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短編小説

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#SF小説

タイムスリッパーと呼んでくれ

タイムスリッパーと呼んでくれ

「照査をするから、図面を印刷しておいてくれ」
「はい、わかりました」

慣れない設計の仕事に携わって、早数ヶ月。
最初の頃は一歩進むごとに三歩戻っていたのが、最近は簡単なものであれば一人で完結させることが出来るようになってきた。
「お願いします」
上司に印刷した図面を手渡す。
自分でも何度も見直したし、構造が複雑なわけでもない。
今回は差し戻されない自信があった。

「んー……」
緊張しながら返事

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良い子、良い大人

良い子、良い大人

「ですから、このままですと数年で組織が崩壊してしまいます!」
少子高齢化が進行した結果、子供とサンタの人数は徐々に近づき、やがてサンタの人数が子供の人数を追い抜こうという所まで来ていた。
『リストラ』『希望退職』
物騒な言葉が頭を過る。サンタがリストラされるなんて、そんな夢のない話があるか。それだけはなんとしてでも避けたい。管理職の自分は、いよいよ結論を先延ばしに出来ない所に来て焦っていた。
「う

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1アンペアでも人は死ぬ

1アンペアでも人は死ぬ

 さまざまな形のスマートデバイスが普及して久しい。このスマートウォッチは、心拍計と睡眠モニタリング機能も搭載されたタイプだ。取得して蓄積されたデータは解析され、リアルタイムに状況分析が行われフィードバックされる機能を備えている。ある意味、自分よりも自分について詳しい存在と言えるのかもしれない。
 また、健康管理機能もあり毎日決まった時間に起床するよう設定したアラームはもちろん、睡眠時の寝汗を検知し

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