I海夕日MG_0222

神様も失敗して成長した 須佐之男命(後編)ことの葉綴り 其の十四

追放されどん底を味わった須佐之男命さまは……


「人生に失敗がないと 人生を失敗する」
高天原で大暴れしたことで、姉神は天岩戸に籠り世界はまっ暗闇に
その罪から高天原を追放された須佐之男命は、どん底のまま地上に墜落。
そこで“一人”の女神を救い英雄神・愛妻神に!

こんにちわ。更新復帰三日目。
高天原から追放された荒ぶれもの須佐之男命さまの「旅」はまだ続きます。
父神にも追放され、姉神のいる天上界からも追放され、自分の暴れたことといえ、人の人生でいえば、四方八方誰も味方も頼る人もない、人生のどん底を味わったといえます。

そんな須佐之男命さまですが、地上へ降りるとき、また一つお話があるのです。

食物(をしもの)を大気津比売神(おほげつひめのかみ)に乞うのですが、この大気津比売神が鼻や口、お尻から、いろいろな種類の味物(ためつもの)を取り出したから大変!
「汚い!」と怒った須佐之男命は、そのヒメを殺してしまいます。
すると、その死体の頭からは蚕、目から稲、耳に粟、鼻に小豆、陰部から麦、お尻からは大豆が生まれました。
それをみた神産巣日神(カミムスヒ…この産巣むすひのことをまたいつか)が、これらを五穀の種としたことで、農作物の起源となったのでした。


須佐之男命さまの地上でのご活躍!

やがて、地上に降りられた、どん底の失敗だらけだった須佐之男命。
地上での須佐之男命は、これまでとはちょっと違います。

出雲の国の肥の河上の鳥髪というところに降りたところ、箸が流れてきます。
上流に人がいるのではと川上にいくと、老いた夫婦が娘と一緒に泣いているではありませんか。
それは、国つ神の地上にいる神様で、足名推(あしなづち)と妻は手名推(てなづち)。美しい娘は、櫛名田比売(くしなだひめ)でした。
涙の理由をたずねると、「八人の娘がいたけれど、毎年、一つの胴体に八つの頭と尾のある大蛇(おろち)に食べられてします、それがまた来るので泣いています」

傍若無人でほかの神様に迷惑をかけてばかりだった須佐之男命さまですが、このとき「その娘さんを私にもらえませんか。私は天照大御神の弟で、今、天上から降りてきました」と、名乗りをあげます。
そして、老夫婦に、強いお酒を垣根をめぐらして、そこに八つの入り口をつくり、入り口ごとに酒の器を置いて大蛇を待ちなさい」と命じました。

やがて八岐大蛇がやってきて、その酒を飲んで眠ってしまったところ、須佐之男命は、十拳剣で、大蛇を切り殺し退治を果たし、櫛名田比売と老夫婦を守ります。

荒ぶれものの不良で追放された身ながら、自身の身分を名乗り、困った家族と娘を助ける勇気ある覇者へと変容を遂げたのです。

そのとき、八岐大蛇の尾の中からでてきた太刀が「草薙の剣」。

それを須佐之男命は、高天原の姉神・天照大御神さまに献上しました。

それが今も伝わるといわれる「三種の神器」の一つの剣!
熱田神宮(名古屋)のご神体としてお祀りされています。

そして須佐之男命は、愛する櫛名田比売と自分のおちつく処を出雲の中で探しもとめ、「須賀」という地に出会い、「我が御心すがすがし」と、そこにお宮を立てました。

そのとき雲がたりのぼりのを見た須佐之男命さまは、こう歌をよまれました。

 八雲立つ  出雲八重垣 妻籠みに 八重垣作る その八重垣を

父との別れ、姉との別れも経験し、罪を背負い孤独で、人生のどんぞこにもなったけれど、地上に降り立ってからは、自分の足でしっかりと歩き、困った人を救った。
これまでの過去のあやまちや失敗を乗り越えて、新たな人生を歩む決心をしたとき、
それはとても「すがすがしい」心地だったでしょう。
出会った櫛名田比売神と夫婦になり、これからはともに暮らす。
それを、おおらかに歌われた御歌(みうた)
日本初の「和歌」とも呼ばれています。

私たち人間も、過去の失敗や過ちで、人生をあきらめかけることもある。
絶望のふちにたたずむこともある。
けれど、須佐之男命さまのように、それを自分で責任をとり受け止めて。
向き合わなければいけない「大蛇」とも向き合う。
そして自分の足で「再出発」の一歩を踏み出したとき
大切な存在と出会い、新たな道が開けてくる。
そんなことを須佐之男命さまは、「負けるなよ」と励ましてくださっている気がします。

一歩を踏み出す勇気をもてたとき、「我がこころ、すがすがし」となるのでしょうね。

次回へ――

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