家を建てる同僚
同じ部署の同僚が、目下家を建てている最中だ。
オーストリアで最も地価の高いチロル州では、新規で土地を購入して家を建てるという話はほとんど聞かない。
だいたい、親族から相続した土地と家を利用して建て直したりリフォームしたりする。
インスブルック市内に一軒家はほとんどラッキーな人にしか建てられないから、州内のどこかの自分に縁のあるところで家を建てるケースが多い。
私と同じオフィスの同僚(男)は、家族の土地を利用して、兄弟で二世帯の家を建築中だ。
二世帯住宅には兄弟とその妻、そして同僚とその彼女が住む予定らしい。
まずもって、結婚もしてない彼女を自分の家建築に携わらせている感覚もよくわからないけど
驚くのは、ハウスメーカーとかに頼らず全て自分たちで手配して家を建てていること。
オーストリアではよくあるケースらしいけど、家の基礎、外側をやる会社、窓をやる会社、電気をやる会社、水道をやる会社、内装をやる会社…
全て自分で、もしくは地元の施工会社が顔見知り同士とかで、手配する。
作業してくれる人の朝食、昼食、おやつは、彼ら兄弟の両親とそれぞれのパートナーの両親、親族他が持ち回りで、毎日!現場に運んでいる。
土曜日は賃金を現金のポケットマネーで手渡して作業してもらっている。
同僚本人も今月に2週間、来月に3週間と休暇をほぼ全て使って家の建築現場で手足を動かしている。
フルタイム勤務の会社員でやれる領域を超えてるけど、こうやって手作りを混ぜることで家の建築費が下がるそうな。
兄弟で二世帯とか、パートナー同士は他人なわけだし、
玄関もガレージも別らしいけどご近所付き合いもしないといけないから、考えただけでめんどくさそう。
しかも同僚の彼女は今現在インスブルックのアパートに住んでいて、家が出来上がったら新築の家に引っ越すらしいけど、何せインスブルックからは50kmも離れてるし、田舎だし、彼女大丈夫?
そもそも、家建てて一緒に住むとか、家建ててる時にも相手の両親までこき使ってるんだったら婚約なり結婚なりすればいいのにと余計なお世話だけど思ってしまう。
そんなんじゃ関係が嫌になっても、これまでの尽力がもったいなくて別れられないやん。
他の元同僚にも、一緒にマンションを買ったけど別れて結局お互い賃貸に戻ったとかいう話は聞いたけど
ヨーロッパは婚姻関係を結ばないカップルも多くて、けっこう大掛かりなことを一緒にやってしまうわりには、やっぱり結婚は結婚なのであって、何か理由があって結婚はしないケースが多そうだ。
子供ができたからとかの理由で結婚するカップルはほぼいなくて、一緒に暮らしながら未婚で育てている人も多い。
でも家って、相当高い買い物だし一大プロジェクトだし、私からするとイチ彼女が親も巻き込んで家づくりに参加してるのは違和感を感じる…なあー。
とにかく私の部署の同僚はみんな彼の家づくりを気にかけてちょくちょく写真を見せてもらったり進度を伺っていて、誰も“なぜ二世帯?”“彼女はそれで納得してるの”とか言うはずはない。
オーストリアでは、核心はつかないのが鉄則だ。
私はよく、核心に迫ってしまうからぎょっとされることがあるけども、疑問は放っておけないからね。
人生の一大プロジェクトの自宅が来年には完成して、素敵な生活が始められることを心から願うとともに、
多分30代後半から40代前半であろう同僚の今後の動向を見守りたい。