河合隼雄氏の愛弟子が綴る衝撃と感動のドキュメント。
ある日、上司から突然手渡された原稿は、こんな書き出しで始まった。著者は、心理臨床学の泰斗・河合隼雄氏から、40年以上にわたる薫陶を受けてきた臨床心理士の皆藤章氏。
相談の主である女性は、すでに成人を過ぎており、まだ幼い頃、工事用の土砂が山と積まれた家の近くで遊んでいたとき、事故に遭って、生涯消えない傷を身体に負うことになったのだという。近所の人と世間話に興じていた母親の目が離れた隙に起きた事故だった。
決して消すことのできない過去と母親への憎しみを背負って、20年近い人生