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小寒の日の木蓮

 小寒の今日は、ポカポカしていた昨日とは違って、
気温も だいぶ下がっています。

 こざるちゃんは、水色の毛糸のマフラーを巻いて、
お揃いの毛糸の帽子をかぶります。
近所の八百屋さんへ 明日の七草粥用の七草を買いに行くのです。

 「りこちゃん、八百屋さんに七草を買いに行ってくるね。」
「気をつけるんだよ。
あわてて走って ころばないように、ゆっくりでいいんだよ。」
「うん。だいじょうぶ。」

 りこちゃんは、もうとっくに、自分の方が気をつけないとならないのに、
いつも こざる達のことを心配します。

 八百屋さんに行くと、きれいな七草のセットがたくさん並んでいて、
こざるちゃんは、一つ買います。
「これで、よし。」

 今日の午後は曇っていて、早い時間から だいぶ薄暗く感じます。

「帰ったら、りこちゃんに七草を見せよう。」
こざるちゃんは、歩きながらつぶやきます。

 春に向かっているとはいえ、まだこれから寒い時期が続きます。
並木道の木々も、じっと寒さに耐えているようです。

「わぁ、たくさん、たくさん!」
こざるちゃんは、お気に入りの木蓮の枝に
銀色の芽がたくさんあることに気がついて、思わず声を出します。

 りこちゃんと こざる達が、何度も何度も通った並木道です。
この木蓮は、春先になると 桜よりも早く、真っ白のきれいな花が咲きます。

 今は おばあさんになっている りこちゃんの友人たちも皆、
こざるカフェに遊びに来る時は、この道を通ってきたのです。
帰りに 皆で駅まで送って行って、一緒に写真を撮ったこともあります。

「大切な人たちを ちゃんと大切にしないとね。」
こざるちゃんは、木蓮に向かって言います。

「ただいまー。」
「おかえりー。」

 こざるカフェに入ると、ラジオからは、歌声が聴こえています。
サイモン&ガーファンクルの『Bridge over Troubled Water』です。
こざるちゃんは、目を閉じて、静かに聴きます。

 始まったばかりの新しい年も、
みんなが毎日、優しい気持ちで過ごせますように。

読んで下さって、どうもありがとうございます。
明日は七草。正月の暴飲暴食の後、お粥は胃にやさしく温まります。
よい毎日でありますように (^_^)

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