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読書ノート3

なんだか読書スイッチが入ったみたい。本を読むのが楽しくなってます。

●ロイヤルファミリー 早見和真
競馬、というのは私にとって全く未知の世界。馬主、生産者、調教師、騎手…競馬を取り巻く様々な人物の人間模様を、2世代に渡って追う骨太な物語。日頃自分が全く関心のない世界でも、とことんのめり込んでいる人達がいる、ということが知れて、面白かった

●サラバ 西加奈子
西さんの本は初めて読んだ。前半はクセつよなお姉さんを中心に話が進むが、後半は冷めた目でそれを見ていた弟にシフトしていく。作中にしばしばジョン・アーヴィングという小説家が出てくる。通常ではちょっとありえない出来事の中に翻弄される家族が、最後にそれぞれの場所に着地していく様子は、読み終わってみると確かにジョン・アーヴィング味を感じる。インタビューによるとお姉さんではなく、少年たちの国境を越えた友情の方が主題だったというのは、ちょっと意外だった。面白かった。

●真夜中の子供 辻仁成
先日、辻さんが主催するオンライン文章講座に参加したので、久々に辻さんの本を手に取ってみた。

過去には、エコーズのライブに度々参戦し、すばる文学賞をとった「ピアニシモ」を読んだ時には、「この人の文章は読ませるなぁ…」とつくづく感心したものです(肌に合うんでしょうな)。
真夜中の子供とは、親の都合で戸籍を持たない中洲生まれの少年のこと。この小説を読んでいると、彼をあたたかく、厳しく見守り続ける中洲の町は、同じ日本でありながら、独自の文化を持つワンダーランドなんだな、と感じる。だからこそこのファンタジーのような作品が成立するんだなーと思ったところです。

●歴史をかえた誤訳 鳥飼玖美子
鳥飼さんと言えば、Eテレのつぶやき英語で初めて見て、知的で素敵な方だなぁと興味を持ったのだが、通訳界の戸田奈津子ともいうべき大御所で、あのアポロ月面着陸の同時通訳を担った才女(ひれ伏すしかない)である。

現在ではAIなどによる翻訳アプリの発達で、通訳や翻訳の仕事が危ぶまれるような気もするけれど、通訳とは機械的にただ単語をおきかえればよい、というものではない。
特に外交や、ビジネスなど緊迫した場面では、人はただ言葉を話すだけでなく、その言葉の裏に様々な思惑を忍び込ませる。
「黙殺」という言葉を、もっと違った英語に訳していたら、原子爆弾は投下されなかったかも…という歴史上の問いは、通訳という仕事の難しさを感じさせる。

通訳の方のエッセイでは、ロシア語の故米原万里さんの本も面白い。政情不安の東ヨーロッパで、とある日本の政治家が発した失言を、意図的に誤訳し、外交上の大問題になるところを切り抜けた、というエピソードは、AIでは到底できない芸当で、通訳とはただ言葉だけでなく両国の文化や政治、あらゆることの理解力を持たなければならない仕事だというのがよくわかる。

ヒロユキ氏との対談動画を見つけた。この明快な解説、1時間を超える動画だけどあっという間。


●全てがFになる 森博嗣

読み終わった感想は、全てが「ふーむ(F)である」。ゆる言語学ラジオの堀元さん推し。孤島に置かれた最新の研究所において、ある天才女性科学者が異様な状況で殺される。早熟の天才の彼女には、昔、同じく優れた研究者であった両親を殺害したという過去があった…
隔離された孤島で起こる奇怪な連続殺人というと、アガサクリスティの「そして誰もいなくなった」が思い浮かびます。
終盤、鮮やかに消えてしまったあの人は、消えてしまったままなのか、はたまた今後のシリーズで再び登場するのか、次作を読んでいきたいです!

●その本は 又吉直樹 ヨシタケシンスケ
何ヶ月か前に、又吉さんとヨシタケさんが、この本をかわるがわる朗読する、という番組がありまして、楽しく聴きました。その際に、時間の都合で朗読できなかったところもあるとのことだったので、読んでみました。その朗読されなかった話、僕と竹本春の物語、とても良かったです。又吉さんの真骨頂という感じ。ヨシタケシンスケさんのイラストもかわいい。つぶやきのような短い作品がほとんどなので、せいぜい1時間くらいで読める分量だけど、何回も読み返したくなる1冊です。

夢をつなぐ 宇宙飛行士山崎直子の四〇八八日
最近、テレビかなんかで「月はロケットに乗って3日で行ける」と聞き、「えー?そんな近いの?」と驚いてから、月や宇宙への興味が再燃。たまたま聞いていた向井(慧)くんのラジオ「ふらっと」のゲストが山崎さんで、そのトークが大変面白く、これは早速読んでみねば!と購読。
最近のテレビは宇宙についての報道がマンネリというか、無重力で行うパフォーマンスに新鮮味を感じない人も多いかもしれないが、この本を読んでからこの動画を見るととてもエモい。

そのほかにも、宇宙船の信頼度ではたびたび事故を起こしたスペースシャトルよりも、ロシアのソユーズの方がはるかに安全性が高い、など色々なことが知れて面白かった。
また宇宙飛行士の人間ドラマ(ご自分の夫婦関係も含め)の部分も興味深かった。ただでさえ働く女性と家庭の両立は悩ましいところなのに、特殊とも言える宇宙飛行士という仕事はなおさら。さらっと書かれてはいるが、凡人の私などには思いも及ばない試練を乗り越えられたんだろうなぁと思うと、いやいやわたしなんかまだまだよ、と勇気づけられる。

宇宙へ行くことは地球を知ること 野口聡一・矢野顕子

山崎さんの本を読んだ後、他の宇宙飛行士の人の本も読みたくなって発見。感想を書いていたら長くなってしまったので、別立てにしました。


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