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サブリミナル選挙【不思議な話】


「バンザーイ!バンザーイ!バンザーイ!」
パチパチパチパチパチパチ
「当選おめでとうございます!」
「流石ですね!」
「得票率9割越えなんて感動すら覚えます!」
「いやいや、これも全て君たちのおかげだよ。ありがとう!」
S県O市市長選挙で、これまでに類を見ない程の投票率、そして得票率を獲得し私は市長に当選した。

君たちのおかげと言ったが、それは文字通りの意味であり、私の思惑通りでもあった。
ある言葉を無意識的に意識し、そのサブリミナル効果によって私に好感を持たせる事の出来る薬を、私は秘密裏に作成し水道水に混ぜていたのだ。私に投票しなかったのはその水道水が届かない地域と、井戸等から天然の水を摂取している人、テレビを見ていないか演説の範囲外の人の極小数。
今後は市のみならず県、或いは日本のトップに躍り出る事も夢ではない。いや、最早現実と言っても過言ではない。

夜、祝勝会が開かれ皆に酒が振る舞われた。
やはり勝利の美味いものだ。様々な料理に舌鼓を打ちつつ、今後の話を秘書と相談する。

秘書に注がれる酒を飲みながら考える。
如何に薬の力があっても、この有能な秘書無しではここまでの成果は得られなかったかもしれない。
「あなたのおかげですよ」
と言うに違いないが、それなりの礼はせねばなるまい。

秘書に長期休暇を伝えると

「ありがとうございます。予想通りの結果で本当に私も嬉しいです。今後ともよろしくお願いします」

今後とも手となり足となりやってもらわなければいけないのだから当然の事だ。自分よりも部下の休暇は優先されなければ……いや休暇を過ごすには今の給料では足りないかもしれない。家族もいるだろうし、ショッピングもしたいのは人として当たり前だ。

秘書には更に昇給も伝えて、労いの意味も込めて再度祝杯を上げた。

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