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パリの想い出

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2000年代初頭のパリに住んでいた頃の想い出について、書いています。
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「La tresse」, いつまで読んでも終わらない。

「La tresse」, いつまで読んでも終わらない。

 このフランス語のペーパーブック、「La tresse」は、昨年の前半、フランス在住で本屋を営む友人からもらったものだ。日本に戻って来てから20年弱、在仏期間2年弱の私には、若干難しい本であるが、話の面白さもあって、読み進めている。

 三人の主人公、インドに住むスミタ、シシリーに住むジウリャ、カナダに住むサラがそれぞれの苦難に立ち向かいながら、希望と独立の三つ編み=tresseを織り成していく、

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パリのホテル

パリのホテル

 私の「イチオシ」ホテルは、パリの「セレクトホテル」である。このホテルは、パリの「カルチェラタン」、ソルボンヌ広場に面していて、活気のある学生街にある。

 私は、20年ほど前に、パリで日本語教師のアルバイトをしながら、ソルボンヌ大学付属のフランス語講座に通っていた。

 渡仏したばかりの頃はよく、友人であるフランス人のカフェに呼んでもらい、朝をご馳走になった。そこは職人が行き交う下町で、私はパリ

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ギモーヴ

ギモーヴ

それは、母の再婚がきっかけだった。
父と別れて五年、母は馴染みの酒場で知り合った男と再婚した。もう五十代も終わりになろうとしていたし、父との離婚で散々な思いをしたから、何でいまさら? と思った。
ハルがたずねると母は嬉しそうに言った。
「話が面白いのよ。あの人の話、もっと聞きたくって」
年頃の娘がいる家に男を住まわせることを、なんとも思わない母も不思議だったが、娘の心配より男のことで頭がいっ

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