寝違えについて
最近、首の寝違えの治療が立て続けにありました。1年を通して比較的よく目にする症例ではありますが、気圧が下がったり冷えたりしてくると起こりやすくなりますね。
首の寝違えはたいていが頸椎の椎間関節のいわゆる捻挫です。関節まわりの靭帯や関節包、筋肉などが損傷しています。軽微な損傷であっても痛みが強いことが多くなかなかやっかいなものです。
他の筋骨格系の問題と同様に普段から姿勢の悪い方に起こりやすいです。姿勢が悪いとは頭部の荷重が脊柱(の椎間関節)にしっかりとかかっていないということです。いわゆる猫背ですね。荷重のかからない関節は緩みがちになり不安定性が高まります。
ただでさえ不安定状態にある関節が、頭部の荷重が脊柱にかからない就寝時はさらに負傷のリスクが増大します。寝返りの際などに可動域を超える運動を強制されて負傷してしまうのです。
寝違えを起こしてしまった時の対処法は、その他の関節捻挫の時と同様です。
傷めた関節は炎症を起こし熱を持っているため後頸部を氷水で冷却します。そして無理に動かしたりせずに(痛みの確認やストレッチなど)、頭部の荷重がしっかりと脊柱にかかるように姿勢を正して過ごします。余裕があればウォーキングをまめにして頂けると比較的早期に回復します。またできるだけ低めの枕で寝てください。
この対処法はそっくりそのまま寝違えを起こしにくくする予防法でもあります。
関節部は関節運動によって熱が発生し関節腔は膨張傾向になります。膨張するということは緩むということです。関節部の冷却によって熱を奪い膨張を抑えます。また関節腔内を満たしている関節液は低温で粘性が増す性質があります。粘性が増すと関節面の密着性が高まります。特に痛みなどの症状が無くとも普段から後頸部の氷冷をして頂くことは予防にも効果的です。
自動運動の範囲内なら構いませんが、手で頭部を押さえて行う頸部のストレッチは正常な関節可動域を超える動きを強制するもので、関節を緩ませるためお勧めできません。
普段から頭部の荷重をしっかりと脊柱にかけることで、脊柱の椎間関節の安定性が高まります。就寝時や不意の動作時にも負傷しにくくなります。
脊柱を構成する椎骨はテーパー構造といって上方から荷重がかかると中心軸が揃う仕組みになっています。ウォーキングによって頭部の荷重がリズミカルに脊柱にかかることで椎間関節が安定するだけでなく自然と脊柱の中心軸が整い姿勢も良くなります。
厚みのある枕は後頸部が常に牽引された状態に置かれるため頸椎の椎間関節が離開します。寝違えを起こしやすいばかりでなく頭部への血流障害などさまざまな問題を引き起こす原因になりますので、できるだけ低めの枕を使用して頂きたいです。体格にもよりますが、仰向けで寝られる方は3cm程の厚みがあれば十分です。一気には難しくともだんだんと低くしていって頂ければと思います。
対処法も予防法もまた治療法であっても基本的には全て一緒です。身体にとって生理的で正しい力をかけ続けるということです。そうすることで身体は強くしなやかになりますし、本来持っている自然治癒力も発現しやすくなります。
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