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死の国からの脱出 伊邪那岐・伊邪那美さま25神様も失敗して成長した ことの葉綴り。其の七八

伊邪那岐命さまの憤怒

おはようございます。日曜の朝、超サボり屋が今日も、神話の神さまの物語に向かえました。ありがたいことです。
神さまも、人間と同じように“失敗”をして、悩み傷つき涙した。今を生きる私たちへのメッセージのように思います。。

初の夫婦神の夫・伊邪那岐命(いざなぎのみこと)さまは、
最愛の妻伊邪那美命(いざなみのみこと)さまとの約束を破り
死者の暮らす黄泉の国に入り込み、
そこで、腐乱し変わり果てた妻の姿を目にしてしまいました。
肉体の「死」を目の当たりにした衝撃と
「ここは自分が入ってはいけない場所だったのだ」
と、気づき、急いで逃げ出します。

その背中に、伊邪那美命さまの悲鳴のような
地を這うような怒りの声が聞こえてきました。

「ああああ~、なんと、この私の
あまりにも恥ずかしい姿を見るなんて!!
見るな~と言ったのに!!!
約束を破って……
よくも、よくも私に辱(はじ)をかかせてくれましたね~~」

妻の凄まじい憤怒の姿に驚いていると
さらに、伊邪那岐命さまに向けて
何かが追いかけてきます。

それは、伊邪那美命さまが、夫を追わせるための
黄泉醜女(よもつしこめ)と呼ばれる
死者の世界、黄泉の国にいる、死の穢れにまみれた
怖ろしく強力なものたち
でした。
今でいうと、“ソンビ”のような感じでしょうか。
その軍団が、ものすごい形相とスピードで
追いかけてきます。

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黄泉醜女(よもつしこめ)に追われて

伊邪那岐命さまは、必死で逃げながら
ご自身の御角髪(みづら)の髪につけていた
黒い蔓(つる)を輪にしてつくった、黒御髪(くろみかづら)
という髪飾りを手でほどくと、
追っ手の黄泉醜女たちのいる背後へ向けて
投げ捨てました。
この黒いつる草の髪飾りは、輪になっていて、
長寿を願う、まさに「永遠なるもの」を現したものでした。

この黒御髪が落ちた場所には
山葡萄がつるとなって大きくなり、
そこに葡萄の実が成った
ではありませんか。


黄泉醜女たちは、その葡萄の実を
がぶがぶとむしゃぶりついて食べています。


よし、今のうちだ!
伊邪那岐命さまは、さらに速度をあげて
逃げていきます。

死者たちの黄泉の国の追っ手軍団も
それで見逃すはずはありません。
なおも、狙いをつけた伊邪那岐命さまを
追いかけてきます。


まだ、来るか……。

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櫛の歯から竹の子が

伊邪那岐命さまは、今度は
右の御角髪(みみづら)に刺していた
湯津津間櫛(ゆつつまぐし)の櫛の歯を
走りながら手で折ると
それを追ってたちに投げました。
湯津は、清々しい清らかさ、神聖さを現します。
そうです。黄泉の国に入られて
一つの火を灯したときに使われた櫛の歯。
それが、左の御角髪(みみづら)に刺したものでしたね。

今度は、清らかな右の御角髪(みみづら)の櫛の歯を手で折って
背後の黄泉醜女たちへと投げつけました。

この清らかな櫛の歯が、死者の国に落ちると
その地面からは、竹の子がニョキニョキと出てきたのです

なんだか、逃げる伊邪那岐命さまにとっては怖いはずなのに、どこか、かわいらしいですよね(^^)

黄泉醜女たちは、竹の子に夢中で食べています。

追われる伊邪那岐命さまは、必死です。
なんとか地上へと
自分がいるべき場所
「生きる」場所へと戻らなければなりません。

もしかしたら、肉体の「死」の、無残な姿を目にして
伊邪那岐命さまは、
「いのち」の尊さ。
「いのち」とは、どれほど輝いているものなのか。

今を生きる
生きているだけで価値があること

自分の「生きる」国へと、戻りたい!!
「生命」への希求があったのではないでしょうか。

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神聖な十拳剣で応戦

よし、なんとかなりそうだ。
地上への出口はもう少しだ!
ピンチは脱出できた……

そう、思ったのもつかの間。

憤怒の怒りと化した伊邪那美命さま。
もともと大きな母神なのです。
黄泉醜女たちの、だらしなさ、頼りがいのなさにいら立っていました。
そこで、自分の腐乱した死体へとへばりついていた
八種類の雷神(この黄泉の国の雷神は、おそろしい魔物の意)と、
千五百(ちいほ)の黄泉軍(よもついくさ)
死者の国も魔物・化け物でなりたつ軍、総勢千五百の軍勢を
伊邪那岐命さまに差し向けたのです!!

伊邪那岐命さまも、応戦します。
腰にさげられていた、「十拳剣(とつかのつるぎ)」。
そうです、火の神さまの首を斬られた長い長い神聖な剣。
これは、魔物を祓うパワーがあります。
この十拳剣を抜かれて、
魔物たちの軍勢を追い払いながら

地上を目指されます。

もう、少し

あと、少し


どれほどの時が過ぎたのでしょうか。


ようやく、ようやくです。

黄泉の国と地上の現実の世界の境界が見えてきました!!


「黄泉比良坂」(よもつひらさか)という
坂のふもとまで逃げのびてきたのです

さぁ、伊邪那岐命さまは、「生」の世界へ
無事に、戻れるでしょうか?

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―次回へ

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