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車椅子タクシーと The Power Of Love

 今日は 気温がグングン上がって、昼間はとても暖かく、
いよいよ春本番のような気候です。

二人のこざる達は、
近所のスーパーへ買い物に行って 帰り道です。
あちこちの木々の芽や葉っぱが、
日に日に大きくなってきている様子を
嬉しそうに眺めながら こざるカフェに向かいます。

「こざるちゃーん」
すぐ近くで、呼ぶ声がします。

 こざるちゃんがキョロキョロしていると、
「こざるちゃーん、ここだよ!」
「あ! お弁当屋さん!!」

 ちょうど信号待ちをしている車の中から、
ニコニコと手を振っている 男性がいます。
お弁当屋さんのお兄さんです。
こざる達は 近くまで行きます。

「あれ、もしかして退院ですか?」
「うん、今、退院して、家に戻るところなんだよ。」
「わぁ、よかったー。」
「無事に退院、おめでとうございます。」

お兄さんは、乗っているタクシーの運転手さんに、
ちょっとだけ話がしたいのでと言って、
車を止められるところに移動してもらいます。
こざる達も 着いて行きます。

 お兄さんのお弁当のお店は、
以前、りこちゃんが入院していた病院のすぐ近くにあります。
こざる達は、そこで とっても美味しいお弁当をよく買っていて、
それで お兄さんと顔なじみになったのです。

 りこちゃんが退院してからも、
美味しいお弁当が食べたいねーと、何度か買いに行っていたのですが、
今年に入ってから、お兄さんが転んで足を骨折してしまって、
入院していたのでした。

「お兄さん、もう足は大丈夫なんですか?」
「うん、まだしばらくは、松葉杖と 車椅子なんだけど、
だいぶよくなったよ。」

 お兄さんは、車椅子に座っていました。
こざる達は、少し心配そうに お兄さんを見ます。
すると「しばらくは ちょっと不便だけど、ちゃんと治るから大丈夫よ。」
一緒にいた奥さんが、こざる達に笑顔で答えます。

「よかったー。」
「お店も、のんびりとまた再開するよ。」
「また行きますね。」
「ゆっくりゆっくり、無理しないでくださいね。」
「ありがとう。りこちゃんにも 皆にも、よろしくねー。」

こざる達は、車椅子タクシーが見えなくなるまで
ニコニコと手を振ります。

「よかったねー。」
「うん。お兄さん、いつも元気で運動神経抜群だったから、
骨折して入院って聞いてビックリしたよね。」
「誰だって、いつ怪我したり、病気になったりするかわからないよね。」

こざる達は、今日のテレビで見た
車椅子タクシーの乗車拒否というニュースを思い出していました。
車椅子で乗ろうとしたら、乗車を拒否されることがあるというので、
政府が タクシー運転手の研修を義務化するという内容です。

「いくら素晴らしい車椅子タクシーがあっても、
乗れないんじゃ意味ないよ。」
「うん。モノじゃなくて、人が大事ってことだね。」
「そうだよね、結局、動かすのは人なんだもんね。」

 ただ運転手の研修を義務化するのではなく、
乗車拒否するからには、それなりの理由があるはずで、
それが何故なのか きちんと理由を調べて、検証して
スムーズに乗車できるように、丁寧に対策を考え、
改善することが大切なのだと思います。

「でもね、最後は やっぱり人の優しさだよ。」

そう話しているうちに、こざるカフェに着きました。
「ただいまー。」
「おかえりー。」
「お弁当屋さんのお兄さん、退院したよー。」
「わぁ、よかったー。また買いに行こうね。」

「りこちゃんにも言ってくるねー。」
こざるちゃんは、スキップしながら
りこちゃんの部屋へ向かいます。

こざるカフェは、今日も ゆっくりゆっくり、
のんびり 穏やかに時間が流れていきます。

読んで下さって、どうもありがとうございます。
近くの白木蓮が満開になりました。
よい毎日でありますように (^_^)

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