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黄泉の国での再会 伊邪那岐・伊邪那美さま22神様も失敗して成長した ことの葉綴り。其の七五

死者の国・黄泉の国へ

こんにちは。風香る五月。超サボり屋が今日もなんとかnoteに向います。
神話の神さまたちも、人間と同じように“失敗”をして、悩み苦しみ傷つき涙する。それは、今を生きる私たちにも勇気を与えてくれます。

初の夫婦神の夫・伊邪那岐命(いざなぎのみこと)さまは、
亡くなった愛する妻・伊邪那美命(いざなみのみこと)さまに
逢いたくて
逢いたくて
あきらめられず
矢も楯もたまらず。
地上から、
死者の国へ。
黄泉の国(よもつくに)へ
と、追いかけていったのです。

もう一度、どうしても逢いたい!


黄泉の国とは
地下にある死者たちが暮らすという
穢れたところとされていました。


真っ暗な闇が世界をおおっています。

黄泉の国の入口。
死後の世界の入口まで降りていきますと
固く固く閉ざされた石の御扉が閉まっています。

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夫婦の再会

伊邪那岐命さまが、
この生と死の世界を分ける扉の前に立たれていますと、
あれほど逢いたいと願った妻・伊邪那美命さまの
石の御扉からお出になり、夫をお迎えされたのです。

ただ暗くてよくは見せません。
けれど、
「ああ、あなたですね」
と、最愛の妻の声が聞こえます。


思わず駆けよられた伊邪那岐命さまは
こう言葉をおかけになりました。

「ああ、美しく愛しい私の妻よ、
私とあなたが一緒に産み、つくっている国は
まだつくりおえていないではないか。
あなたを迎えにきたのだよ。
さあ、私と一緒に帰ろう。戻ってきておくれ」

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死の国の食べ物

夫の言葉を聞いていた伊邪那美命さま
一言一言、その言葉を全身で受け止めながら
どうしようもない思いがこみ上げてきました。

「あ~、あ~あなた。
悔やまれます。悔やまれてなりません……。

どうして、どうして
もっと早くに会いにきてくださらなかったのですか。

あ~まことに悔やまれます」

伊邪那美命さまは、暗闇の中で
全身を震わせながら、
悲しみと怒りのまざった声を
ふり絞り続けられます。


「あ~あ~
私は、この死者の国、黄泉の国の窯で
不浄な火と水で煮炊きした
食べ物をすでに食べてしまったのです……」


「同じ釜の飯を食う」
ということわざはご存じですよね。
一つの釜で炊いたご飯を食べた仲間という意味ですね。


伊邪那美命さまは、これまでご夫婦でお産みになってこられた
高天原の神の御こころの宿る自然をお産みになりました。
清らかな水、
清らかな火
清らかな食物
清らかな釜
それを召し上がってきたのです。

けれど、亡くなられて黄泉の国にきてからは
夫を待ちわびながらも
つい、その死者の国の
不浄な水、火、釜で煮炊きをした
不浄なものを口に入れてしまっていました。
同じ釜で煮炊きした食べ物を食べると
その国のものになりきる、と信じられていたのです。

どれほど、悔やまれたでしょう。

もう取り返しがつきません。

「あ~私は、すでにこの黄泉の国のものになってしまったのです」
愛する夫よ。私は、もうあなたと一緒に戻ることはできません。

夫の伊邪那岐命さまも、ただただ驚かれます。
「そんな、なにをいうんだ。一緒に帰ろう」

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妻の決心

夫の愛情も伝わってきます。
「私は、すでにもう黄泉の国のものになってしまっています。
けれど、いとしい私の夫よ。
私を、死者の国まで迎えにきてくれて、ほんとうにありがとう」

私だって、一緒に戻りたい!!!
伊邪那美命さまは、そこである決心をします。

「愛しい夫よ、お願いがあります。
私もあなたと共にどうしても帰りたいと、
この黄泉の国の神々に、なんとか相談して参ります。
ここで、どうか待っていてください。
お願いします」

夫の伊邪那岐命もうなづきます。

そして、さらに伊邪那美命は夫にこう告げました。

「もう一つ、あなたにお願いがあります。
私が黄泉の国の神々に相談している間、
どうか、どうか、私の姿を、絶対に見ないでください」

そういうと、意を決した伊邪那美命さまは
石の御扉を開けて、黄泉の国の宮殿へと
入っていかれたのでしたー。

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神人共食

今回、伊邪那美命さまは死者の国の食べ物を食べた
と、あります。
同じ釜で煮炊きしたものを食べると
その国のものになる。
一緒になる。


古来から、神道にも
「神人共食(しんじんきょうしょく)」という言葉があります。

こちらは、神さまと同じものを食べる
「共食」により
神様と一体になる、ということ。

天皇陛下が毎年、とりおこなわれます
「新嘗祭」(にいなめさい)は、
天照大御神さまはじめ神々に、新穀をお供えになり、
神恩を感謝されたあと
ご神饌を天皇陛下も自らお召し上がりになる
「共食」をされるご神事です。

宮中祭祀の中でももっとも重要な祭祀なのです。
このとき、天皇陛下が自らお育てになった新穀もお供えされます。

また、私たちは神社や神棚にお供えをしますよね。
また神社のお祭りや、ご祈祷の最後の儀式に
「直会(なおらい)」があります。
こちらも、神さまにお供えしたご神饌のお下がりを
みんなで分け合った頂戴することも
「神人共食」。
神さまのお力、ご守護、恩寵をいただけるのです

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神話の世界の伝承が、今の暮らしにも受け継がれているのです


物語は、伊邪那岐命伊邪那美命さまご夫婦
さぁ、どうなるでしょうか。
無事に、伊邪那美命さまは
黄泉の国の神々のお許しが出て
夫とともに地上に戻れるのでしょうか。

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―次回へ

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