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あま、てらす。

 初日の出、というものを見たことがない。

 私は、高い山々に囲まれた雪国で生まれ育った。新年の朝、凍てつく寒さの中、日の出を待つだけの辛抱強さは持ち合わせていなかったし、昇る太陽は、いつものように山々の間から遠慮がちに顔を出すようなそんな太陽だろうと思っていた。

 だから、暗闇の中、広がる水平線の下から、まばゆい光を放ちながら威風堂々と昇ってくる太陽を人生で初めて目にしたとき、私は思わず息を飲んだ。

 社会人1年目、一泊二日で訪ねた横浜。そこでの朝のことだった。その日、私は初めて、初日の出に代表される古今東西の太陽信仰の存在理由を細胞レベルで理解した。力強く、何度も昇る太陽。それに心揺さぶられる気持ち。

 何千年も前に生きた人たちや、今日この時代に別の土地で暮らす人たちと共有できるものが、この世界にはあとどれくらいあるだろう。きっとそれは夜明け前の星の数ほどある。そう信じたくなる朝だった。

 

ありがとうございます。いつかの帰り道に花束かポストカードでも買って帰りたいと思います。