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小鳥書房
2021年4月27日 19:28
思えばずっと旅をしていたようなものだった。日常という過酷な旅。幼稚園を泣きながら登園拒否したことを皮切りに、とにかく学校が嫌いで、中学高校では女子校の制服のスカートをたくし上げて塀を乗り越え脱走し、大学では授業に行かずアルバイトと写真を撮ることに明け暮れた。家庭も穏やかではなかった私は、「生きるって狭いなぁ」と葛藤していた。でも、学校と家以外にも世界は続いていて、人の暮らしの営みがある。そのことを
2021年4月21日 18:30
「本屋なんていう儲からない商売、大変でしょう、続けるのは」小鳥書房の本屋を開店してからしばらくの間、私はこの言葉に滝行のごとく打たれ続けることになる。滝行と違って心身が浄められるどころか、不安が掻き立てられるだけなのだけど。“本屋=儲からない”の方程式を追究して答えあわせしようとするより、1日でも長くこの店が続くように1冊でも本を買ってくれたらいいのに…。そう思いながら、「たしかにそうですね。
2021年4月20日 00:05
第1回小鳥書房文学賞の受賞作品を発表してから、今日でちょうど1か月が経った。こうしてweb上で発表をしたのだけど、じつは後日談がある。作品を応募くださった方々が、発表の直後から、思いがけず続々と小鳥書房の本屋を訪れてくれたのだ。小鳥書房の本屋ができた2年前から、お客さんとして通ってくださっているREIさんは、「はじめて小説を書いたよ。楽しかった」と、私に伝えに訪れてくれた。REIさんの作品
2021年3月20日 14:03
第1回小鳥書房文学賞の受賞作品(全12作品)が決定いたしましたので、お知らせいたします。審査員3名によるコメントもあわせてご覧ください。募集期間:2020年5月〜11月 応募作品:全167作品●受賞作品● 大石早州王『とりとめのない話』 小石創樹『ヒトリノハオト』鞠子まりこ『鳴いて、そして香れば』 そーちゃん(福岡少年院)『元不良ヒヨコが大空へ』 多田長次郎『茶鳥のチャドリー、ヒ
2021年3月1日 22:06
つい先日、かつて勤めていた出版社の先輩から、「落合さんは本をつくる人じゃなくて、場をつくる人だよね」と言われた。絶妙に真意を探りかねて「編集者として未熟ってこと…?」と落ち込んだけれど、そのひとことで「“場を編集する”って、どういうことだろう」と考えはじめ、最近ようやく答えが見つかりつつある。場を編集するということは、人と人の関係をつくりなおすことだと思う。「出会いなおす」きっかけをつくること
2021年2月15日 22:52
小鳥書房は、ひとり出版社であり、ひとり本屋。のはずだった。なのに気づけばひとりではなくなっていた。これは自然なことなのか奇跡だったのか、いまもわからずにいる。客からスタッフへ。カウンターを越える本屋が開店して数日後、印象的なお客さんが店に来てくれた。笑顔が眩しく明るい女性で、「ここが開店するのを、商店街の買いものついでに毎日覗いて心待ちにしていたんです」と声をかけてくれた。うちのお客さんたちは
2021年2月12日 23:30
前回まではこちら↓これまで綴ったように、本と本屋と旅は私の人生に欠かせない。それらがつないでくれたいくつもの縁に気づかされたのは、「誰と生きたいのか」という問いだった。国立市谷保のダイヤ街商店街に本屋を構えたのは、私なりのその答えなのだろう。「本を売る」という特別な仕事大学卒業後の2010年、私は童話作家を目指して地元の名古屋から上京した。最初に住んだアパートは、西武新宿線の花小金井駅から
2021年2月9日 18:49
前回まではこちら↓ 広島の「ばっちゃん」と少年たち2週間を過ごし、圧倒的存在感の独立書店さんに脳内をもみくちゃにされ、すっかり「ホーム感」の出てきた高松を発つ。愛媛県の松山、大洲、徳島県の神山町などを経由し、次なる目的地は広島県。非行にはしる少年たち400人以上に、40余年にわたってごはんをつくり続けてきた、広島のマザーテレサこと中本忠子さん(当時83歳)に会うためである。少年たちは中本さんを
2021年2月8日 23:55
先月、1月26日。小鳥書房の本屋は2周年を迎えることができた。「50年は続く店にしたい!」と口ぐせのように言っているので、実現させるにはあと48年…。途方もなく長い道程に感じるけれど、今日1日を積み重ねればかならず届くことを知っている。そして、48年後もこのまちにこの店が存在するであろうことを、笑うことなく信じてくれている人たちがいることも知っている。これまで私(店主=落合加依子)は、小鳥