藤の香りに包まれた 春の国へ

昨日の朝は、どんよりと曇っていましたが、今朝は よく晴れています。
朝日が上って、青い空を見ると、こざる達は自然と笑顔になります。

「新しい朝が来た　希望の朝だ」
こざる達は嬉しくなって、よくこのラジオ体操の歌を歌います。
「喜びに胸を開け 大空あおげ」

そして時には、ラジオ体操をやったりもします。
「朝、体を伸ばすと気持ちいいよ。」
元気も出ます。

そして りこちゃんを起こしに行ったり、
朝ごはんの仕度をしたりします。

それから いつも通り りこちゃんと こざる達は、
皆で一緒に朝ごはんです。

「りこちゃん、いちごジャム、食べる?」
「うん。」

こざるちゃんは、バターロールを半分にして、
白いフワフワのところに いちごジャムをのせます。

「はい、どうぞ。」
「ありがとう、こざるちゃん。」

りこちゃんは、嬉しそうにパクパク食べます。
こざるちゃんは りこちゃんの隣で見ています。
「美味しい!」
こざる達も 嬉しそうに見ています。

テレビでは、もうすぐやってくる10連休に合わせて、
あちこちの観光地の特集をやっています。

「あ! あしかがフラワーパークだ!」

栃木県にある あしかがフラワーパークは、
藤の花で とても有名です。
黄色や白の藤の花もあって、
どこまでも続く大藤の棚は、いい香りに包まれています。

「たくさん藤の花が咲いていて、春の国に来たみたいだったよね。」
「うん、いい香りで 別世界みたいだったよ。」

りこちゃんと こざる達は、10年ほど前でしょうか、
バスツアーで行ったことがあります。

「あと、ツツジの花もたくさん咲いているんだよ。」
ツツジも何種類かあって、とても綺麗です。

「わぁ、りこちゃん、綺麗だねー。」
「うん、とっても綺麗ね。」
皆で、テレビを見て、行った時のことを思い出しています。

バスツアーには、１人で参加している人が何人かいました。
その中に、20代の女性がいて、
たまたま りこちゃんと こざる達の隣の席に座りました。

「藤子ちゃん、元気かなぁ。」

その一人参加の藤子ちゃん、家に小さいけれど藤棚があって、
生まれた時に藤の花が咲いていたそうです。

「お母さんが、藤の花が大好きで、
それで藤子ってつけてくれたんだよね。」

藤子ちゃんと お母さんは、毎年、一緒に、
あしかがフラワーパークに出かけていました。
が、その時、お母さんは病気で入院していました。
藤子ちゃんは、今年は行くのを止めようと思ったら、
お母さんが、自分の分も見て来てと送り出してくれたそうです。

「ぼく達、藤子ちゃんと一緒に回って、一緒にお昼も食べて、
とっても楽しかったねー。」
「うん、藤子ちゃんも、嬉しそうだったよね。」

でも、やはり お母さんのことを思い出します。
時々、寂しそうな顔をしていました。
帰って お母さんに見せるのでしょう、
たくさん たくさん写真を撮っていました。

「その後、夏になる頃だったか、藤子ちゃんから手紙が来たんだよね。」
「お母さん、退院して、元気になりましたって!」
「本当に良かったよね。」

藤子ちゃんと お母さんは、その翌年は、また一緒に
あしかがフラワーパークに出かけたそうです。

「今年も、一緒に行くんだよね。」
「うん、きっとそうだよ。」

皆、朝食を食べ終わったようです。

「もうすぐ、朝ドラが始まるよー。」
「食後のコーヒー、淹れてくるね。」
こざるちゃんが立ち上がります。
「よろしくねー。」

こざるちゃんは台所へ行って、ラジオをつけて、
コーヒーの準備をします。

ラジオからは、明るく華やかな歌声が聴こえてきます。
「約束を守れたなら　願いを叶えてあげる
春の国 飛び立てる羽 つけてあげるよ」

松田聖子、『天使のウインク』です。

こざるちゃんも、楽しそうに 一緒に歌います。
「天使がウインク　勇気を出して
笑ってごらん　それが君との約束だから」

こざるカフェは、今日も ゆっくり始まって
のんびり 穏やかに時間が流れていきます。

読んで下さって、どうもありがとうございます。
桜のあとも、次々、いろんな花が咲きますね。
よい毎日でありますように (^_^)