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「君みたいな人間は、東京に行って潰されてきたらいい」と言われた日。19歳の挫折と誓い

中学2年の時から、コピーライターになりたいと思っていた。

コピー1行100万円。

そんなマスコミの触れ込みにすっかり魅せられた僕は、将来の道を14歳で定め、すこし背伸びをしながらいくつかの広告雑誌に目を通してもいた。

大学に入学したのも、コピーライターになるのに有利だと聞いたからで、正直なところ、入れる大学があればどこでもよかった。

そして大学1年の5月から、宣伝会議が主宰するコピーライター養成講座に通い始めたのだった。

周りの受講生はみな大学3、4年生か、社会人。その環境に内心、優越感を覚えていた僕だったが、そんな自惚れはひと月後、完全に消え去った。

講座で出される課題に、まったく歯が立たないのだ。

例えば、こんな課題が出る。

「カルピスに新たな価値を与えるようなコピーを考えてください」

提出は1週間後。だが、いざ机に向かうと、あれだけ楽しみにしていたはずのコピーを考える時間が、ただ苦痛でしかない。いや、そんなはずはない、と向き直るのだが、すぐ別のことをして目を逸らしてしまう。

そして翌週。受講生から提出されたいくつかの作品を見て、あぁ、これが才能というものなのか……と、自分とのあまりの差に愕然とした。

しかも彼らは、こちらがやっとこさ捻り出した数本のコピーに対し、70~80本ものコピーを考えてきていて、そのどれもが僕より遙かに面白いときている。

そんなことを3週、4週、と重ねるうちに思った。ここで勝負しても勝ち目はない。そして5年間抱き続けてきた夢を、あっさり諦めることにした。意外なほど未練はなかった。

一方、その講座に通って得たひとつの収穫がある。講師の一人に、

「君はキャッチコピーはダメだけど、ボディコピーは書ける」

と言われたことだった。

ボディコピーとは、キャッチコピーの脇に数行添えられてある文章のこと。もしかすると、ここに生き筋があるかもしれない。その言葉に全身すがりつくような思いだった。

翌週、大学のキャンパスを歩いていると、「マスコミ就職講座 開講」という貼り紙が目についた。

これだ。数日後、3、4年の就活生に混じって、ゲスト講師の話を聴いた。東京で、ある月刊誌の副編集長をしている人だった。

講座が終わると、すぐさま講師の元へ近づいていき、勇気を振り絞ってこう言った。

「あの~、僕の書いた文章を、一度読んでいただきたいんですけど……」

不躾な願いは聞き届けられた。目の前で、2枚半の原稿用紙を見ていただく時間。胸が破裂しそうだった。そして数分後、耳にしたのはこんな言葉だった。

「こういう、“オレ様アーティスト系の文章”が、一番使いにくいんだよ。君みたいなのは東京に行って、一度、潰されてきたらいいんだ」

目の前が真っ暗になった。未来がなくなったと思った。

……フワフワ、フワフワ、どこを歩いていたのかよく分からない。気がつけば、学生の集まる広場にいた。そこで上がる噴水のしぶきを、ただボーッと眺めていた。すぐそばではしゃいでいる人たちの声が、ずいぶん遠くに聞こえた。

僕はこれからどうすればいいんだろう。何をして生きていけばいいんだろう……。

そうして、どれくらい経った頃だったか。心の中に、熱いマグマのような気持ちがふつふつと沸き上がってきた。

自分はいままで何か努力をしてきたのか。何かひとつでも自分に課してきたことはあるのか。夢見がちな空想を描き、叶いそうもなければ、すぐ逃避しようとする。そんな自分と訣別すべく、こう心に誓った。

「自分の夢に投資する時間を、1日8時間以上持とう」と。

具体的には、1日5時間以上読書をし、3時間以上文章を書く。そのために、アルバイトは週6から週1に減らす。交友関係を最小限にまで絞る。だから、キャンパスで知り合いに会っても知らぬふりをし、ひと言も発さず1日を終える日が何度もあった。二十歳になっても、成人式に出る気持ちの余裕すらなかった。

その甲斐あって、ある雑誌に投稿したお笑い芸人の評論記事が署名入りで掲載されたのは、大学4年の時だった。あの噴水の前の誓いから、1000日の月日が流れていた。

その3年間、僕を激しく鼓舞し続けてくれた言葉がある。

「君みたいな人間は、東京に行って潰されてきたらいい」

初対面の人から言われた、親でも言ってくれない言葉。そんな耳の痛い言葉こそ、自分をたくましく育てる根。悔しい思いをした時は、いつもあの日のことを思い出す。

ありがとうございます!
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1979年滋賀県出身。大学1年の時、文章を見てもらった某雑誌の副編集長から「東京に行って潰されてきたらいい」と言われ一念発起。3年後、芸人の評論記事が『日経エンタテインメント!』に掲載される。04年致知出版社入社。担当書籍に『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』