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ピアノを弾く上でもっとも重要な要素とは?

88個の鍵盤を自由自在に操り、壮大なオーケストラを奏でるピアノ。
数ある楽器のなかでも習得難易度の高い部類に入ります。

例えばジャズの業務で見てみても
ピアニストとは実に多くのことを担当しなければいけません。

  • イントロダクション

  • リズム

  • ボイシング

  • ピアノソロフレーズ

  • ベースソロのガイド

これに歌伴奏となるとさらにやらなきゃいけないことが増えていきます。

クラシック音楽でも然り
とんでもない組み合わせの数々を正確にこなさなければいけません。

本日はそんなピアノ上達のために必須となる重要な要素について
すでにわかってるよ〜という方も
もう一度、何度でも肝に銘じるつもりで一緒に確認していきましょう。

特に独学で始める方は変な癖がつく前に必ずチェックしてください。

初心者がやってはいけないこと3選

幼少期からピアノを学ぶ方はもちろんですが
大人になってから
また、副科としてピアノを学び始める方

共通して言えるやってはいけないことがあります。

やってはいけないこと〜1

『ペダルを使いまくってしまう』

これは独学で始める方が陥りやすい落とし穴です。

ピアノというのは構造上ペダルを踏むと
ダンパーという部分が上がった状態になり
抑える部分が解放されるため
音が鳴りっぱなし(実際は減衰)になります。

こちらの動画が非常にわかりやすいのでシェア

つまりペダルを踏みっぱなしにすると、いつまでも音は消えない。

反対にペダルを踏まないと指を離した瞬間に音がピタッと止まります。

音が止まるとカッコ悪いですよね。
不安ですよね。
とてもよくわかります。

そのため初心者〜中級者の場合、右足は常にペダルにおいて
不安を解消しようとします。

でも、曲を演奏する時
練習する時
右足はペダルにかけないでください。

指のコントロールだけでちゃんと音楽性を確立できなければいけません。
ペダルはあくまでも補助目的であり
指でコントロールできた音楽をより一層輝かせるためのもの。

パラパラのチャーハン

それはまるで米粒一つ一つに美しく卵がコーティングされた
パラパラのチャーハンのような存在です。

米粒とは音のこと。
ペダルは卵です。

早いパッセージのフレーズでも踏みっぱなしなんて絶対ダメ。
それはパラパラチャーハンを作りたいのに
米粒に対して卵があまりにも多い状態を意味します。

べちゃべちゃでまずいですよね。
美味しくないし
美しくない。

紫蘇の天ぷら

それはゆったりしたバラードでも同じこと。
ゆったりしたバラードは紫蘇の天ぷらに例えることができます。

紫蘇の葉の天ぷらはとってもデリケートで優雅。

ペダルを踏みっぱなしにするということは
紫蘇の葉に衣をべっっっっっったりとコーディングして揚げるのと同じ。
一枚一枚適切な衣量で油の大河を泳いでもらう必要があります。

油の大河は指のコントロールですね。

これらが合わさってスローバラードでも美しいペダルコーティングができるわけです。

こちらはとある楽曲のペダルの数と位置をしめしたMIDIデータです。

縦の薄いグレーの線が筆者がペダルを踏んでいる箇所。

これだけだとイマイチよくわからないですよね。
拡大してみましょう。

とってもゆっくりな曲です。
注目してほしいのが、音が伸びている箇所でも踏み替えていること。

これはとっても大事なこと。
一つの音、和音に対してちゃんとコーティングしているんですね。

もちろん適当にやってるんじゃなくて、後ろ部分も
ちゃんと意図をもってコントロールしていることがわかりますよね。

ここまでのペダルコントロールができるようになってはじめて
右足はペダルに常駐させることができます。

このペダルコントロールで演奏したスローバラードがこちら。

練習のコツ

初心者はペダルを使わずに指で音の音価(音の長さ)をしっかりキープできるように訓練してください。

ペダルを使わないことで
指のコントロールができていないと音がブツブツに途切れてカッコ悪い
カッコ悪いし恥ずかしいから自然に音をしっかり伸ばすようになります。

最初からペダルに頼って曲を演奏していると
音は途切れないので見てくれはいいですが
ペダリング(ペダルコントール)を勉強する段階になって
とてもとてもとても苦労します。

何よりもパラパラのチャーハンと
美しい緑色が出る最高の紫蘇の天ぷらが食べたいですよね。

やってはいけないこと〜2

『適当に座ってしまう』

やってはいけません。
ピアノの椅子の高さ、鍵盤との距離、腕の角度、位置。
どれもとても重要な項目。

その人が持っている筋肉の状態や質で若干変わってきます。

最もバランスの取れた偉人とは?

筆者の持論ですが、ピアノを演奏する上でもっともバランスの取れた人
それがイタリア出身のアルトゥール・ミケランジェリ氏。

巨匠中の巨匠です。

是非彼の姿勢を参考に
基本軸にし
そこから自分の姿勢、スタイルを見つけ出してください。

練習のコツ

自分の姿勢を見つけるポイントは3つあります。

  1. 手の部分は重力を7割〜8割使えること

  2. 身体の軸の7割以上が動かないこと

  3. 右足は重量を借りないこと

黄色の線の部分で仮に2割以上後ろに重心を動かすことがありますが、これは力を抜くためのいわばアースのような役割を果たします。

ただし赤い線、重心自体は必ず7割ほどをキープしておく必要があります。

手の部分に関してはピアノをパーカションとして考えてください。

打楽器の演奏では、通常力をフルに使って楽器を叩くことはしません。
必ず重力と併用して振り下ろす。
(ほぼ重力だけの奏法もあります)

