元祖“デキる”女神 神様も“失敗”して成長した ことの葉綴り。百五四
海鼠(ナマコ)の口!
こんにちは。久しぶりの夏空が嬉しい週末、「ことの葉綴り。」に向かう午後のひとときです。
邇邇芸命(ににぎのみこと)さまが天孫降臨なさったときに
「みちひらき」された猿田毘古神(さるたひこのかみ)さまは
天宇受賣命(あめのうずめのみこと))さまと共に、
故郷の伊勢の地に戻られました。
そこで国土の開拓に精をだされていましたが、
ある日、魚を獲りにもぐった海で、大きな貝に
腕を挟まれて溺れ死んでしまいました。
伊勢の海の魚たちから、そのことを聞かされた
天宇受賣命さま。
パートナーを突然失われた後、どうされたでしょう。
ただ、悲しみにくれて泣き崩れてはいませんでした。
元祖“仕事のデキる”女でもある天宇受賣命さま。
ある日、伊勢の海で、海に生きるあらゆる魚たちを集めました。
そして、魚たちにこう告げます。
お魚たちよ。
高天原から天降られた、天つ神の御子邇邇芸命さまは、
生きとし生けるすべてのものの
幸せを願っているのです。
さぁ、あなたたちは、天つ神の御子に
お仕えしますか?
鯛や平目、タコをはじめ、さまざまはお魚や貝たちも
水面に上がってきて、口をパクパクとあけて飛び上がって
はい! 天宇受賣命さま~
お仕えいたしま~す!!
と、楽しそうに答えていきます。
ただ、一匹だけ、何もいわずうごかずにいるものがありました。
おや? お前はだれ? なぜ 返事をしないの?
天宇受賣命さまが、よく見てみると
それは、海鼠(なまこ)でした。
ナマコは、口がなく、返事をすることができなかったのです。
まぁ、ナマコ、なぜ返事しないの?
あ~口がきけないなら、きけるようにしてあげよう!
そうおっしゃると、天宇受賣命さまは
すぐに、小さな小刀を手にして
海鼠(なまこ)を、シューっと、
一切りして、大きな口をつくったのです。
ほら、これで口がきけるわね。
今でも、海鼠(なまこ)の口がさけているのは
このためだといわれています。
そして海に中に生きる、すべての魚たちが、
天つ神の御子に、お仕えすることを誓ったのです。
神も人も笑顔にする「俳優(わざおぎ)」
元祖“仕事のデキる”女神さまは、
決断も行動も、素早く豪快ですね~(^^)
海のすべての生き物に、天つ神の御子につかえる約束をさせた“業績”もあり、後世においては、
天皇陛下が御代替わりされるたびに、
伊勢志摩の国でとれた、お魚、貝などの魚介類などの
海産物の初物を朝廷に献上されるときに、
必ず、天宇受賣命さまの子孫である、「猿女君」にも
分けて送られることになったのです。
そして、今も、伊勢市の「猿田彦神社」をはじめ、
三重県の鈴鹿市「椿大神社(つばきおおかみやしろ)」
に、猿田彦大神とご一緒にお祀りされています。
天宇受賣命さまは、天の石屋戸にお隠れになられた天照大御神さまを、岩の外へと誘うために、神懸かりをして、肌も露わに舞踊を舞われました。
神さまをおなぐさめして、舞を奉納するお神楽の起源で、
神さまのおこころを和ませ楽しませる「神遊び」の意味もあり、
日本の芸能の源の女神さまです。
『巧みに俳優(わざおぎ)をはし』
と、あるように、俳優の原点ともいわれています。
俳優(わざおぎ)の、わざは、「技」や所作、行為のことをさし、
おぎは、お招きするということ。
「俳優」は、神さまをお招きして、楽しんでもらう。
またそこにいる多くの人も「楽をし」(あそびをし)」と、みんなで楽しませるということ。「娯楽」の原点でもあります。
天宇受賣命さまの子孫の猿女君は、古代の宮廷祭祀で、
神楽を舞ひ、神さまも人も喜ばせていたのですね。
明るく強く、神さまも人を楽しませ、
みんなを笑顔にする……。
やっぱり、天宇受賣命さまはスーパーウーマン!
元祖“仕事もデキる”女神さまですね。
―次回へ。
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