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小さな一歩を着実に積み重ねるということ(『老子』六十四章)

今回取り上げるのは『老子』六十四章からの言葉。

九層の台も累土より起こり、千里の行も足下より始まる
(読み:キュウソウのダイもルイドよりオこり、センリのコウもソッカよりハジまる)

『老子』六十四章

九層の高台も一杯の土を積み重ねることで起こり、千里の遠い道も足元の一歩から始まる、という意味。

一見すると「継続は力なり」ということを言っているだけのように見えますが、ここではそれ以上に「慎重に着実に前に進み続けること」の大切さを語っています。

つまり、優れた人物は何かを成し遂げるために大きなことや突拍子もないことをやるのではなく、目の前の小さな一歩を着実に積み重ねることで目標を達成しているのだ、ということですね。


私たちは大人になればなるほど、時間の大切さを痛感します。

何かをこなそうとしても、何かに挑戦しようとしても、常に時間との戦いです。

「家に帰って〇〇をやりたい」
「休日は〇〇に行きたい」
「仕事が落ち着いたら〇〇を始めたい」

頭の中ではそんなふうに色々考えているのに、気づけば何もせずに何週間も経ってしまいます。

やりたいことは増えるのに、仕事や家事・育児に忙しくて、やるための時間が見つからないのです。。。

それでも何とかしたいと願い、少ない時間で大きな成果を上げる方法を模索するかもしれません。

最近は時短やタイパ(タイムパフォーマンス)も流行っているので尚更ですね。

しかし、ショートカットをして何かを身につけようとしても、なかなか基礎は身につかないものです。

老子も次のように指摘します。

為す者はこれを敗り、執る者はこれを失う
(読み:ナすモノはこれをヤブり、トるモノはこれをウシナう)

『老子』六十四章

何か特別なことをしようとする者は失敗し、何かを無理やり捕まえておこうとする者はそれを失う、という意味。

無理に何かを身につけたとしても基礎を疎かにしたせことで大きな失敗をするかもしれませんし、無茶をしたせいで大事なものを失ってしまうかもしれません。

何事にも効率の良い学び方は存在しますが、それは意識的に必要最低限の内容に絞って学習しているからであり、一足跳びに何かを極めることは難しいものです。

故に老子は言います。

是を以て聖人は為すこと無し、故に敗るることも無し。執ること無し、故に失うことも無し。
(読み:ココをモッてセイジンはナすことナし、ユエにヤブるることもナし。トることナし、ユエにウシナうこともナし。)

『老子』六十四章

このため聖人は、特別なことをしないからこそ大きな失敗をすることもないし、無理に捕まえておこうとしないからこそ失うこともないのだ、という意味です。

優れた人物は小手先のテクニックで先に進もうとしたり、要点だけをかいつまんで理解した気にならない、ということですね。

時間が意識される現代だからこそ、基礎的な部分に時間をかけて人生の土台を作る意味があると思います。

新しい技術やツールも続々と登場していますが、それらを扱うのはあくまで我々人間です。

物の価値は使う人によって決まるからこそ、いつの時代も役に立つ基礎的な教養が大事なのではないでしょうか?

九層の台も累土より起こり、千里の行も足下より始まる
(読み:キュウソウのダイもルイドよりオこり、センリのコウもソッカよりハジまる)

『老子』六十四章

九層の高台も一杯の土を積み重ねることで起こり、千里の遠い道も足元の一歩から始まる、という言葉。

基礎的なところを大事にして着実に一歩ずつ進みなさい、という老子からのアドバイスです。

私も日々なかなか時間が取れなくて焦ってしまうことも多いのですが、そんな時にはこの言葉を思い出して、目の前の一つ一つに集中するようにしています。

小さな一歩だけでは成長を感じられないと思いますが、それが積み重なってくると大きな成果につながるものです。

習慣の力は大きいので、私も一つ一つの記事を積み重ねていき、一人でも多くの方に中国古典の良さをお伝えできればと思います。


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