小坂保行

路上で雑誌売ってました。文章書いたり、演劇に出演したり、音楽イベントに出演したり、寝た…

小坂保行

路上で雑誌売ってました。文章書いたり、演劇に出演したり、音楽イベントに出演したり、寝たり、食べたり。面倒かけたり。

最近の記事

新作薄い本用に書いた掌編小説

プラトニック・ダンサーズ K坂  私は薄幸の美少女である。  ちょっと前まで、薄幸の美女を名乗っていたが、気が変わった。永遠の美少女でいくことにする。  嫌われフェロモンの持ち主であるために、通っている大学には気心のしれた友人がいるわけでもなく、家庭やその他にも仲良しがいるわけでもない。       そんな私の嫌われフェロモンをものともしない、クセの強い輩が集う場所、雑貨店「へめえれゑ」に私は足繁く通う。  外界以外では…インターネットという現実と仮想現実との間と呼べる空間

    • あのホテルのこと

       先日、Sさんと昼食をとった。Sさんは、数年前まで私が路上販売していた雑誌の購読者で、私が路上販売を終えても引き続き購読したいと希望する方に向けて委託販売として宅配や待ち合わせという形でお渡ししている定期購読者のお一人だ。大抵、待ち合わせの時間が正午前後になることが多いので、じゃあついでに昼食をご一緒に、ということになる。  その昼食の場での会話だ。明日、Sさんは仕事のために泊りがけで富山へ行くらしい。富山への泊りがけはよくあることだそうで、定宿があるそうだ。  前回その

      • かきくらべライブ版原稿集総集編用に書き下ろした掌編小説

            家具の人間   大型インテリア・ショップにやって来た。何か具体的なお目当てがあるわけではない。休日の暇つぶしに、ドライブがてら入ってみただけだ。店内をぶらぶら眺め歩いて、それから帰途につくつもりだ。  タペストリーや小物にスツールといった品々が並ぶ中、ある一画で足を止める。そこに置かれたソファーには、華美な風貌の女性が、足を組んで座っていた。左胸あたりに商品タグが貼られている。何だこれ。  怪訝に思い、眺めていると、店員の男が近づいてきた。 「それは家具の人間

        • かきくらべ用に書いた掌編小説

           坂道を転がるもの K坂  その日の午後、私は大学の大講義室にいた。半分こにしたすり鉢状の階段教室。履修する『比較文明学における異星間交流学概論』の講義に出席しているのだった。始業時間少し前に、私は中央の後ろから何列目かの席につく。   始業時間ぴったりに、講義室の後部、出入り口のドアが開いた。ドアの隙間から初老の男が顔を出す。この時間の講師を務める子法師准教授だ。学生たちからはダルマとあだ名されている。   入室したダルマ先生は、教室の一番下にある教壇に向かって、すり鉢状

        新作薄い本用に書いた掌編小説

          紙芝居の新作を書いた

          某美術館の某スタジオから、スタジオにおける美術館プログラムを終了する、ついては9月25日にスタジオの恒例イベントである週末屋台を、これまで参加した出店者を一同に会してプログラム終了記念として開催するので出店しないか、とお誘いが来た。 吝かではないので、出店することに。出し物はドリサカの共同所長Mドリの出身地である沖縄県のご当地乾物で良いだろうと思ったので、Mドリを通じて沖縄の実家にコンタクトを取った。ところが台風直撃の可能性大なタイミングで、乾物を送るどころではない、と電話を

          紙芝居の新作を書いた

          あのTシャツ→虚無僧クラブ断念

          先週土曜日はイベントを開催した。 「ドリサカ案件博覧会兼小坂さんがビッグイシューの路上販売を終了したことを改めて周知する打ち上げの集まり」というやたら長ったらしいタイトルのイベントだ。 タイトル通り、ビッグイシューの路上販売を卒業した(宅配スタイルの委託販売としての販売は継続)ことがあまり周知されていない事を解消するためにイベント形式で卒業宣言を行う事と、ドリサカ研究所として’‘どうかしている人・モノ’の調査研究のこれまでの成果をこれもイベント形式で棚卸ししようという、2つの

          あのTシャツ→虚無僧クラブ断念

          イベント用に書いた掌編小説

            雪と桜の花が舞う頃に   私の住む町は、一年中、雪が降る。寒くもない時にも雪が降る。桜吹雪に彩られるこの季節。春風に乗って花びらと共に舞っているのは雪――。  聖護院夕子はカードを並べながらそう語る。彼女は、へめえれゑ店内の一角を借りて占い商売を始めたのだ。  ふぅん、聖護院夕子の住む町はそんなところなんだ。自らの恨み辛みを晴らす事にしか関心が向かず、それ以外の森羅万象に疎い私には初めて聞く話だ。 「今の時分は、桜吹雪と雪が混じり合って独特な光景よね」少し離れたレジカウ

          イベント用に書いた掌編小説

          かきくらべライブ版用に書いた掌編小説

            血迷い人ティータイム    「おたべ」  聖護院夕子は、そう言いながら両掌に乗せた和菓子を差し出した。  第二外国語の講義が終わった小教室で、不意に彼女が私の目の前に現れ、件の動作を示してきたのだ。  「マヤ語を取ってたんでしたっけ?」和菓子の入った口をもぐつかせながら聖護院夕子に問う。  「私は津軽語」  っていうか、私と同じ大学に通ってたんだ、聖護院夕子。マヤ語か津軽語かは置いておいて第二外国語の講義を受けているということは、彼女と私は同学年なのか。  「聖護院さん

