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「死」を知る 伊邪那岐・伊邪那美さま24 神様も失敗して成長した ことの葉綴り。其の七七

変わり果てた妻

こんにちは。雨音が聞こえる週末の午後、超サボり屋ですが、朝ヨガとお昼寝の後、神話の神さまの物語に向います。
神さまも、人間と同じように“失敗”をして、悩み傷つき涙した。今を生きる私たちへのメッセージのように思います。。

初の夫婦神の夫・伊邪那岐命(いざなぎのみこと)さまは、
死者の暮らす黄泉の国まで、
最愛の妻・伊邪那美命(いざなみのみこと)さまを
連れ戻す決意で逢いにでかけましたが……。

「なんとか地上に戻してほしい」と
死者の国の神さまにお願いしに、
黄泉の国の宮殿へと向かわれました。。
「その間、決して、決して私を見ないでください。
ここで待っていてくださいね」
という、言葉を夫に残して。

けれど、待っても、待っても妻は戻ってきません。

妻との約束を破り伊邪那岐命さまは、
ご自身の櫛を手に取り、それに一つの火をつけて
死者の国の門をくぐってしまったのです。

伊邪那岐命さまは、超えてはならない一戦を超えて
死者の国へと足を踏み入れてしまわれました。
そう、決しておかしてはならない
禁忌を破ってしまったのです。

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おそるおそる歩みを進めます。
真っ暗な闇の中に、一つが燃えています。

足元に妻らしき着物と何かがあり、火を近づけてみると……。

それは、愛する妻の変わり果てた伊邪那美命さまの死体でした。
もう腐りはててしまっていて
たくさんの蛆が集まり、体にたかって鳴いています。
ごろごろ
ごろごろ
気味悪いこの音は、なんと、遺体を蛆が食い散らかす音!

伊邪那岐命さまは、息を呑み動けません!

強烈な腐臭があまりにたちこめています。

頭には、大雷(おおいかづち)
胸には、火雷(ほのいかづち)
お腹には、黒雷(いかづち)
陰(ほと)には、折雷(さきいかづち)
左の手には、鳴雷(なりいかづち)
右の手には、伏雷(ふしいかづち)
あわせると八つの雷神(いかづちがみ)が現れていました。

雷(いかづち)は、巌つ霊(いかつち)という
恐ろしい化け物、魔物のことでした。

蛆たちが肉体を食い散らかす音の中
八つの忌まわしい魔物が
じっとりとした視線で
伊邪那岐命さまを睨んでいます。

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伊邪那岐命さま、「死」を思い知る


見てはならぬものを
“見てしまった”伊邪那岐命さま。
ショック
衝撃
驚き
恐ろしい
無残

言葉も無くし、
息をのむ
息をすることもままならず
恐ろしさに身が震えます。
すごい腐臭に鼻も目も痛みます。

膝もガクガクされたでしょう。

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その中で、伊邪那岐命さまは、
最愛の妻の肉体が、
もうこれほど朽ち果ててしまったこと。
腐ってしまったこと……。

妻と一緒に、地上に還ることは不可能なのだ。

愛する妻は、二度と生き返ることがないのだ。

結婚式の儀礼は“やりなおし”ができた。

だが……妻はもう戻らない……。

私が愛し共に国生み・神生みをしてきた
妻は、もういないのだ。

そのことに、悲しい哉。気づかれたのです。

禁忌を破り、“見てはならないもの”を見てしまった
「死」とは、どういうものかを
痛烈に感じられたのでした。

そして、自分がいるべき場所ではないことも。

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生と死
それは世界が違うことを
痛烈に思い知ったのです。

私は死者の国にいてはいけない。
急いで、ここを立ち去らなければ……。

とてつもない畏れを感じた伊邪那岐命さまは
地上へ戻ろうと踵を返されました。

もつれそうになる足で、黄泉の国の門へと
一目さんに向かいます。

その背後から、
「ああぁぁぁ~!!!!」

地を裂くような叫び声が聞こえてきました。

「ああああ~、なんと、この私の
決して見られなくなかった
恥ずかしい姿を見るなんて!!
見るな~と言ったのに!!!
約束を破って……
よくも、よくも辱(はじ)をかかせてくれましたね~~」

それは、死者の国のものとなってしまった
伊邪那美命さまの“憤怒のお姿”でした。

伊邪那岐命さまは、
無事に地上に戻れるのでしょうか?

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―次回へ

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