これはオーケストラの指揮でも同じです。

すべての動作が駆動するロボットが指揮をすると、音楽に乗れません
必ず遅れがでてきます。
それだけ重力、そして手の重みというのは重要なのです。

指揮者が指揮棒を変える理由

オーケストラの指揮者の指揮棒は、ただの棒じゃないんですね。
握る部分はコルクのようになっています。

これは実に様々な形状、重さのものがあります。
重さといっても数g〜数十gのもの。

もちろん握りやすさとか愛着とかはあるんですが
それでも曲によってはこっちの重めの方がよいと
わずか数十g重いものを選んだりします。

それでも振り下ろす際の重力の加算は劇的に変化します。

それほど重力の力をコントロールする能力はピアニストだけでなく
打楽器や指揮者などのある程度のアクションを必要とする演奏家には
必要不可欠な能力です。

一方でペダル部分に関しては、そのほとんどを筋力でコントロールする必要があります。

先述の通りペダル部分に関しては非常に細かく繊細なコントロールが必要であり重力のベルカーブに任せてしまうことは許されません。

でも椅子を高くしているピアニストもいるんじゃないの?
と思われますか?

先述のアルトゥール・ミケランジェリのお弟子さんで、現在は巨匠となったマウリツィオ・ポリーニさんの演奏はこんな感じ。

確かに若干右足は上からの圧力がかかっているような姿勢に見えます
しかし演奏をよく見てみるとほぼ100%筋力でコントロールしているのがわかりますよね。

全体的に鍵盤やピアノより上に感じますが、これは身体の筋力の衰えから重力を借りる割合を意図的に増やしていると考えられます。
ここまでの巨匠になると、重力の操作は自由自在です。

実際お若い頃のこちらのシーンを見てみると
しっかりとお師匠さんのミケランジェリと近いバランス感覚でピアノと向き合っているのが伺えます。

やってはいけないこと〜3

『アップライトピアノのみで練習してしまう』

もちろんこれはピアノを練習する目的にもよりますが、多くの場合アップライトピアノで練習するのはおすすめできません。

これはアップライトピアノを否定しているわけではないので誤解のないようにお願いします。
アップライトピアノは筆者も大好きですし、あえてアップライトピアノで演奏したい曲だってあります。

ただし、初心者の人が最初からアップライトピアノで練習をはじめるのはリスクが高いと言えます。

それはピアノの構造上の問題があります。

アップライトピアノの場合は一般的なグランドピアノと比べて
アクションの駆動部分が多いんです。

そのため、若干ではありますが、音の発生までの時間がグランドピアノに比べて長いわけです。

かといって、ピアノ始めるためにグランドピアノを買わなきゃいけないの?

というと、まさかそんなことはありません。

一昔前に比べて
現代の電子ピアノは構造や音(サンプリング音源)含めて
とても高いクオリティーになっています。

アップライトを購入しようとするのではなく、是非電子ピアノで練習をはじめてください。

電子ピアノであれば先ほどのペダルの話でもあったように
コンピューターと接続すればペダルの位置なども確認できるため
より現代的な練習や研究にも繋がります。

グランドピアノを購入するよという方は
リセールバリューも考慮して検討しましょう。
リセールバリューも考慮したグランドピアノの選び方はこちら。

500万のピアノを購入して10年後仮に200万で売却となっても1年当たり30万、1ヶ月あたり、2万五千円です。
教育費としてそんなにむちゃくちゃな値段ではないことがわかります。
この2万五千円で一生通用する豊かな感性と一流の教養が養われるわけです。

Kotaro Studio記事内

やってはいけないこと番外編

『弱音ペダルを踏んじゃう』

これはあえてリストに加えるまでもないことなので番外編としました。

ピアノのコントロールは本当に難しい。

誰でも押せば音は鳴る。
でも適当に押したら"ぐちゃー"ってなっちゃう。

"べちょーーー"ともなっちゃう。

弱音ペダルを踏むと、"ぐちゃー"とも"べちょーーー"ともならないんです。

でも初心者からそんな練習をしていると、いつまで経ってもピアノを演奏できるようにはなりません。

弱音ペダルの用途を知るのは
音大や芸大に入学し
海外留学も視野に入れるほどのマスタークラスの学習者になってから。

総じて最初のうちはピアノにペダルが付いていることを忘れてください。

まとめ:一番大事なこと

ピアノを学ぶために知っておかなければいけないこと。

  • 基本的にペダルは使わないで練習する

  • ペダルの研究は指の練習同等かそれ以上に時間をかける

  • 姿勢には細心の注意を払い正しい姿勢を癖づけておく

  • アップライトじゃなく電子ピアノでOK

くどいようですが、ピアノの演奏に最も重要な要素がペダルです。

  • 全踏み

  • ハーフ

  • ちょい踏み

の3種類を軸として

  • 単音で艶を出すためのペダル(1〜2割ほど踏む)

  • フレーズに躍動感を出すためのペダル(3〜4割ほど踏む)

  • ピアニッシモのペダル(0.5〜1割ほど踏む)

  • フォルテをより荘厳なフォルテにする(7〜8割で踏み後半に踏み込む)

などなど
個人的な感覚でもかなりの種類のペダリングがあると認識しています。

パフォーマンスとして聴衆には理解されない部分ではありますが
こういうところこそ丁寧に時間をかけて追求していくことで
美しいピアノサウンドを奏でることができるようになります。

姿勢のモデルとして紹介した
アルトゥール・ミケランジェリ氏の自宅での一枚。

引用:Wikipedia

いかに軸となる重心は固定されていて
腕と指は重力を借り
右足は筋肉だけでコントロールできているのかが伺えます。

特にピアニッシモの表現力を体験してみてください。


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