読書ノート4
6月〜8月に読んだ本。暑いながらも日々読書笑
●口福のレシピ 原田ひ香
歴史ある料理専門学校を軸に、昭和と令和、二つの時代が交錯する。会話文が多くテンポ良いストーリーは、原田さんが脚本家出身と聞けば、なるほど!と。作中で出てくる様々なお料理に、読み終わったあと、「美味いもんいっぱい食ったー」みたいな気になるのが、我ながら可笑しい
●ベトナムの桜 平岩弓枝
江戸時代、瀬戸内海の島に住む高取大介、次介兄弟の数奇な運命を描いた物語。ご朱印船貿易、鎖国、兄弟の絆。とにかくこの時代に海外に行くのは大変!
●風神雷神(上・下)原田マハ
キュレーターでもあるマハさんの小説は、歴史&アートビギナーの私には、面白い上にタメになります(フィクションではありますが)。キリシタンである遣欧施設(けんおうしせつ)の少年たちとともに、あの俵屋宗達もヨーロッパに渡っていた…宗達が「オレは海賊王になる!」的なキャラで描かれていておもしろい
●クララとお日さま カズオイシグロ
いろいろと感じることがありすぎて、感想としてはまとめきれない…ので、読みながら書いたメモを羅列しておきます
・近未来の倫理観
・科学技術の発展がもたらす薔薇色とは言えないいびつな世界
・親の愛情はエゴと紙一重
・不穏な格差社会と垣間見える優生思想
・人間を作り変える
・映画ブレードランナーの「優しい世界版」
・AIゆえの純粋さがお日さま信仰につながる不思議
●書くことについて スティーブン・キング
人気ホラー作家による、生い立ちから、書くための具体的なアドバイスまで。幼少期には既に、彼の小説の下地が垣間見える。良い小説を書くための基本として「たくさん読み、たくさん書く」ことを信条にしているだけあって、たくさんの本のタイトルが挙げられている。キングが読むなら自分も読まなきゃ!と一生懸命メモっていたが、安心してください、巻末にリストがあります笑
●さよなら僕の夏 レイ・ブラッドベリ
ブラッドベリの小説の中に出てくる少年たちは、とかく老人に厳しい。枠からはみ出し、時にはとんでもない大冒険を経て、子供は大人になっていく。大人の都合で縛り付ける爺さんたちは、ただただ彼らの敵なのである。
この本を読んでいる時に見た「窓際のとっとちゃん」の黒柳徹子さんのインタビューで、温かく見守る当時の恩師に会わなければ、自分のような子供はこんなふうに大人になることはできなかった、と語っていた。
物分かりのいい子供ばかり求めていては、子供を歪めてしまうことも。大人が大人らしく見守ってやらねばならないが…私も愚かな爺さんのうちのひとりだな…と反省
●日本ぶらりぶらり 山下清
放浪の画家は、鹿児島を気に入っていたらしい。旅先での様々な出来事を、彼の日記や口述から、指導・支援者である式場隆三郎氏がまとめたもの。式場氏は日本にゴッホを紹介したことでも知られている。素朴な語り口が微笑ましいが、率直さゆえのどきり、とする発言も。
●ソラリス スタニスワフ・レム
読みこぼしていたSFの名著を、この際読んでみようシリーズ。不可解な惑星の不可解な海で起こる不可解な現象を追う物語。わかりやすい宇宙人は出てこない。映画化もされ古典的名著とされているが、読み通すのはなかなかの苦行だった…が、面白くないのか?と問われれば、それはまた別問題。とても面白かったのである!(その後NHKアーカイブの「100分で名著ソラリス編」まで観てしまった)
●生きることは、自分の物語を作ること 小川洋子、河合隼雄
作家と心理学者の対談。小川さんの「博士の愛した数式」をベースに人間の心理を紐解いていく。話の中で「ブラフマンの埋葬」についても触れられ、次回はぜひその作品で対談を、と結ばれていたが、河合氏の逝去により叶わぬこととなった
●博士の愛した数式 小川洋子
「生きることは…」の中で頻繁に取り上げられていたので。記憶が持たない数学博士と家政婦の話というのは、なんとなく知っていたが、ここまで野球に関連している小説とは思わなかった。博士の時代とルートくんの時代の中間期(1980年代後半)が、ちょうど私が最もプロ野球(とタイガース)を愛していた時期。それだけでなんだかうれしい。野球が出てくる小説には良作が多い(個人的な意見です)
●ツバキ文具店 小川糸
かなり前、多部未華子ちゃん主演のドラマがとても良かったので。文章が端正でとても美しい。舞台である鎌倉や、鳩子の生業である代書屋の雰囲気が魅力的に描かれる。紙の本(しかもハードカバーで)で読むべき1冊だなと思った。そういえば、ドラマを観た後、電子書籍を探したのだが、本屋大賞上位の作品にも関わらず電子化されていない。中に出てくる手紙が電子書籍化に向かないのかもしれないけど、作者もきっと「紙の本で読んでほしい」と思っているんだろうな、と思うことにしている。
●キラキラ共和国 小川糸
ツバキ文具店の続編。鳩子は結婚し、家族というものにいろいろな思いを馳せることになる。思いのほか、泣いた。自分自身、この本を読むちょうどいい年齢だったのかもしれない
●カラフル 森絵都
ビリージョエルの「オンリーヒューマン」という曲のPVを思い出した。黒いコートに、ハーモニカを吹きながら、ちょっと脳天気に現れるビリーが、さしずめこのお話の中の天使「ぷらぷら」というところか。ビリーはこの曲の収益を全米少年自殺防止委員会に寄付したそうである。
●悪党 薬丸岳
テレビで犯罪や戦争のニュースを見るたびに「被害者」と「加害者」について考えることがある。罪を償うこと、適切な量刑、死刑制度の是非、被害者が加害者を本当の意味で赦すことができるのかどうか、加害者はその後どう生きていけば納得できるのか…今のところ明確な答えを私は持てない。女子高校生コンクリート殺人事件に大きな衝撃を受け、その問題を突き詰めることで作家となった著者が描く「被害者」と「加害者」の間に横たわる闇。
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