桃の実に祈る 伊邪那岐・伊邪那美さま26神様も失敗して成長した ことの葉綴り。其の七九
黄泉比良坂(よもつひらさか)
こんにちは。週初め月曜は朝から一仕事を終えた後、神話の物語に向かいます。超サボり屋がテレワークのおかげで続いています。ありがたいこと。
神さまも、人間と同じように“失敗”をして、悩み傷つき涙した。今を生きる私たちへのメッセージのように思います。
伊邪那岐命(いざなぎのみこと)さまは、愛するあまり
亡くなった妻の伊邪那美命(いざなみのみこと)さまを、
現世に呼び戻そうと、死者の暮らす黄泉の国へ向きました。
けれど妻は、すでに死の国食べ物を食べてしまっていました。
そして黄泉の国に入り込み、変わり果てた妻の亡骸を見つけます。
死者の国から逃げ出そうとする伊邪那岐命さまに向けて
伊邪那美命さまは、黄泉醜女(よもつしこめ)をはじめ、
死者の国の軍勢、千五百黄泉軍で追いかけてきます。
必死で逃げる伊邪那岐命さま。
ようやく、あの世とこの世の境が見えてきました!!
「黄泉比良坂」(よもつひらさか)
死者の住む黄泉の国と
生きるものが住む現実の世界
葦原中つ国、その境にある坂。
その坂の入口に、ようやく辿りついたのです。
桃の浄化力
伊邪那岐命さまは、この坂道の上り口で
ある樹を発見されます。
さて、それは何でしょうか?
答えは、桃の木です。
伊邪那岐命さまは、この木になった桃の実を三つ
急ぎもぎ取られました。。
そして、後ろを振り向いて、
追っ手の千五百黄泉軍の軍勢が近くにくるのを待ち受けるや
手にした桃の実を
思い切り、投げつけたのです。
すると、どうでしょう?
桃の実が投げつけられた途端、
穢れに満ちた魔物の軍勢が、ことごとく
逃げ出していくではありませんか。
古来から、桃の実は、邪気を祓う神聖な薬用の実で
人間にとりついた病や悪霊を退散させて
苦しみも取り除いてくれると信じられていました。
あの果実の熟した柔らかな
甘味
香り
どれも、優しいですよね。
と、何か思い出しませんか?
子どものころに読んだ童話、お伽話です。
この実が名前にもなっている。
そうです
「桃太郎」は、この記紀神話の伝承から生まれたといわれています。
桃には、悪霊邪気を祓う神聖な力がありました。
ここまで逃げてくる間にも
葡萄の実
竹の子
桃の実
そして十拳の剣
どれも、死の世界の穢れを祓い
伊邪那岐命さまの、「我が妻を連れ戻したい」という
禁忌を破るまでに至った自我の想い、欲望をも
祓って浄化してくれていたのでしょう。
伊邪那岐命さまは、
ご自身の行動を振り返られたのではないかと思うのです。
青人草のために祈る
退散していく、魔物の軍勢をみつめながら
あ~助かった!!
と、安堵されました。
そして、桃の木を見上げ、幹に触れられると、
こう感謝の言葉を述べられたのです。
ああ、桃の木よ。お前が、この私の困難を助けてくれたように、
これから、私の大切な葦原中つ国に暮らす、
現しき青人草(うつくしきあをひとぐさ)
この世に生きる人々みなが、
今回の私のように困難に出会い
辛い目にあい悩み苦しんでいるときには、
私を助けたように、
みなを助けてやっておくれ
そう、お前に名前を授けよう。
そういうと伊邪那岐命さまは桃の実に
意富加牟豆美命(おほかむづみのみこと)
というご神名を授けられ、
葦原中つ国に暮らす、青人草の幸せを祈られたのです。
そして、とうとう伊邪那岐命さまの背後には
死者の国の身になられた伊邪那美命さま自らが
追いかけてこられました。
さぁ、ご夫婦神の行く末はどうなるのでしょうか。
―次回へ
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?