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菜の花とクリームパン

「空が見えるのよー。」
電話口の向こうで、友人はとっても嬉しそうに そう言いました。

「その空がまた とっても大きくて、ずーっとずーっとずーっと向こうまで広がっているのよ!」
声が弾んでいるとは、こういうことを言うのだなと、聞いている私も嬉しくなりました。

この春、夫氏の急な転勤の辞令で、地方へバタバタと引っ越して行ったのですが、
物凄く便利であろう都心のマンションから、全く違う環境へと引っ越した後の第一声。

「今までの住まいは、便利といえば 物凄く便利だったと思うけれど、でも空が見えなかったのよ。」

地方に越して、初めて空が見えなかったことに気がついたようです。

「便利だったけれど、でも 今になって思えば ちょっと座敷牢みたいな感じだったなー。人として生活する場所ではなかったと思う。」

言わんとする事は とてもよくわかります。

「コンクリートの中に鍵付きでしっかり閉じ込められた生活、窓から見えるのは コンクリートだったからね。」

いつの頃からか、都心には 以前はマンションなど建たなかった場所にも いくつもマンションが建っています。
小さな子供がいる彼女と夫氏は、この環境でいいのだろうか?と思いながらも、何しろ大人には便利なので そのまま毎日が進んでいったのですが、急に地方へ引っ越すこととなったわけです。

「まだまだ引っ越しの荷物が、全く片付いていないんだけど、でもそんなこと気にしなくていいくらい家も広いし、家の中を風が吹き抜けていって、とっても気持ちよくて、さっきも 寝っ転がっていたら昼寝しちゃって。」

子供と一緒に気持ちよく昼寝したそうで、もうすっかり満喫している様子。
都会は便利だからと思う大人にだって、あの環境の生活は何かを吸い取られていたのかも?

「近くに菜の花がたくさん咲いているところもあるんだよ!」

まだコロナ禍になる前に、彼女と まだ赤ちゃんだった彼女の子供と一緒に、都内の菜の花がたくさん咲いている公園へ行ったことがありました。
たくさんの黄色い菜の花が風に優しく揺れていて、赤ちゃんは その景色をじーっと見ていたのですが、
しばらくして、ニコニコ笑い出して、菜の花が何か話しかけたのかも?などと話しました。

その時に、おやつにクリームパンを買って行ったのですが、その普通のクリームパンが とっても美味しくて、
菜の花もクリームも同じ黄色だねと話したのを覚えています。

「あの時のクリームパン、美味しかったなぁ。」
「ねー、本当に昔懐かしい普通のパン屋さんだったよね。」
「まだあるかなぁ。」

実は、当時、クリームパンが流行っていて(常に流行っているのかもしれませんが)、
有名なところで買おうと計画していたのですが、お店に着いたら長蛇の列で、待つのは時間が勿体ないと、
別にここじゃなくてもいいよねと、その後、歩いていて発見した普通の小さなパン屋さんで買ったのでした。

「あの景色の中で食べたから、余計に美味しく感じたのかもしれないけれど、変にこだわる必要はないんだって よーく分かったよね。」

クリームパンもそうだし、住む場所、生活環境も、こだわるポイントを間違えないようにしないと。
生活環境は、毎日の問題ですから。
知らず知らずにストレスが溜まっていくに違いありません。

「菜の花は見つけたから、次はパン屋さんを見つけなきゃ。有名なチェーン店じゃない、昔ながらの素朴な町のパン屋さん。」

菜の花もクリームパンも、ごくごく普通のものですから、見つけるハードルは低いはずです。
けれども、実は そう簡単なことではないのかもしれません。
"普通"って難しい。
人の暮らし は普通でいいのに。普通がいいのに。


こざるカフェは、今日も ゆっくりゆっくり
のんびり 穏やかに時間が流れていきます。

読んで下さって、どうもありがとうございます。
写真のクリームパンは、ファミリーマートの ファミマ・ザ・クリームパンです。ブリオッシュのようなしっとりした生地で、パサパサしていなくてとても美味しかったです。

よい毎日でありますように(^_^)

4月18日に こちらの嬉しい知らせが届きました。
読んで下さった皆さま、スキをつけて下さった皆さま、どうもありがとうございます。

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