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あの時の記憶

今朝も蝉の大合唱で始まりました。
「今日も暑いねー。」
「蝉たちは元気だなぁ。」

こざる達は 今日も、いつものように わいわいお喋りしながら、
朝ごはんの仕度をしています。

「昨夜も暑かったけど、りこちゃん、よく寝ていたね。」
「うん、熱中症も今のところ大丈夫だし、よかったよ。」
「でも油断しないで気をつけないとね。」
皆、うんうん頷きます。

特に高齢者は、脱水症状になると
生命の危険に陥ります。

「ぼく、昨夜、ちょっと思い出したことがあったんだ。」
こざるちゃんが言います。

「昨夜の番組で、子供の頃、空襲を体験した母親が、
戦後、毎年とても楽しんでいた花火大会を
ある年は、花火を見ないで悲しそうにうつむいていたっていう話があったよね。」
皆、うんうん頷きます。

昨夜、こざる達は、りこちゃんが寝た後で、
NHKの『あちこちの すずさん』という
戦争当時のエピソードを集めた番組を見ました。

「そういえば、りこちゃんもそういうことがあったなぁって思い出したんだ。」
「もしかして、ディズニーランドの?」
「カリブの海賊に乗った時のこと?」

こざる達は、皆、同じことを思い出していました。

りこちゃんも、こざる達も、ディズニーランドが大好きで、
何度か遊びに行っていました。
楽しいことが大好きな りこちゃんは、行く度に
カリブの海賊にも乗って、普通に楽しんでいました。
「カリブの海賊は、そんなに待たずに乗れるし、
最初にバッシャーンってちょっと落ちるけれど、
あとはそういうところはないから、りこちゃんも大丈夫なんだよ。」

こざる達が思い出した時も、
普通にいつも通り 皆でわいわい カリブの海賊に乗りました。

「船が進んでいって、後半、砲撃の音が鳴り響いたり、
火事になって逃げ惑っている人々がいたりするところになって」
「りこちゃんを見たら、目をしっかりつぶって、小さく震えていたんだよ。」
「ぼく達、びっくりして『りこちゃん、大丈夫? 具合悪い?』って聞いて。」
「りこちゃんは、うんうん頷いていて」
「『もうすぐゴールだから、大丈夫だからね。』って言って、
着いたらすぐに皆、降りて、それで外に出て」
「暗いカリブの海賊から、明るい外に出たら、りこちゃん、ほっとしたみたいで、
また いつもの笑顔の りこちゃんに戻ったんだ。」

以前にも、何度も乗ったことがあったのですが、
今までは こんなことはなかったのです。
けれども、この時は、とても怖がっていました。

「ぼく達、りこちゃんが子供の頃の空襲を思い出したんだって思ったんだ。」

ずっと忘れていても、年をとると、ある時 突然、
子供の頃の記憶が甦ってくることがあります。

それに、よく考えれば(よく考えなくても)、
空襲を経験していなくても、とても恐ろしい場面だと、
りこちゃんを見て、こざる達は気がついたのでした。

「でも、その後は、全くそんな様子もなくて、
りこちゃんも いつも通り大笑いして、とっても楽しく過ごしたんだよね。」
「そうそう、カリブの海賊から出て来てすぐに、
『あのアイスクリーム、食べよう!』って言っちゃって。」

皆で、アイスクリームを食べました。
りこちゃんは とても嬉しそうに ニコニコしていました。

朝ごはんの仕度が出来たようです。

「りこちゃん、呼んでくるねー。」
こざるちゃんが、りこちゃんの部屋へ向かいます。

「りこちゃーん、朝ごはんできたよ。
今朝は、ゴーヤチャンプルー作ったよ! 桃もあるよ! 皆で一緒にたべよう!」

こざるカフェは、今日も ゆっくり始まって
のんびり 穏やかに時間が流れていきます。

読んで下さって、どうもありがとうございます。
皆が毎日、笑って過ごせる世の中でありますよう、この先もずっと。
よい毎日でありますように (^_^)


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