輪廻の風 (36)
「ダルマイン、このお方が我らがボス、ノヴァさんだ。」ランプを持った男が言った。
するとダルマインは目を丸くしてポカーンとした後、大笑いをした。
「ギャーハッハッハッ!このチビがボスだあ!?おめえらこんなガキの下についてんのか??冗談きついぜ!?」
ダルマインを囲んでいるマフィア達はピリピリし始めた。
「このガキ殺してオレ様がノヴァファミリーのボスになってやるぜオラァ!!」
ダルマインはそう叫びながらノヴァに向かって一直線に走り出し、殴りかかった。
すると、ノヴァはダルマインの顔面にハイキックを決めた。ダルマインは吹き飛ばされ、全身を強く壁に打ちつけられた。
「ナメんなブタ野郎。」ノヴァが言った。
「も、申し訳ございませんでしたぁ!とんだご無礼を…お許しください…!!」
ダルマインは土下座をしながら言った。
「おい、やっぱこいつ殺しちまおうぜ。」
「それがいい。ボスに殴りかかるなんて生かしておけねえぜ。」
マフィア達がざわつき始めた。
「ち、違うんです!オレ本当はこんなことしたくないんです!ただ、ロゼの命令で仕方なく…。」ダルマインは必死に言い訳をした。
「ロゼ?王子のことか?」ノヴァが言った。
「へい…オレ色々あってバレラルク軍に捕まったんです。本来なら即処刑されるはずだったんですが、ロゼの野郎にマフィアのボスの首を殺ってきたら許してやると言われて…。」
「あの王子がお前みたいなバカにそんな命令をするとは思えないがな。」ノヴァはダルマインを見下ろしながら言った。
「本当なんです。お願いします…オレを匿って下さい!何でも言うこと聞くんで、ノヴァファミリーに入れて下さい!!」
ダルマインがそう言うと、周りのマフィア達が怒りだした。
「ふざけたこと抜かしてんじゃねえぞコラ!」「ナメてんのかテメェ!」怒号が飛び交った。
「何でも言うこと聞くんだな?」ノヴァが言った。
「へい…!」
「じゃあ3将帥を暗殺してこい。それが出来たらお前を幹部にしてやるよ。」
ノヴァがそう言うと、部下のマフィア達はそんな事できっこないと口々に言った。
無理難題を押しつけられたダルマインはかなり動揺していたが、必死に平静を装った。
「出来るな?」ノヴァが鋭い眼光で言った。
「イエス、アイキャン。」
ゆっくり顔を上げてそう言ったダルマインは、澄んだ瞳をしていた。
すると、突然パッと部屋の電気がついた。
突然部屋が明るくなって、一同動揺していた。
「ダルマイン〜、裏切りは良くないぜ?」
声のする方に目を視線を向けると、入り口の扉からロゼとエンディが入ってきた。
「おいダルマイン、全部聞いてたぞ!」
エンディが怒った口調で言うと、ダルマインは一瞬ギクっとしたが、すぐに冷静さを取り戻して喋りだした。
「ふっ…エンディ、お前は何も分かっちゃいねえな?敵を欺くならまず味方からって言うだろ?ロゼ王子!あのチビがボスのノヴァです!このアジトもオレが突き止めました!」
「ご苦労だったなダルマイン、良い仕事するじゃねえかよ。」ロゼが言った。
ダルマインは小走りでロゼとエンディのもとへと向かった。
王子であるロゼの登場に、マフィア達はかなり焦っていた。
「まさかプラチナグリルの使われてねえ部屋をアジトにしていたとはな、恐れ入ったぜ。」ロゼが言った。
「これはこれはロゼ王子、こんなところに何の御用で?」ノヴァは余裕のある表情で言った。
「決まってんだろ?最近お前らが物騒な動きをしているからとっちめに来たんだよ。それにしてもナンバー3のジェシカに素性を明かさなかったお前が、こんな下っ端どもの前に姿を見せているなんて意外だったぜ?」
「あの女がスパイだってことは最初から気づいていた。泳がせといて逆に利用してやろうと思ってたんだけどな。」
「ははっ、イカついガキだぜ。」
ロゼは笑いながら言った。
手下のマフィア達が銃を取り出してエンディ達に向けた。
「やめろ。こんな所で銃ぶっ放して一般人に当たったらどうするんだ?」
ノヴァがそう言うと、手下達は慌てて銃をしまった。
ノヴァのこの発言に対し、エンディはとても意外そうな顔をしていた。
「なあ、お前らマフィアは何が目的で旧ドアル軍から武器を買ってたんだ?」エンディが言った。
「復讐だ。そして今、機は熟した。」
ノヴァはニヤリと笑いながらそう言うと、信じられない速度でエンディ達の前に詰め寄り、催涙スプレーを噴射した。
エンディとロゼ、ダルマインは目に猛烈な痛みが走り、身動きが取れなくなっていた。
ノヴァとその手下達は、その隙に逃げ出した。
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