          かきくらべライブ版用に書いた掌編小説

          たしかに彼女はそう言った

           言い間違いは誰にでもある。思い違いや覚え違いだって誰にでもある。そんな言い間違い、思い違い、覚え違いに笑いがこみ上げることもある。  Twitterでたびたび上げられていた、福井県立図書館への覚え違いタイトルな問い合わせが、一冊の本にまとまったと聞いて、早速馴染みの書店へ注文しに行ったのである。  実はこの数日前、注文していた本が品切れで注文できませんでした、というお断り連絡を書店から頂いていたのだった。その本が注文できないのは残念だが、その本を買うつもりで用意して浮いた

          たしかに彼女はそう言った

          かきくらべライブ版9/25用に書いた掌編小説

            夕子は風の中 K坂    室内は、適度にエアコンが効いていた。窓の外からは、蝉の鳴き声たちが今が残暑である事を喧しく告げてくる。  隣のベッドには、私と同年代の女性が昏睡していた。呼吸器具や点滴の類は装着されていない。ただただ深く眠りにつくのみである。  かくいう私も、意識こそはっきりあるが、つい数日前まで、ベッドから起き上がって自力歩行することがままならなかったのであった。  先週、追い剥ぎ商店街で突風騒ぎがあった。不思議なことに、突風は路地を綺麗に通り抜けて、商店街の

          かきくらべライブ版9/25用に書いた掌編小説

          イベントする&クラファンもする

          来年の冬から春にかけてその中の一日にイベントを開催することにした。 ドリサカのどうかしてるモノ・ヒト博覧会とビッグイシューの路上売りを終えた事を知らない人がまだまだいることに対する報告とビッグイシュー売り終了の打ち上げを兼ねたものだ。 あれこれどんぶり勘定してみたら、数十万円の費用がかかるが判明した。そんな金持ってねー。でもやりたい。そこでクラウドファンディングだ。 そう思い立ったら即行動である。趣意書をまず書いてその日に手渡しできる人に配った。 そして、次の日には仮のチ

          イベントする&クラファンもする

          かきくらべライブ版用に描いた掌編小説 9編目

           縁切り 「私が住んでいた町はね、駆け込み町だったの。駆け込み寺なら聞いたことがあるって?そう、お寺の敷地に留まらず、町一帯が駆け込みゾーンだったのよ。縁切り町なんて呼ばれていたわ。家族や交際相手からのDVに苛まれた人、執拗な付き纏いが棘となって心身を蝕まれた人、そんな人達が男女を問わず駆け込んできてたわね。駆け込んで町に入った途端に、見えない関止めが出来るの。追って来た人は、追って来たという目的を抱いたままでは町に入れない。入ろうとすると、都合の良いタイミングでトラブルに

          かきくらべライブ版用に描いた掌編小説 9編目

          薄い本作りを模索する②

           薄い本をシルクスクリーン印刷で作ると思いついて、はたと思い出したのであった。  過去に作った薄い本に、シルクスクリーンプリントのレクチャー記事を書いてもらった事があったのだ。 (シルクスクリーンの原理から説明されている)  シルクスクリーン表現の現役制作者の人に寄稿してもらった。Tシャツへのプリントを例に原稿の起こし方から製版・刷り上げのフィニッシュまで懇切丁寧に書かれている。 (版下の製作、感光させて版に仕上げる流れを解説)  例に出ているのはTシャツ即ち布だが、

          薄い本作りを模索する②

          かきくらべ ライブ版用に書いた掌編小説2021.3

          塩風  えーんえーん。帰りたいのに帰れないよー。お家に入れなーい。  私は自分の家に入ることができない。  昨日から我が家の玄関前で足止めを食らっているのだ。仕方がないので、近所の公園でブランコに揺られながら、一夜を過ごしたのだった。   昨夜はブランコ越しに一般人の何組か、そして夜回りの警察官一組が公園の前を通りかかった。彼ら彼女らは私の姿を認めた。明らかに私と目が合った。私は話しかけてくれる事を期待したのだ。だってどう見ても不審者でしょう?夜中に一人でブランコに揺られな

          かきくらべ ライブ版用に書いた掌編小説2021.3

          かきくらべライブ版に書いた掌編小説

          氷眼    「私が生まれ育ったところはね、氷山があるの。ううん、氷に覆われてるんじゃなくて、氷口から氷が噴き出すの。それも活氷山よ。いつ何時、噴氷が起きるかわからない。噴き上がった氷は周辺に飛び散って、家や車に穴を開けたり、生き物に直撃したら怪我させたり、場合によっては死なせてしまうくらい危険な代物なのよ。町に降り注いだ氷は、噴氷が止んで一週間ほどで溶けてなくなるかしら。でもね、溶けずにそのまま形を留めたままの氷が稀にある。触るとひんやり冷たいのだけど、手の体温で水っぽくな

          かきくらべライブ版に書いた掌編小説

          薄い本作りを模索する①

           薄い本だ、薄い本作りだ。巷ではZINEとも呼ばれてるらしいプライベート性の高い小冊子だ。  これまで、個人誌として薄い本作りに邁進してきた。個人誌としてはやり切ったという思いから、昨年あたりからグループによる同人誌作りにシフトしてきている。研究所を名乗っているので、研究所の調査報告書や活動報告書と銘打ってリリースしている。  直近の報告書は2種。活動報告書として、研究所主催の掌篇小説朗読イベントで発表された小説の原稿集、調査報告書として、美術館のコーディネーター職の人に、コ

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          薄い本作りを模索する①