別れはある日突然に　神様も“失敗”して成長した ことの葉綴り｡百五二

猿田毘古神の故郷へ

おはようございます。朝の緊急地震速報、地震なくてよかったですね。そして今日も「ことの葉綴り。」の時間が持てました。

天孫降臨された邇邇芸命さまは、
最初に、立派な宮殿を、日向の笠沙の御前に建てられました。

そして、天宇受賣命に、
天上界から地上への道案内の大役をつとめあげて、
故郷へと帰りたいと言っている猿田毘古神につきそい
見送っていってやりなさい
と、ご命じになりました。

また、この猿田毘古神の正体を聞きだした功績から、
褒美として天宇受賣命に、猿田毘古神の名を与ました。
天宇受賣命は、猿田毘古の力も持つ「猿女君」と呼ばれるようになります。

さて、猿田毘古神の故郷ってどこでしょう？

三重県の伊勢の長田（さながた）五十鈴の川上の地が、故郷でした。

猿田毘古神さまと天宇受賣命さまは、
筑紫の日向の宮から、ご一緒に、伊勢まで旅をされてきました。

故郷に戻られた猿田毘古神さまは、天宇受賣命さまとご一緒に、
この伊勢の川上の地をはじめ、全国の開拓にあたられました。

猿田毘古神はどこ？

ある日のことです。
伊勢の阿邪訶（あざか）というところで
猿田毘古神さまは、魚を取ろうと海に入っていかれました。

そのとき、海の底にいた比良夫貝（ひらぶがい）という貝に
手を咬まれてしまいます。

痛い！　痛い！！　

手を抜こうとしてもまったく抜けません。

しかも海中です。息もできません。
暴れても、もがいても、どうにもなりません。

やがて、海水に沈み、溺れてしまわれて
なんと絶命されてしまったのです。

天宇受賣命さまは、猿田毘古神さまが戻らないのを
不審に思われて、海の海老やタコや、魚たちに
猿田毘古神さまを見なかった？
と、お尋ねになりました。
そして、魚たちから、
猿田毘古神さまが、
貝に手を挟まれて溺れ死んだときの様子を
聞かされました。

猿田毘古神さまが、海底に沈まれていくときの名
底ごく御魂（そこどくみたま）と……。

そして溺れながら、海水の泡が粒となりゆくときの名を
つぶたつ御魂と……。

さらに水の泡が割れるときの名を
あわさく御魂と……。

あまりにも突然訪れた別れ……。

天宇受賣命さまの悲しみは、どれほだったでしょう……。
いくら、スーパーウーマン女神とはいえ
パートナーの死の悲しみ、喪失感……。

天宇受賣命さま、どうされるでしょうね……。

共にお祀りされて

伊勢市には、猿田毘古神様をお祀りする「猿田彦神社」さんが
ありますよね。
天孫降臨で、天上界からの道の先導をされたことから、
今もなお、「みちひらき」の神さまとして、
ものごとの最初にご出現になり、万事をもっとも佳き方へと
“おみちびき”になられる大神として、崇敬されています。

みちひらきの大神 猿田彦神社

この境内には、猿田彦大神（猿田毘古神）とご一緒に
「佐瑠女神社（さるめじんじゃ）」があり、猿女君の名をいただいた天宇受賣命さまが、俳優（わざおき）、神楽、技芸、鎮魂の祖神としてお祀りされています。

今も、ご一緒にお祭りされているのですね。なんか、よかった（^^）

毎年8月17日、18日には、佐瑠女神社の例祭がおこなわれて、提灯が飾られて、芸事が賑やかに奉納されています。
神話は今も生きている……ですね。
今年のご神事も無事におこなわれますように。

―次回へ。