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戦の中で誕生した御子 垂仁天皇14神話は今も生きている ことの葉綴り。二九二

戦の中での出産

こんばんは。今年も残すところ半月ですね。さて今日も仕事合間に
「ことの葉綴り。」に向かいます。

垂仁天皇の物語の続きです。

皇后の沙本毘賣命(さほびめのみこと)は、戦のさ中、
謀叛の張本人である、兄の沙本毘古(さほびこ)の館へと逃げ込んでいってしまいました。
そしてそのお腹には、天皇の皇子を身ごもっていたのです。
それでも、沙本毘賣(さほびめ)は、妻、皇后、母の地位を捨てて
兄への恋路を選んだ
のです。

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妻の裏切り
義理兄の謀反
お腹の中の我が子も敵方へ……

深い心痛と失意を感じながら
垂仁天皇が選ばれたのは
攻撃の一時中止
最愛の皇后と、我が子の命を、何よりも優先されたのでした。

敵方の館へ、火矢を放ち、陥落させることは
愛する心ゆえ、忍びなく、
どうしても
どうしてもできませんでした

軍勢は、沙本毘古(さほびこ)と沙本毘賣(さほびめ)のいる館を取り囲んではいます。

そうして、緊張状態の中、動きのないまま、戦は停滞しています。

そんなある日のことです。

沙本毘賣(さほびめ)は、兄の沙本毘古(さほびこ)の館の中で、とうとう天皇の皇子を出産したのです。

すごい状況での出産ですね。

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火の中で出産した女神の強さ

神話には、火のついた館での出産が以前にもありましたよね。

木花佐久夜毘賣命(このはなさくやひめのみこと)さま


豊玉毘賣命(とよたまひめのみこと)さま

どの比賣(ひめ)も命がけで、新たな命を誕生させてくださっています

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どの比賣も、誇りを持ち、苦難にぶちあたったときも、自らの選んだ道をまっすぐに突き進んでいく。
女性の強さ、生命力、激しさを感じます

古来から、女性は本来“強かった”気がします。
それを日本の女神さま方は、物語の中で残してくださっている気がします

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沙本毘賣の覚悟

さて、沙本毘賣も、戦の中、しかも夫でなかく、愛する兄の元で
お産をした
のです。
館に“火”放たれてはいませんが、
ある意味、恋の、嫉妬の、憤怒の、戦の“炎”が交錯する中での
お産
になりました。


豊玉毘賣命(とよたまひめ)さまは、ご自身の本来の姿を、夫である山幸彦に、見られてしまったことから、我が御子を残し、妹の玉依毘賣命(たまよりひめのみこと)を乳母として、ご自身は、海の世界へと戻って行ってしまいましたよね。

この沙本毘賣(さほびめ)さまと皇子はどうなるでしょう?

お産を無事に終えて母になった沙本毘賣(さほびめ)は、
生まれたての皇子を抱きかかえて
屋敷を取り囲む稲城の外へと姿を見せたのです

垂仁天皇の姿を見つけると、こう語りかけます。

天皇
あなたが、この御子を、天皇の御子であると思ってくださるのならば、どうぞ私のこの罪をお許しになり、この御子をお引き取りになり皇子としてお育てくださいませ……。

このときも、いえ、兄の館に逃げ込んだときから、
沙本毘賣(さほびめ)は、覚悟を決めていたのでしょう
ね。

さて、この御子は?
天皇で夫で父である垂仁天皇は、どうされるでしょう?
気になりますね……。

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―次回へ

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