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小説 桜ノ宮

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大人の「探偵」物語。 時々マガジンに入れ忘れていたため、順番がおかしくなっています。
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#不倫

小説 桜ノ宮⑧

小説 桜ノ宮⑧

夜の街がくすんで見えるのは、得体のしれないウイルスのせいだろうか。
川の上を走る電車のなかはもちろん道行く人もいつもより少ない。人が少なくなるだけで、違う街のようだ。
目に映るすべてが穏やかではない。広季と夜道を歩きながら紗雪はえもいわれぬ不安に身をこわばらせていた。
広季は息をひそめて歩いている。見開いた目は焦りに満ちていた。時々表情が大きく変わる。
ビールを飲みながら、店内にいる女性との関係を

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小説 桜ノ宮③

天満の施設を出て、マンションのある福島へ着いた時には18時を回っていた。スーパーで簡単なつまみをいくつかと発泡酒を買って自宅へ戻ると、通路側の部屋に灯りがついているのが広季の目に入った。
恐る恐るドアを開けると、玄関には妻美里が愛用している白いフラットシューズがあった。
「来とったんか」
美里はリビングでソファに座りテレビを見ていた。
「うん。話があって」
広季はテーブルにスーパーの袋を無造作に置

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小説 桜ノ宮②

小説 桜ノ宮②

「広季さん、私、今日はあまり時間がないのよ」
紅茶を一口飲むと不機嫌そうに老婦人は唇を結んだ。クラシック音楽の流れる広いロビーで二人は向かい合っていた。
仕事中に呼び出したくせに。
老婦人のいらだつ姿を見て、広季は内心あきれ返っていた。
「春子さん、まあ、そう言わずに」
広季は母春子の節くれだった手を握って微笑んだ。春子は急いで手を引っ込めた。
「やめてください。誰が見てるかわからんのやから」

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