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父と息子、母と息子 須佐之男命の悲嘆 伊邪那岐命 ことの葉綴り。其の九一

須佐之男命の号泣

おはようございます。氏神様への早朝参拝。朝日が美しかったです。そして「ことの葉綴り。」に迎います。感謝。

伊邪那岐命さまが、禊祓いでご自身の身も心も
祓い清め抜かれた末に、お生まれになった三貴神。

父神として、歓喜にふるえ
三貴神の特性をご覧になったうえで、
果たすべき神としての役割を委たのです。


日の女神さまである天照大御神さまは、高天原と昼の世界を統べるために高天原へと昇られました。
月の神さま月讀命さま、夜と月の満ち欠けを統べられました。

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父の伊邪那岐命さまより委ねられた使命に全力で励まれています。

ただ、海原を治めなさいと委ねられた建速須佐之男(たけはやすさの)命さまだけは……

父の伊邪那岐命さまから託された
海原を治めることもなさらずに、
いつも、いつも泣いていらっしゃる
のです。

ずっとずっと泣いているのです。

今でいう“ニート”のような状態でしょうか。
どれくらい、泣いているかというと
すごいですよ~。
長い長いあごひげが、胸元に垂れるようになるまで……

しくしくどころじゃありません。

うぇん、うぇん、うぇ~~~ん
激しく涙を流しながら泣いています

赤ちゃんが全身で大泣きして暴れているようです。

もともと勇猛迅速のパワフルな神さまです。

その須佐之男命さまが、全身で暴れて大泣きし続けているのです。

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美しい山河草木の葦原中つ国。

その青々とした山が、大暴れで山が噴火してしまい
樹木を燃やし、樹木がすべて枯れ木の山になるまで泣き枯らし

河川や海の清らかな水は
須佐之男命さまが泣く涙として吸い上げられてしまい涸れて乾されて
しまっています!

うぇ~ん、うぇ~ん
須佐之男命の肚の底からの呻き、喚く泣き声、
どうしようもないだだっ子の
この“悪い神”の声は
田植えをする田んぼ中に、夏の蠅が騒ぎたかって満ちてしまいました

伊邪那岐・伊邪那美さまがお生みになった
自然豊かな国土には、
あらゆるよろづの悪しきものの禍が一斉に発生
したのです。

これは、ピンチです!
葦原中つ国、が“ゴミの島”になってしまいます!!

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妣(はは)恋し。喪失と悲嘆

貴い神子たちに、“世代交代”をして大喜びだった父神
伊邪那岐命さま、さすがに、もう見ていられません

そこで、息子の須佐之男命さまにこうお尋ねになりました。

「息子よ、なぜ、あなたは、私が委ねた国を治めることなく、いつもいつも、ただ哭(な)いているのだ?」

すると、須佐之男命さまは、泣きながらこう話したのでした

「うぇ~ん、私は、私は、寂しいのです。亡き母上のいる黄泉の国、根の堅洲国(ねのかたすくに)へ行きたい!!! そう思って哭いているのです。お母さまに会いたいのです~~うぇ~ん」

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そうです。
須佐之男命さまは、すでに亡くなった我が母のことが
恋しくて、恋しくて
すがりたくて、すがりたくて
たまらないのです。

母を慕う息子の思い

母を知らない心の空虚さ
母に甘えられない寂しさ

母、その存在を失った喪失感

今なら、「喪失感」が人に及ぼす心理的影響も知られていますが。
神話の中にも、母を亡くした喪失感が描かれているのです。

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須佐之男命さまは、
母のいない喪失感と悲嘆に暮れていたのです

母と息子のつながりの深さがあらわれていますね。

心理学者の河合隼雄氏は、こう分析しています。

アマテラスは父イザナギの命のままに
高天原を統治することにあるが、
スサノヲは命に服さずに泣き叫ぶ。
そして、自分は「妣の国」に行きたいと言うのだ。
アマテラスが「父の娘」であるのに対して、
スサノヲは、父親の鼻から生まれたのにもかかわらず、
明らかに「母の息子」なのである。

さぁ困ったのは、父・伊邪那岐命さまですね。
すでに、亡くなった妻とは離婚もした
シングルファーザーでもあります。
しかも、生の世界と死の世界は
もうまったく違う世界なのです。

父と娘とちがい、
男同士の父と息子……
この関係性も難しそうです

どうしたもんでしょうか?
父・伊邪那岐命さまはどうするのでしょう……。
須佐之男命さまは、泣き止むのでしょうか?

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=次回へ

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