地裏の理髪店【不思議な話】

「こんなとこにあったっけ」
飲み会で遅くなった夜、マンションのすぐ裏手の路地裏で、煌々と光る看板を見つけた。
【〇〇〇理髪】
難しい旧漢字なのか、なんて書いてあるのか分からない。
光に吸い寄せられる虫の如く、フラフラと歩いていき中を覗き込んだ。

チャキ……チャキ……

猫が猫を散髪していた。小さい手で、小さいスキバサミを器用に使っている。寝そべる猫は気持ち良さそうに欠伸を1つして、ふとこちらを見

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白い息【怪談】

白い息【怪談】

「ねぇねぇ、何で冬になると息が白くなるの?」
スーパーからの帰り道、息子がにこやかに尋ねてきた。はぁー、はぁーと何度も息を吐き出していたから気になってしまったのだろう。
しかしまだ5歳の息子にどう説明したものか……水分量がどうのと言っても難しいだろうし。
そう思って横を見ると、まだ息を吐いている。

「えっ」

見間違い……かもしれない。今見れば全く普通な様子だし、疲れているのだろうか。

「どう

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1行怪談

1行怪談

出口が無いと評判の迷路に入ってみたが、今入ってきたはずの入り口が見当たらない

公園で動き回る色とりどりの風船を、包丁で割り続けた

家の庭の隅っこで、透明の何かが雨に打たれている

崖下から「助けて!!」と声がしたので急いで覗き見ると、マネキンが一体ぷかぷかと浮いていた

天井の染みが「ニタリ」と笑った

なんだか昨日よりも見る夢がはっきりと、長くなってきているような気がする

「目の前のボタン

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クリスマスと夢の後ー夢(かなえ)編ー

クリスマスと夢の後ー夢(かなえ)編ー

「本当にごめんなさい。俺・・・・・・このままじゃあなたと付き合えない」
俺がそう伝えると彼女は困惑を露わにした。
それは無理がないよな、と俺もそう思う。説明してよと言われても俺自身まだ信じられないし、説明した所でまあ信じて貰える訳がない。
去年死んだはずの夢(かなえ)が死ぬ前の姿でずっと視界にいるなんて、どう説明したらいいんだ?
彼女が大きく溜息をついて俺に向き直る、と同時に夢の口角が上がっていく

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見ない方がいいよ【ミステリー】

かれこれ10年近く懇意している友人がいる。

中学で知り合い高校大学と同じ所に進み、更にシェアルームをしている程の仲である。
腐れ縁、悪友、それらしい名称をあげれば大体当てはまるかと思う。流石に全部が全部同じと言うわけではなく、進む学科は違えば取る授業も違う。しかし私の人生においてこれほど気の置けない関係になれたのは、家族を含めて片手で数えるくらいしかいない。
友人は私とは違い人当たりも良く頭が切

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テニス【都市伝説】

テニス【都市伝説】

学校にまつわる都市伝説がある

夜中にその校舎を訪れ誰もいないテニスコートに行き、1~6ゲームの間で指定し
「試合をしませんか」
と言って、相手のコートにガットの切れたラケットとボールを置く。この時、出来るだけボロボロの物を渡す事をおすすめする。
暫くすると

トーン、トーン

と地面にボールを打ち付ける音がして、誰もいない筈のコートからサーブが放たれる。
相手のガットが切れている事もあってそこま

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完全犯罪……?【ミステリー】

完全犯罪……?【ミステリー】

「ほんとあんたのそういうとこ嫌い!」
「俺もお前の口の悪さにはほとほと愛想が尽きたよ!」

お決まりの煽り文句が隣の部屋から聞こえてくる。最近、隣に住むカップルの虫の居所が悪いのか倦怠期か知らないが、数日おきに喧嘩を繰り返している。
壁が薄い事も相まって喧嘩の内容は筒抜けなのだが、気にしている余裕がないのか罵声は止まない。

早く別れるなり別居するなりすればいいのにと心から願っているのだが、なかな

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サブリミナル選挙【不思議な話】

サブリミナル選挙【不思議な話】

「バンザーイ!バンザーイ!バンザーイ!」
パチパチパチパチパチパチ
「当選おめでとうございます!」
「流石ですね!」
「得票率9割越えなんて感動すら覚えます!」
「いやいや、これも全て君たちのおかげだよ。ありがとう!」
S県O市市長選挙で、これまでに類を見ない程の投票率、そして得票率を獲得し私は市長に当選した。

君たちのおかげと言ったが、それは文字通りの意味であり、私の思惑通りでもあった。
ある

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